吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2023-01-01から1年間の記事一覧

東京夫婦善哉

気功の第一人者星野稔とその妻でスペイン語翻訳者の星野弥生夫妻の最期のときを映したドキュメンタリー。 稔がスキルス性胃ガンで余命三カ月~六カ月、抗がん剤治療をすれば2年に延長と診断されたところからカメラが回りだす。気功は免疫力を高めるはずなの…

ヒットマンズ・ボディガード 

どうせくだらないアクション映画なのだろうと高を括って見始めたところ、確かに単なるアクション・コメディ映画なのだが、これがまた面白いから油断ならない。セリフもけっこう含蓄があって、なかなか見せるではないか。で、続編もできているという。 さて物…

アルピニスト

わたし自身は絶壁をよじ登るなんて絶対にしたくないし、登山もそれほど好きではないのだけれど、超人的な登山家の映像を見るのはなぜか好きだ。これはどういうことだろう。自分では全くジョギングすらしない人でもマラソンや駅伝は一生懸命見たり応援したり…

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

巻頭からいきなりのアクションアクションでインディ・ジョーンズの健在ぶりを発揮! と思ったけれど、これは第2次世界大戦末期の若き日のインディの姿であった。時代はそれから四半世紀下って1969年。「現在」のインディは引退直前の70歳の老教授である。い…

わたしたちの国立西洋美術館

東京は上野公園にある国立西洋美術館は、日本で唯一の西洋美術史が俯瞰できる美術館だ。著名な建築家ル・コルビュジエが設計した建物は、2016年に世界遺産に登録されたのを機に創建当時の姿に復元されることとなった。カメラは工事が始まる直前の2020年6月か…

99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE

人気テレビドラマの映画化らしいが、そもそもテレビ放送を見ないわたしとしては、そんなことは一切知らない(テレビは見ないのだが、ネットニュースでテレビ放送はある程度把握しているし、ドラマはAmazonなどで後追いで見る)。 この作品の基本のドラマ部分…

The Son/息子

父と息子、孫という3代にわたる葛藤が描かれる、重い映画。ポスターにはヒュー・ジャックマン演じる父親と息子が哄笑している場面が使われているから、明るい結末が予想されるのだが、実際には大変つらい映画だった。 物語は。高校生ニコラス少年の離婚した…

ユーリー・ノルシュテイン傑作選

ロシアのアニメ作家ユーリー・ノルシュテインの1960年代から70年代にかけての短編を集めて日本で修復したという「傑作選」。アニメの芸術性の高さに驚嘆した。特に二つ目の動く宗教画とも呼ぶべき「ケルジェネツの戦い」は、ひとつずつのシーンがそのまま額…

ノートルダム 炎の大聖堂

文化財を保全する意義を語る講義のネタにと思って見た映画なのだが、予想以上に面白く、胸が熱くなる作品だった。 「タワーリング・インフェルノ」「バックドラフト」「バーニング・オーシャン」といった、消防士や火災を扱った映画はいくつか見てきたが、こ…

うつろいの時をまとう

着物と洋服を融合させたデザインという理解ではあまりにも浅薄すぎる、「matohu」(まとう)というブランドを2005年に立ち上げた二人のデザイナーを映すドキュメンタリー。 巻頭、静かなピアノの音色と共に展覧会の様子が映る。20年に東京で開催された…

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

この映画は編集が大変だったろうなあという感想がまずは湧く。で、アカデミー賞では編集賞受賞。やっぱり。この映画は小道具とか衣装デザインも力はいってるなあ。で、衣装デザイン賞ノミネート。主演のミシェル・ヨーってもう60歳なのによくこれだけアクシ…

エノーラ・ホームズの事件簿

かのシャーロック・ホームズには実は年の離れた妹がいた、という架空の設定で展開されるお話。そもそもシャーロック・ホームズが架空の人物なのだから、そのシャーロックに妹がいたとかいないとか全部架空だから。しかしシャーロック・ホームズほどの有名人…

かがみの孤城

原作は圧倒的な得票数で本屋大賞を獲得したファンタジー小説だそうな。なるほど、こういうファンタジーこそアニメにふさわしい。そして、鑑賞後のこの感動は原作の良さを実感させる。しかし、だからといって原作小説を読みたいという気にさせないということ…

ハケンアニメ!

ハケンは派遣じゃなくて覇権だった。この映画を去年のうちに劇場で見ていたら、「本年の日本映画ナンバー1!」と叫んでいたかもしれない。 柄本佑がかっこいいと思った初めての作品として特記すべきか。なんで今まであんなにかっこ悪い役しか演じてなかった…

PLAN 75

タイトルである「プラン75」というのがいったいどのようなものなのか、映画の中ではほとんど詳しい説明がない。冒頭で、プラン75が国会で可決されたという聞き取りにくいニュースが流れるだけだ。しかし、映画の随所で「PLAN75」と書いた幟やポスターが目に…

千年女優

これはいかにもアニメらしい作品で、時空間を飛び越え、映画の垣根も飛び越える楽しくも切ない物語。 原節子がモデルになっているのだろうと思わせる、人気絶頂期に忽然と引退した女優・藤原千代子の自宅を訪問する映画製作会社の中高年社長が狂言回し。彼が…

フェイブルマンズ

映画ファンでなくともその名を聞いたことはあるはず、という超有名なスピーヴン・スピルバーグ監督の伝記的映画。本人が脚本と監督を務めているのだから、どれほど思い入れが強いか想像に難くない。しかし本作は天才少年が成功する上昇物語ではなく、家族の…

ホイットニー ~オールウェイズ・ラヴ・ユー~

先日、ホイットニーの伝記映画を見たばかりなので、彼女の実像に迫るドキュメンタリーであるこの作品にも大いに興味をそそられた。あの悪名高き元夫のトム・ブラウンも登場してインタビューに答えているが、肝心の質問には「答えたくない」を繰り返すばかり…

ムーンフォール

本作はアメリカでは劇場公開されたようだが、日本ではAmazonプライラムでのみ配信されている。豪快なスケールのCG使いまくりの大作なのに大スクリーンで見られないとは、いかにももったいない。 で、内容はといえば、やはりエメリッヒ監督作らしい大仰さと設…

ラーゲリより愛を込めて

もう、「泣かせの瀬々」と呼んでもいいのではないか。劇場内はすすり上げる音が響く、ラスト数十分。だからこそ、賛否両論に分かれる本作だ。否定論者曰く開戦に至る経過が描かれていない、曰く日本人が被害者としてしか描かれていない、曰く北川景子に生活…

ヒトラーのための虐殺会議

1942年1月20日、「ユダヤ人問題の最終的解決」を議題とする会議がベルリンのヴァンゼー湖畔の邸宅で開かれた。主宰者は国家保安本部長官ラインハルト・ハイドリヒで、出席者は政府高官15名と議事録作成のために女性秘書が一人。ヒトラーは出席しておらず、こ…

ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY

"The Voice"とまで呼ばれた不世出の歌手の伝記映画。「ボヘミアンラプソディー」の脚本家が書いた脚本はしかし、あまり山と谷の組み合わせがはっきりせず、どこに山場を持っていってるつもりなのかがいまいち伝わりにくい。 さすがにホイットニーの声を再現…

2022年のベスト映画

今頃だけれど、2022年のベストを選出。 映画館で見たのはなんと35作だけ! この数は衝撃的に少ない。DVDや配信で見たのは117。合計152作である。2022年に公開された作品のうち、2022年のうちに見たのが少ないので、これで2022年のベストを決めるのもおこがま…

チョコレートな人々

愛知県豊橋市が発祥の地である「久遠(くおん)チョコレート」は全国展開して50以上の拠点を持ち、障害者雇用の成功例として知られている。しかし最初からうまく行ったわけではない。代表の夏目浩次(45歳)は、地域最低賃金を上回る賃金を障害者に保証…

ファミリア

巨大自動車産業の町、愛知県豊田市にある保見団地には約8000人が住み、その半数が外国人でさらにその大半がブラジル出身者である。映画は巻頭、保見団地の建物を真上からドローン撮影し、外壁を舐めるようにカメラが滑り降りていくと、そこには仕事を終えた…