吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2023-01-01から1年間の記事一覧

PERFECT DAYS

12月30日の3本立ての2本目。 これはいかにもヴィム・ベンダースらしい作風だ。東京で一人暮らしをする慎ましい中高年男性の生活が淡々と繰り返されるだけ。それだけ。 主人公の平山(小津安二郎の作品によく登場する人物名)は結婚もせず子どももおらず、ア…

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~

12月30日に映画館で見た3本目。 あまりにも面白いから疲れも落ちた。とはいえ、途中ちょっとだれた部分もあって。それは甲子園の地下工場(だったかな)の場面。ちょっとしつこかったな、これは。しかしその他はとても気持ちよくて、とりわけ大阪府知事が極…

TAR/ター

冒頭、ベルリンフィル史上初の首席女性指揮者となったリディア・TARがインタビューに答える長セリフの知的な緻密さにまずは圧倒される。淀みなく答えるTARを演じるケイト・ブランシェットの自信たっぷりで気高い美しさには惚れ惚れした。しかしここで字幕が…

告白、あるいは完璧な弁護

スペイン映画のリメイクだそうな。オリジナルがなかなかよかったのだろう、サスペンス風味たっぷりな展開は手に汗握って面白い。ただし、わたしは途中で真相がわかってしまったので、やや興ざめ。あるいは、わざと観客に気づかせるように演出しているのかも…

浅田家! 

実話を元にしているということなので、興味深く見た。 ひたすら家族の写真を撮り続ける写真家というのも面白い。これは究極の私小説ならぬ私写真集ではないか。赤の他人には何がおもしろいのかと思うのだが、しかしこれが面白いかもとても不思議だ。浅田政志…

大名倒産

これは面白い! 爆笑しました。 この手の時代劇コメディは最近増えたと思うのだが、きっかけは「超高速参勤交代」だろうか? そこでちょっと流れを調べてみた。 1986年 ジャズ大名 (これは今回の流れより古すぎるので参考までに) 2010年 武士の家計簿 2014…

宇宙人のあいつ

低予算映画きわまれり。とバカにしてはいけない。まあ、チープなのは否定しがたいが、なかなか楽しくて退屈しなかった。よきかな。アホらしいコメディなんだが、その設定のすべてがあまりにもチープなので笑うしかないところがいい。そして、そのチープさを…

東京夫婦善哉

気功の第一人者星野稔とその妻でスペイン語翻訳者の星野弥生夫妻の最期のときを映したドキュメンタリー。 稔がスキルス性胃ガンで余命三カ月~六カ月、抗がん剤治療をすれば2年に延長と診断されたところからカメラが回りだす。気功は免疫力を高めるはずなの…

最悪な子どもたち

フランス北部、イギリスに面する海岸地方にある「ピカソ地区」の労働者用集合住宅に住む子どもたちのオーディション場面から映画は始まる。 これは映画のメイキング映像なのか? どこまでがドキュメンタリーでどこまでがフィクションなのか、見れば見るほど…

ゴジラ-1.0 

戦後間もない時代に設定した、ゴジラ映画。わたしはこれまで何本ものゴジラ映画を見てきたが、これほど泣いたのは初めてだ。そしてなぜ「マイナス1.0」なのか、元祖ゴジラは1954年のアメリカのビキニ水爆実験をきっかけに生まれたことになっているのに、その…

ドミノ

映画が始まる前に売店でパンフレットを買おうと思って、販売員の若いお姉さんに「パンフレット頂戴。アルゴ」と言ったら、「は?」という反応。あ、「アルゴ」ってベン・アフレックが監督としてアカデミー賞を獲った超面白い映画やんか、ちゃうちゃう、今回…

ほかげ

塚本晋也監督には「野火」という恐ろしい作品がある。あれは忘れられない恐怖体験であり、二度と見たくないけれど一度は必見と言える作品だった。「野火」は大岡昇平が緻密に描いた、恐るべき戦場の飢餓小説を映画化したものだ。目を覆うような惨状が繰り広…

エクスペンダブルズ3 ワールドミッション

第1作はつまんなくて、第2作はまあまあ面白くて、そうなると第3作はどうなのだろうか、と期待にワクワク。なんてするわけなくて、あっという間に退屈して爆睡。ほぼ全編寝ていたので、なんの話かさっぱりわからなかった。これはいかん! というわけでiPadで1…

エクスペンダブルズ2

傭兵軍団「エクスペンダブルズ」の次なる舞台はネパールである。いきなりネパールで銃撃戦、爆撃戦、炸裂の上にも炸裂。なんでそんなところに戦車の車列が現れるんだ? いやいや、考えたらあかん、考えたらあかん。なんでそんなところで急に別の傭兵があらわ…

ザ・クリエイター/創造者

機械と人間との争いが極限に達した近未来を舞台にした物語。こういう基本設定の映画はこれまでいくらでもあったから、どれほど新味を出せるか、興味津々である。ストーリーとしてはもはや新味を出すのは難しいかもしれない。そうなると、プロダクションデザ…

ワース 命の値段

9.11テロをめぐる映画はいくつも作られたが、本作のように被害者7000人に政府が犠牲者補償金を払っていたという話は初めて知った。しかもその理由が、「ハイジャックに遭った航空会社が訴えられたら、訴訟だらけになって大混乱する」ということなのだから、…

明日に向かって笑え! 

てっきり実話と思い込んでみていたのだけれど、こんなうまい話は無いわな。きっと作り話なんだろうけど、ものすごく面白かったので爽快である。日本語タイトルはもちろん「明日に向って撃て!」のもじりである。 本作は2001年アルゼンチンの金融危機を背景に…

愛の予感

不思議な映画だ。ある意味、映画の原点のような。冒頭以外にはほぼセリフがないので、ひたすら映像だけで「事態」の推移も登場人物の心理も描いていく。まるで無声映画のようだ。しかも、二人の人物の淡々とした日常生活を繰り返し映していくだけ。中年男は…

非常宣言

タイトルの「非常宣言」は航空機が操縦不能などの緊急事態に陥ったときに不時着などを要請することを言うらしい。 で、問題の航空機はバイオテロの標的となって、機内に致死性ウィルスがばらまかれ、患者が次々死んでいき、どこにも着陸許可が下りないという…

バーナデット ママは行方不明

ケイト・ブランシェットの演技力に舌を巻く作品。ほぼ彼女の顔を見ているだけで終わってしまうような。それだけで十分見ごたえがあるのにもかかわらず、なんとわたしは中盤以降で寝落ちして、バーナデットがなぜ「天才」と呼ばれた建築家の仕事をなげうった…

本作は、2016年に起きた障害者施設での大量殺人事件を題材にした辺見庸の小説の映画化作品。原作は小説でしかなしえない表現で重度障害者の意識の流れを複数人の一人称でつづっていく意欲作だが、映画ではその構成を大胆に変えて、具体的なストーリーを組み…

福田村事件

関東大震災から百年を期して、ついに朝鮮人虐殺事件がテーマとなる作品が公開された。ドキュメンタリー監督として高名な森達也がどうしてもドラマとして撮りたかったというのは、日本人9名が朝鮮人と間違えられて惨殺された福田村(現・千葉県野田市)事件で…

ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード

というわけで、前作が面白かったので、ついつい二作目も続けてみてしまった。この続編のほうは劇場公開されている。主役3人組は相も変わらず濃いキャラを展開しているうえに、ゲストの役者も豪華。 不死身の殺し屋ダリウス・キンケイドとその妻ソニアに振り…

ヒットマンズ・ボディガード 

どうせくだらないアクション映画なのだろうと高を括って見始めたところ、確かに単なるアクション・コメディ映画なのだが、これがまた面白いから油断ならない。セリフもけっこう含蓄があって、なかなか見せるではないか。で、続編もできているという。 さて物…

モリコーネ 映画が恋した音楽家

ジュゼッペ・トルナトーレ監督のエンニオ愛に溢れた映画。とにかくトルナトーレはモリコーネを好きでたまらないのだろうと思わせる。彼の長編デビュー作以外の全監督作、つまり「ニューシネマ・パラダイス」以降のすべての作品の音楽担当はモリコーネである…

ドント・ウォーリー・ダーリン

既視感の強い、1950~60年代アメリカ郊外の美しく整序された街並み、高級車、美しい妻たち。まるで映画「レボリューショナリー・ロード」のようではないか。夫たちはみな同じ会社、ビクトリー社に勤めていて、その会社は砂漠のど真ん中にある。妻は全員専業…

アルピニスト

わたし自身は絶壁をよじ登るなんて絶対にしたくないし、登山もそれほど好きではないのだけれど、超人的な登山家の映像を見るのはなぜか好きだ。これはどういうことだろう。自分では全くジョギングすらしない人でもマラソンや駅伝は一生懸命見たり応援したり…

怪物

この映画は二か月ぐらい前に見たので細部を忘れてしまったが、映画ファンの集まる食事会でお題に取り上げられたので、参加者全員でやいのやいのと議論が沸騰した。毀誉褒貶が激しい作品でもあった。 本作は脚本が是枝さんではないので、かなりこれまでの作品…

君たちはどう生きるか

ほぼ一切宣伝しないという戦略が当たったようで、劇場は大入り満員とか。わたしが見た回はそれほど混んでいなかったし、観客は高齢者が多かった。これは古くからのジブリファンへのサービスのような作品だった。絵の素晴らしさは言うまでもない。この風景、…

ザリガニの鳴くところ

とても見ごたえのある作品。さぞや原作が優れているに違いない。見終わるや否や原作が読みたくなる。 そして、その原作は超人気作のようで、大都市の図書館では予約が111件ついており、いつ借りられるんだろうと思っていたら、なんと某大学では誰も借りてい…