吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2007-01-01から1年間の記事一覧

2007年のベスト10シネマ

今年見た映画は247本、そのうち映画館で101本を見た。映画館でたくさん見られて満足した一年だったが、それだけお金がかかっているわけで、財布が苦しい一年でもあった。わたしは劇場用パンフレットも買うから、その費用もバカにならなくてこれまたピンチの…

ゆきゆきて、神軍

奥崎謙三という人物は不思議な多面性を持つ。なんの予備知識もなく見たら、開いた口がふさがらないような奇矯で過激な行動に猪突猛進するこの人物のドキュメンタリーに衝撃と驚きをもつに違いない。とにかく奥崎に対して違和感や嫌悪感を強烈に抱きつつ、な…

生きる

1952年の市役所というのがこれほど怠惰で文字通りの「お役所仕事」に満ちていたとは正直言って思いがたいものがある。いや、もしこれが当時の役所の実情をかなりリアルに再現していたとして、隔世の感があるのだ。今のお役所は過労死する公務員がいるほどよ…

LOFT ロフト

うーん、なんなんでしょうね、これは。ホラーなのに怖くない。いえ、前半けっこう怖いカメラワークでしたよ、うちのS次郎も「これってホラーやな、カメラの動かし方がホラーや」と言っていたくらいで、中学生にもわかるホラー映画。しかし、せっかくミイラを…

時をかける少女

原作未読、オリジナル映画も未見なので、これが「時かけ」初体験。この明るさ、屈託のなさ、そして切なさ。これぞ青春映画だ。なんのはずみかタイムリープできる能力を持ってしまった高校生の真琴という元気な女の子が、その不思議な能力を使って自分のちょ…

セルラー

携帯電話一本あれば映画は出来てしまう! 携帯電話の特性を生かしたサスペンス、いやぁ、いまふうです。アイデアと脚本で勝負、お金はほとんどかかっていないという作品だけど、なかなか面白かった。 ある日突然見知らぬ男たちに誘拐されてしまった理科の教…

僕の大事なコレクション

コレクターには男の子が多いと思うのは気のせいだろうか? 切手のコレクションや鉄道マニアの列車プレートコレクション、昆虫標本やらと集めたがるのはなぜか男の子に多い。もちろん女性のコレクターもいるだろうが、やはり男の習性なんでしょうか、これは?…

オーシャンズ13

もともとこのシリーズへのわたしの評価はそれほど高くない。にもかかわらず見てしまうのは、やはりオールスターキャスト映画のオーラに惹かれてしまうのだろうなぁ。 相変らずソダーバーグはカメラ・テクニックを見せてくれる。かといってこれまでのいろんな…

「二十四時間の情事」をカルースはいかに分析したか

『トラウマ・歴史・物語』の第2章「文学と記憶の上演」はディラスの脚本によるアラン・レネ監督の映画「ヒロシマ私の恋人」(「二十四時間の情事」)についての分析だ。 ここからいくつか引用を。主演の岡田英次はフランス語をまったく理解しないという。彼…

二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)

再チャレンジでやっとこさ全部見た。これ、要するに記憶について語っているのね。被害の記憶、過去の傷についての記憶。しかし、映画として成功しているとは思えないのだけれど…。 モノクロの画面が過去と現在とを往還し、現在の場面ではアップを多用して登…

夜よ、こんにちは

見終わった瞬間、「いったい何がいいたい映画なのか?」と切ない余韻のなかで思った。わたしの頭を混乱させるほど、この映画はモロ元首相暗殺事件を幻想的にそして徹底的にテーマをそぎ落として描いた。赤い旅団の歴史と思想のすべてを描こうなどとはベロッ…

紙屋悦子の青春

病院の屋上のベンチに老夫婦役の原田知世と長瀬正敏が暗い表情で座っている。二人はどうでもいいような会話を薩摩弁で延々と繰り返す。映るのは屋上と雲だけ。メイキャップで老けさせているけれど、この二人はどうみても老人に見えない。しかも延々と退屈な…

存在の耐えられない軽さ

公開当時に見たときにはこの作品にあまり良い感じを持たなかった。トマシュが単なる女たらしにしか見えなかったからだろう。最近になって原作を読み、随分違う印象を受けた。トマシュとテレーザだけの物語ではなく、サビーナとその愛人フランツの物語も大き…

300 <スリーハンドレッド>

この映画を見たくてたまらなかったうちのS次郎は、R-15なのでやむなく劇場鑑賞を断念。しかしこれ、リアリティなどまるでない劇画調なので、首が飛ぼうが腕がちぎれようが、ちっとも残虐感がない。「パンズ・ラビリンス」のほうがよっぽど痛さが身に染みる映…

シュタージ関係2冊

映画「善き人のためのソナタ」を見る前に読んでおきたいのがこの2冊。見た後でもいいけどね。 (1)監視国家 :東ドイツ秘密警察に引き裂かれた絆 / アナ・ファンダー著 伊達淳訳 白水社 2005.10 シュタージの人間と監視された人間の両方へのインタビュー。…

善き人のためのソナタ

映画は、重く悲しい内容だったけれど、最後はホロリと来ました。とてもよかった。 ヴィースラーが「善き人のためのソナタ」を聴いて涙を流すシーンは、「リベリオン」の冷酷な取締官がイェーツの詩を読んで涙を流すシーンを思い出させる。人は美しいものに心…

ジョン・リードの伝記2冊

映画「レッズ」を見たあとでこの2冊を。■ジョン・リードの伝記(1)時代の狙撃手 : ジョン・リード伝 / タマーラ・ハーヴィ著 ; 飛田勘弐訳. 至誠堂, 1985. -- (至誠堂新書 ; 14) - 巻末にリードの自伝エッセイ「もうすぐ30歳」を収録。このエッセイには彼…

レッズ

ロシア革命を取材し、『世界を揺るがした10日間』という傑作ドキュメントを著して歴史に名を残したジャーナリスト、ジョン・リードの伝記映画。今も彼の遺体はクレムリン宮殿に眠る。 本編を見る前に特典映像から先に。当時のスタッフとキャストたちへのイン…

イタリア的、恋愛マニュアル

恋はいつでも突然やって来る。その嵐に掴まれたら最後、誰も抗うことはできない。恋の始まりは炎が明るく照らす。けれど、ひとたびその恋が深まり、二人が近づけば、互いの炎が互いの頬を焦がし髪を燃やす。近づけば近づくほど人は傷つけあい、愛の煉獄へと…