吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

赤い風船/白い馬

赤い風船、毒々しいほど赤い風船と少年の物語。物語、というほどの物語はない短編だけれど、風船をつかもうと小さな手を精一杯点に向けて伸ばす少年の愛らしさがたまりません。「犬を連れた奥さん」ならぬ、風船を連れた少年。この風船が意志を持っているか…

あの日、欲望の大地で

照りつける太陽、荒涼たる原野の真ん中に止まったトレーラーハウスが突然炎上する衝撃の場面は、この車の中で抱き合ったまま死んだ不倫カップルの愛と渇望を象徴する。からみあったままの焼死体、という警官の言葉からトリュフォー監督の「隣の女」を思い出…

セブンデイズ

これはなかなか面白いサスペンス。 抜群の勝率を誇る有能な弁護士は、8歳の娘を育てるシングル・マザー。ある日、娘を人質にとられるが、犯人の要求はなんと、殺人犯の無罪を勝ち取れというもの。目前に迫った公判に、時間は限られている。そのうえ人質にと…

新しい人生のはじめかた

春に劇場で見た本作が、もうすぐレンタルリリースされるので、感想をアップ。今年見た恋愛系映画では、「恋するベーカリー」と双璧をなして、私的には高得点。ちなみに「50歳の恋愛白書」も映画館で見たけれど、これはお奨め作ではないので、ご紹介しません。…

セックス・アンド・ザ・シティ2

専門図書館協議会の総会の後、東京は新宿ピカデリーで鑑賞。今回は総会でエル・ライブラリーを表彰してもらったのでうれしい。存在しているだけで表彰されるなんて、稀有な図書館だ。 (2010.6.29追記:この表彰についてはエル・ライブラリーのブログに掲載ht…

12人の怒れる男

オリジナルであるシドニー・ルメット作品の大枠だけを借りた、まったく別の物語。 1回目に見始めたときは「なんだか散漫な映画だ、だらだらと長い」と感じて途中で寝てしまった。2回目、やはり最後のほうで寝てしまったが、1回目に比べたら遙かに面白く見る…

エレジー

原作はかなり前に読んだので内容をほとんど忘れてしまっているが、原作では老いにある主人公の性的な怯えや若い女への執着、といった老人の視点での性への渇望のようなものが描かれていたはず。原作は男の作品だと思ったが、映画は女性の視点で描かれている…

しあわせのかおり

すっかりわたしのツボに嵌ったので、大満足! そもそも料理が美味しそうな映画は大好きなのであり、そのうえ、擬似的父娘の愛情が絡むと涙腺緩みっぱなし。 なんだか訳ありそうなシングルマザーが金沢の小さな上海料理店に弟子入りする、という地味な地味な…

『働きすぎに斃れて 過労死・過労自殺の語る労働史』

以下は、エル・ライブラリーのブログに書いたものをそのまま貼り付けました。−−−−−−−−−−−−−−−−−− 本書は春に頂戴したので正確には「新着図書」とは言えません。ご紹介が遅くなって申し訳ありません。 著書自らが「渾身の作」と言うように、過労死に斃れた労…

そして、私たちは愛に帰る

トルコとドイツとをトランスする移民の物語だが、そのテーマよりもわたしは父と子、母と娘の葛藤のほうにそそられた。トルコ人1世の父を「無学で下品な老人」として蔑視している息子は大学教授。保守的な母に反抗的なのはレズの娘。彼らがどのようにその葛藤…

ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女

今年の早春に映画館で見た映画が、既にDVDレンタルリリースされていることに気づいたので、レビュー。この手の映画はわたしの好みではないのだが、それでもやっぱり娯楽作の王道を行く「溜めと放出」が実にうまくバランスのとれている作品だ。残虐シーンが連…

コネクテッド

ハリウッド映画を香港でリメイクするという、通常とは逆のリメイクで、しかもオリジナルを超えた面白さというパープルローズさんの評(http://www.discas.net/netdvd/reviewListC.do?keyReview=431941&pT=0)を信じてレンタルしたところ…1回目はあまりにも疲労…

未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告

これぞ理想の図書館。作家トニ・モリソンが絶賛するニューヨーク公共図書館は、篤志家の寄付によって建てられた。ニューヨーク市が運営費を出すことを条件に、カーネギーなどの実業家が莫大な金額を寄付したのだ。89の分館と4つの専門研究図書館を擁する、市…

ミルク

ショーン・ペンという俳優の演技の幅の広さに感心した。と同時に、ある意味、ゲイを演じるワンパターンをも感じた。これはわたしの偏見だろうが、「ゲイ」と一言でくくれない多様性がそこにはあるわけで、そのはずなのに、どういうわけか観客(であるわたし…

いのちの食べかた

ナレーションなどの説明がまったくないドキュメンタリー。これほど不親切なドキュメンタリーも珍しいが、それでも画面に映し出されている目の前の「出来事」に目が釘付けになってしまう。誰もが食べている肉や野菜がどのように栽培・加工されているのか、た…

ベルサイユの子

この子役、超かわいい、超天才。 37歳で病死したギョーム・ドパルデューの遺作となってしまった本作、この才能が喪われてしまったことはほんとうに惜しい。父ピエールへの反抗心からか、少年のころから問題児であった彼の生き様を映したような本作には、演じ…

プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂

もー、あほらしいぐらいのアクションアクションアクション、最期はお約束のハッピーエンド。良くも悪くもディズニー映画です。 ガセネタをもとに「大量破壊兵器」を探しにいって、見つからない! 戦争の理由がそれなのに、見つからないってどうよ! という、…