吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2004-01-01から1年間の記事一覧

今年のベスト本。109冊の中から

「今年の3冊」を選ぼう。2004年に刊行されたものの中からは以下の3冊。 『ヒューマン・ステイン』 フィリップ・ロス著 『戦争が遺したもの』 鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二著 『他者と死者』 内田樹著 今年の出版物ではないけれど、今年読んだものとしてベ…

今年のベスト。映画は197本の中から

今年は映画豊年満作だった。大満足だ。いい映画をたくさん見られてとっても幸せな一年だった。本もわたしにしてはけっこうたくさん読んだし。といっても多読家のみなさんには全然かなわないし、読んでも次々内容を忘れてしまう(どころかタイトルまで忘れて…

2004年のベスト。映画は197本の中から

今年は映画豊年満作だった。大満足だ。いい映画をたくさん見られてとっても幸せな一年だった。本もわたしにしてはけっこうたくさん 読んだし。といっても多読家のみなさんには全然かなわないし、読んでも次々内容を忘れてしまう(どころかタイトルまで忘れて…

阿修羅のごとく

正月、4姉妹が次女の家に集まった。突然三女が「ねえ、お父さんに女がいるのよ。子どもまで!」と言い出して「えぇ~? だって70歳超えてるのよ、まさか」「ほんとなんだってば。興信所使って調べたんだから」「どうするの?」「お母さんにはとにかく内緒に…

こういう物の言い方でいいのかなぁ

今日から休み。今年は休みが短いから悲しい。クリスマスツリーを片づけようと思ったけど、雨が降ったので中止。今日はせっせと年賀状を書いた。住所と宛名ぐらいは手書きしようとシコシコ書き始めたのはいいけれど、ふだん字を書かないもんだから、手がだる…

ターミナル

空港から一歩も出られなくなり、入国も出国もままならなくなったらどうする? そのまま空港に住み着くハメになったら? そんな映画を作ってしまおう。このアイデアは卓抜だった。 ビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス熱演。訛った英語がうまい!)はニュ…

内田本4冊

この一ヶ月ほどの間にウチダ先生の本を4冊読んだ。さすがにちょっと飽きてくる。「あ、またここにも同じことが書いてある」なんて思ってしまうのだ。 『東京ファイティングキッズ』はその点、ウチダ先生だけでなく平川さんとの往復書簡だから異業種混交とい…

「都市主義」の限界

「都市主義」とはすなわち「脳化社会」のことをいう。現代社会の二項対立は左右のそれではなく、保守革新のそれでもなく、要するに脳と身体の対立なんだそうな。 全共闘運動も、左右の対立とか革命派と体制側の紛争ではなくて、都市と田舎の対立なんだそうだ…

タイトルにそそられたのはいいけれど

ノーベル賞受賞作なんだそうで、しかもこのタイトル。そそられてしまったわたしは単なる好色一代女か? ついうっかり読み始めたのはいいけれど、ドイツ語の駄洒落を日本語で読むという苦しさは想像を絶するものがある。単なる駄洒落だけじゃない、ほとんど全…

サルトル研究は今でも続く

『サルトル(図解雑学シリーズ)』の著者永野潤氏の「サルトラ日記」がかなりおもしろいので、最近よく読んでいる(ちょっと前まで「HIMANIZM」というタイトルだったはずなのだが…)。特に「オンラインブックショップbaka1 売り上げランキング」は抱腹…

「ソラリスの陽のもとで」の新訳が出た

これは旧訳よりかなりいい。実をいうと旧訳本の印象はあんまり残っていないのだが、前に読んだときよりもかなり感動しながら読んだ。訳がいいのだろうか? 旧訳はロシア語版からの翻訳で、新訳は原典ポーランド語版からの訳出だから、原典に近いのだろう。ロ…

怪漢金俊平の生き様そのもののような骨太な文体「血と骨」

よくぞこんなすさまじい男もいたもんだと驚いてしまう波乱万丈の物語だ。 骨太い文体は主人公金俊平のイメージそのものだ。暴力と酷薄と吝嗇だけに生きた男の生涯を、作家梁石日は叙情を排した文体で石に文字を刻み付けるように描いていく。作家自身の父のこ…

「朝鮮半島をどう見るか」

なんで今までこういう本がなかったのだろう。 目から鱗が落ちるとはこのことだ。本書の問題意識は極めて明確、明快、そして鮮やか。朝鮮半島についての先入観を一切捨ててみたら、どう見えるだろう>。テーマはこれだけ。 どうして日本人は、朝鮮半島について…

笑いながら読了。

10月31日のブログにも書いたけど、笑いながら読み進めて最後まで笑っていた、大ケッサクな社会学講座だった。こんなおもしろい統計漫談も類書がないのでは。 とにかくおもしろすぎるわ。 毎回、講義の最後にまとめがあるのだが、これがまたケッサク! 「夏季…

悲情城市

台湾で長らくタブー視されていた1948年の「2.28事件」(中国本土からやって来た外省人=国民党と台湾人が衝突し、2万人を越える犠牲者が出たといわれる)を描いた作品。テオ・アンゲロプロス監督の「旅芸人の記録」にも似た作りにはなっているが、出来…

素敵な論文「時への捧げもの」

「めぐりあう時間たち」については前にも少し書いたけれど、今般、雑誌『Becoming』14号に掲載された西山けい子さんの論文を読んで、映画の感動が甦ってきた。 映画に登場する3人の女性たちに共通するモチーフは、ヴァージニア・ウルフのいう「存在の瞬間」…

笑いながら読書中

今、二冊の本を同時に読んでいて、どちらもおもしろ可笑しいもんだから、ゲラゲラ笑ったりクスクスにやりと笑って楽しんでいる。 一冊は文庫本。『文章教室』という名の小説だ。これは葉っぱ64さんお奨めの小説で、興味をそそられて読み始めたところ、やはり…

「マルクスと息子たち 」

あれ、デリダにしてはえらく読みやすいじゃないの。なんておもしろいんだ! 訳がいいのかな? と思いながら読み始めたのはいいけれど、果てしなく続く前書きのような文章の連続に嫌気がさし、「いったいいつになったら本論に入るんや?!」とぼやき始めたこ…

『赤毛のアン』のテーマは「結婚」である

初めて『赤毛のアン』を読んだのはたぶん、小学3年生ぐらいだったと思う。やせっぽちでそばかすだらけのみっともないアンがわたしの自画像と重なった。そばかすこそなかったし髪も赤毛じゃなかったけど、子どもの頃のわたしは痩せて険しい表情をし、かわいげ…

『調べる、伝える、魅せる! 』

調べる、伝える、魅せる! 中公新書ラクレ 新世代ルポルタージュ指南 武田 徹著 : 中央公論新社 -------------------------------- 本書は、複数の大学でメディア・リテラシー教育に取り組む著者の実践を踏まえて、主にマスコミ業界を目指す学生など若者向…

最近読んだ2冊の短評

ニート / 玄田有史著・曲沼美恵著 幻冬舎 2004年 ニートとは、NEET(Not in Education,Employment,or Training)のこと。無業でかつ学校にも職業訓練にも就いていない者のことだ。 その数、推定40万人。今後大きな社会問題になることは間違いなく(今や既に社…

「絶望 断念 福音 映画 」

若松孝二「ゆけゆけ二度目の処女」「現代性犯罪絶叫篇・理由なき暴行」によって自殺から救われたという繊細で偏執的宮台の面目躍如のラインナップ。巻末に映画タイトル索引がついているのもよい。 宮台真司はわたしと同学年だから、世代的に共通する感覚や懐…

『フレーム憑き 』

フレーム憑き :視ることと症候 斎藤 環著 青土社 ----------------------------- 著者によると、真実は一つしかないそうである。いや、「一つしか存在しないものこそが真実」なんだそうだ(本書前書きより)。 精神科医が映画をどのように分析するのか、お…

学者の映画評はおもしろい

立て続けに映画批評を読んだ。 どちらも癖のある、斎藤環氏と宮台真司氏の映画評は、互いに映画への偏愛をつまびらかにする、その偏愛ぶりが微笑ましい。 映画を愛する人の映画評はほんと、おもしろい。 というか、映画を愛していなければ、映画評も書けない…

エニグマ

第二次大戦中、ドイツ軍は「エニグマ」と呼ばれるタイプライター様の暗号機を使っていた。これで発信した暗号のモールス信号を、別のエニグマ機で受信解読するのだ。エニグマ機は一万台を超える数が生産されていて、何台かはイギリス軍が入手していた。そし…

『野川』

ソネアキラさんがこの本を読了されたようだ。 bk1に気合を入れて書評投稿されるというので、楽しみにしている。 わたしは書こうと思ったけど、既にkingさんがすばらしい書評を書いておられるし、ほとんどわたしの感想と似ているので、投稿をためらってい…

「家族の中の迷子たち」

ドキュメンタリー作家椎名篤子『家族外「家族」』の漫画化。1998年に漫画単行本が出た。今回、文庫で読んだので、老眼が始まった目には小さな文字がつらい。勢い、読み飛ばしてしまったところも多い。 小児科医や精神科医から見た児童精神科患者の実態を描く…

「クレーターのほとりで」

『新潮』2004年9月号所収。 保坂和志さんが絶賛していたので興味を惹かれて読んでみた(葉っぱ64さん、ありがとうございます)。 これはガルシア=マルケスもびっくりの奇想天外な物語だ。ガルシア=マルケスは100年の時を翔ける物語を書いたが、こちらのほ…

「白いカラス」と『ヒューマン・ステイン』の勝負は原作の勝ち

いままでのところ、今年一番気に入った小説がこれだ。 久しぶりにbk1にも書評投稿した。 -----------bk1書評-------------- 映画「白いカラス」は映画としては失敗作だと思いながらも、その豊かなテーマに心惹かれ、原作はさぞや素晴らしいに違いない…

シルミド事件関係本を読み比べる(2)

事件の関係者に徹底取材した小説。内容はほぼ映画通りなのだが、映画より時制が複雑であり、訓練兵たちが自爆したあとの病院での話や死刑のようす、30年後のエピローグも加えてあって、感動的な話に盛り上げてある。映画よりこっちのほうがいい。 小説は、シ…