吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

明日に向かって笑え! 

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 てっきり実話と思い込んでみていたのだけれど、こんなうまい話は無いわな。きっと作り話なんだろうけど、ものすごく面白かったので爽快である。日本語タイトルはもちろん「明日に向って撃て!」のもじりである。

 本作は2001年アルゼンチンの金融危機を背景にしたコメディで、悪徳銀行家に騙されたシニアたちが自分たちの金を奪還する大胆な作戦を考えて実行するというアクションもの。

 最近、爺さん婆さんたちが頑張るこの手の話が多いような気がする。いよいよ高齢化社会どころか、老人活躍推進時代になってしまったので、もはや若者は無視して老人向けの映画も作られてしまうのだ。本作はアルゼンチンで大ヒットしたのだという。それもよくわかる。だってスカッとするんだもん。それに、ペロン大好きじいさんが登場して、いまだにペロン主義者を誇り高く名乗り、「アナキストは闘うぞ」みたいなことを叫ぶのには爆笑した。

 でも、やっぱりいくら頑張っているとはいえ、爺さんは爺さんなので、いろいろとトンマもしでかす。それに自分達だけではいかんともしがたいので、孫も動員する。銀行家にだまし取られた自分たちのなけなしの資金は銀行の金庫の中にあるのではなく、銀行家の私有地に穴を掘って金庫室が作られていて、そこは地下シェルターみたいなところなのだが、そこに隠されているということを爺さんたちは突き止めた。さてどうやってここから金を取り戻す(盗み出す)か! しかも自分たちのはした金だけではなく、銀行にあった全部のドル紙幣が隠されているのだ!

 この、あの手この手が大変面白く、みながみな、それぞれの得意技を発揮して頑張るその団結力も涙ぐましい。そしてなかなかにスリリング。いいではないかぁ。しかも最後はその団結にもほころびが出るというところが現実味があってほろ苦い。

 元はといえば、爺さんたちが持っていたお金というのは農協を創設するための資金だったのだ。過疎の村に農協を作って雇用を創出しようという考え。このアイデアがいいし、自分たちで資金を捻出してなんとかしようというけなげな心掛けが泣かせる。

 ところで、いまだにペロンって人気があるのかな? ほんまに?(レンタルDVD)

2019
LA ODISEA DE LOS GILES
アルゼンチン  Color  116分
監督:セバスティアン・ボレンステイン
製作:ウーゴ・シグマンほか
原作:エドゥアルド・サチェリ
脚本:セバスティアン・ボレンステイン、エドゥアルド・サチェリ
撮影:ロドリゴ・プルペイロ
音楽:フェデリコ・フシド
出演:リカルド・ダリン、ルイス・ブランドーニ、ベロニカ・ジナス、チノ・ダリン、ダニエル・アラオス、カルロス・ベロッソ