吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー

そういえば、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』はまったく面白くなかった。なんでこれが世界的ヒット作? わたしには理解不能。だから彼の伝記には全然興味がなかったはず。なのになぜこのDVDを借りたのは意味不明だ。だから、やっぱり見終わっても「…

1987、ある闘いの真実

ソウル大生の拷問死という事実を基に描かれた、見ごたえたっぷりの社会派ドラマ。「タクシー運転手」も良かったが、この「1987」のほうが作品の完成度がはるかに高い。ただし、登場人物が多すぎて一回見ただけでは理解できなかった(酔っぱらっていたせ…

僕はイエス様が嫌い

22歳の学生監督が撮った作品がサンセバスチャン国際映画祭で最優秀新人監督賞を史上最年少で受賞したということでずいぶん前評判が高いようだ。 監督自身の体験を基にした伝記的な物語。それは東京から雪国に引っ越してきた小学生男子のひと冬の楽しく切ない…

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

愉快痛快、音楽も軽快。実に気持ちよく、そしておいしそうな映画だった。役者も豪華で、こんな「ちょっとした話」なのにこの配役! 羨ましいです。製作・監督・主演のジョン・ファヴローの人徳かな? で、そのジョン・ファブローはいかつい身体に似合わずた…

8年越しの花嫁 奇跡の実話

意外にもいい映画だった。期待を裏切らない、いやそれどころかそれ以上の出来。瀬々監督はこういう作品も撮れるんだなぁ、驚嘆と同時に改めて敬服した。土屋太鳳の演技力にも舌を巻いた。弾ける若さを見せていたかと思えば突然の病気、豹変する表情やしぐさ…

12か月の未来図

「僕たちは希望という名の列車に乗った」と同じ日に見た。これもまた秀作で、フランスの教育事情の一端を描いた多くの作品の中でもとても良い出来。ただし、数年前に話題になった「パリ20区 僕たちのクラス」を未見だったので、比べることができない。 フラ…

ドキュメント輪禍 むちうたれる者

5月に神戸映画資料館で労働組合映画特集が開催された。その折に見た作品。 映画を見ながらいろんなことを考え、思考があちこちに飛ぶという楽しい経験をした。映画に映し出されるのは50年前の大阪。登場するタクシードライバーや社長がコテコテの大阪弁なの…

トム・オブ・フィンランド

ゲイ・カルチャーの先駆者と呼ばれた、フィンランド出身の画家「トム・オブ・フィンランド」(本名トーコ・ラークソネン)の半生を描いた静かでかつ力強い映画。 第2次世界大戦が始まったころ、フィンランドでは対ソ戦争が起きていた。トーコが若いソ連兵を…

ボヴァリー夫人とパン屋

最初はどうということもない物語かと思って見ていたのだが、次第にそそられていき、最後にはそのフランス風のエスプリに痺れさせられた。 まず、田舎の小さなパン屋の主人が元々は出版社勤務であり、父親が亡くなったので後を継いだという設定にそそられる。…

ザ・ダンサー

19世紀末のアメリカで女優を目指していたロイ・フラーが、やっと手に入れた役はセリフもなく舞台で踊るだけ。しかし、その時とっさに衣装を波打たせて踊った踊りが異様な喝采を受け、ダンスに目覚める。その後知り合ったフランス人貴族の援助を得て母の故郷…