吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

映画

私のはなし 部落のはなし

一人の学生が、屠場(とじょう)の人々を撮影した「にくのひと」というドキュメンタリー映画を作った。思いのほか評判を呼んで劇場公開にこぎつけるところまで行ったが、部落解放同盟兵庫県連合会の抗議を受けて、作品はお蔵入りとなった。それから10年、か…

焼け跡クロニクル

「焼け跡」は比喩じゃなくて、本当に火事で焼けたての、まだ消防車や救急車がサイレンを鳴らしている様子から映画が始まる。2018年、この映画の監督一家5人が暮らしていた京都の家が全焼してしまう。大事な撮影素材や機材を持ち出そうと原將人監督は火の中に…

アイリッシュマン

ヤクザ映画は嫌いなのだが、これはネットフリックス製作の配信映画にもかかわらずアカデミー賞に10部門ぐらいノミネートされたので、記憶に残っていた。 で、その結果。前半はかなり爆睡してしまったのだが、その原因は酔っぱらって観ていたからであり、素面…

すばらしき世界

2021年11月鑑賞。 元ヤクザの心優しき男がなんとか更生しようと懸命に努力しながらもなかなかうまくいかないという、可笑しくも悲しく切ない物語。 殺人犯としての刑期を終えて出所した三上正夫(役所広司)は身元引受人となってくれた弁護士夫婦の元へやっ…

白頭山(ペクトゥサン)大噴火

一回目の鑑賞では途中爆睡。気を取り直して後日2回目の鑑賞では1.3倍~2倍速で見た部分も多いので、話がサクサク進んで楽しかったし、よくわかった。いやあ、最近は映画を一回見ただけでは理解できなくなってきているよ、わたしの脳みそやばい。 そもそも白…

コレクティブ 国家の嘘

2021年10月鑑賞。 この映画はドキュメンタリーであることが信じられないほどにドラマティックに仕上がっているのが驚きの一作である。タイトルの「コレクティブ」は2015年に火災が起きたライブハウスの名称。映画の冒頭で、このライブハウスで行われているラ…

アメリカン・ユートピア

7/15に鑑賞。 面白いという前評判をうろ覚えで見に行ったので、音楽パフォーマンスの記録だとは知らなかった。てっきりブロードウェイのお芝居かなにかを見せてくれるのかと思ったら、 そうではなくて、でも「なんじゃこりゃ?」とつまらなく思った冒頭から…

JUNK HEAD

2021年6月末に見た。 驚異的な映画である。よくこんなものをほとんど一人で作ったな、と驚嘆したものだ。ストップモーションアニメは究極のアナログ作業だ。やはり完成までに7年もかかったという。その緻密な造形には恐れ入るが、なによりも、原作・脚本・監…

DUNE/デューン 砂の惑星

2021年10月に鑑賞。 これはもう美術や演出が素晴らしいの一言である。しかし、三部作の第1作であり、作品全体を評価するのは難しい。物語の構造全体も見えていない。だからなのか、アカデミー賞では作品賞にノミネートはされているが、有力候補という下馬評…

テレビで会えない芸人

鹿児島放送のテレビドキュメンタリーが元になっている作品。なんで鹿児島?と思ったら、松元ヒロの出身地だった。しかしテレビに出ない(出られない)芸人の芸を撮影してもテレビで放送できないやんか!(笑)。というわけで、映画になったのであった。元のテ…

残された者 -北の極地-

紅白歌合戦などは見向きもせず、ぬくぬくとした自宅の居間に寝そべりながら見たのはこの北の極地の物語。わたしが役者だったら絶対にあんな映画には出たくない!という寒くてたまらない過酷な撮影だったに違いない。 映画はいきなり小型飛行機が雪原に埋もれ…

パーフェクト・ノーマル・ファミリー

ある日突然、両親が離婚するという。その理由が「パパが女性になりたいから」だと聞けば二度びっくり。というよりも驚天動地の、世界が裏返るような出来事に違いない。とりわけ思春期に差し掛かる難しい年ごろの少女にとっては言葉にできない思いがあるだろ…

ブラックバード 家族が家族であるうちに

原作は戯曲かもと思ったら、ビレ・アウグスト監督作のリメイクであったか。なるほどと納得。たぶん、原作よりかなり明るく変えられているのではなかろうか。 安楽死をめぐる映画はここ10年ほどで増えているように思う。その中でも本作は突出して明るく、鑑賞…

キャッシュトラック

ついこの前まえ映画館で上映していたのに、もう配信されているなんて! それはともかく、この手のアクションものの演出はやっぱりガイ・リッチーです。うまいわ。時間軸をいじって、「あの場面は実は…」という見せ方をしていくのが観客の興味をそそり、同じ…

火口のふたり

タイトルバックの写真からしてまるでポルノ。そのあとも「まあ、なんていやらしい映画でしょう」と思わせる場面が続出するので誰が撮ってるんだと調べたら荒井晴彦。なるほど、と納得。当然にもR18+だった。 登場人物はほぼ二人だけ。従兄妹どうしの二人は血…

水俣曼荼羅

6時間を超える上映時間。途中2度の休憩をはさんで、三部作に分かれている。劇場では都合6時間半かけて見ることになる壮大なドキュメンタリーだが、まったく飽きることがない。その理由は、この作品が曼荼羅というタイトルにふさわしく大勢の登場人物たちに肉…

燃ゆる女の肖像

様々に小さな伏線を敷き、実に機微に富んだ心理描写をしている作品であり、見終わってから胸にじわっと染みてくる。 「セリーヌ・シアマがカンヌで脚本賞を獲った作品、観たか?」と息子Y太郎(30歳、在仏)に尋ねたら、即座に「ああ、シアマか、彼女の映画…

返校 言葉が消えた日

社会派ホラー映画という触れ込みに惹かれて見始めたのだが、これは台湾の黒歴史に向き合った作品として印象に残った。こういう映画が中国本土では作れないだろうと思うと悲しいし、日本ではもっと難しいだろうと思うと憂鬱になる。 「学校の怪談」みたいな映…

アンモナイトの目覚め

実在の、在野の古生物学者であったメアリー・アニングと、彼女の恋人となる若き人妻とのひと時の秘めた愛情物語。メアリーは実在の人物だが、彼女の恋愛についてはフィクションである。 19世紀半ばのイギリスでは女の権利などどこにも存在しない。メアリーは…

ボストン市庁舎

なにしろワイズマン監督である。最近はどんどん上映時間が長くなって、「ニューヨーク公共図書館 エクスリブリス」は3時間半もあった。こんどの「ボストン市庁舎」に至っては4時間32分という増長ぶり。こんなことでいいと思ってんのか、責任者出てこーいと、…

ユダヤ人の私

ホロコーストを生き延びた104歳の老人が一人カメラに向かって淡々と自分の体験を語る。ただそれだけの映画なのに、一切退屈することがない。話の要所要所で章を区切るように、過去の国策映画やニュース映像が挿入される。それがブレイクタイムの役目を果たし…

これは君の闘争だ

2016年の軽井沢スキーツアーのバス事故で亡くなった学生が最後に読んでいた本が、小熊英二『社会を変えるには』だったという記事が「朝日新聞」(2017.1.15)に掲載されている。日本の学生はなかなか社会を変えるための行動に立ち上がらない。安保法制反対運…

恋する寄生虫

寄生虫が宿主の精神状態を左右して支配するという物語の設定は、R.ドーキンス『利己的な遺伝子』や瀬名秀明『パラサイト・イヴ』を想起させる。頭の中に寄生虫が居る男女は寄生虫に操られて恋に落ち、虫の繁殖を助けることになる――そんな奇抜な発想で書か…

私は、マリア・カラス

こういう伝記ドキュメンタリーをなんの期待もなく見ると実は面白い、という感想を持ってしまう。わざわざお金を払って映画館へ行っていたら腹が立つかもしれないが、就寝前にベッドの中に毎晩持ち込んでいるiPadで見る映画としてはまったく問題なく楽しめる…

希望のかなた

アキ・カウリスマキ監督の作品は久しぶり。どんなふうに作風が変わったのかと楽しみにしていたら、これがまったく相も変らぬカウリスマキ調大展開。巻頭からしばらくののんべんだらりぶりにちょっと眠気を催し始めたころ、主人公のシリア難民とフィンランド…

ある人質 生還までの398日

7月に鑑賞。四か月近く経ってしまったので、いつものようにすっかり忘れているが、これは見ごたえあったという記憶が残っている。こういうときにパンフレットを買っておくのは役に立つ。読みながらあれこれと思い出すのだ。 2013年4月から2014年6月まで1年…

ゴジラvsコング

8月に映画館で鑑賞。 これ、“モンスター・バース”シリーズの第4弾だそうな。どうりで、ほとんど何の説明もなくいきなりいろんな話が始まるから、「モナーク」って何だったっけ? なんでいきなり芹沢博士が出てくるんだ? まあ、ゴジラに芹沢博士はつきもの…

異端の鳥

モノクロで描かれるホロコーストの凄惨。これはホロコーストというよりも、もっと根源的な人間の悪について描いた映画だ。だからこそ舞台を特定の国に限定せず、主人公の少年の名前も不明なままだった。ホロコーストは人間の悪の部分の一つの象徴であって、…

引っ越し大名!

今年5月、星野源が新垣結衣と結婚したとかで大騒ぎになっていたその直前に、彼が主演した映画をたまたま見た。テレビを見ないわたしとしてはなんでこの二人の結婚がそんな大きなニュースなのか理解できなかったのだが、さぞや二人が主演したテレビドラマが面…

クーデター

とある東南アジアの国で起きたクーデターに巻き込まれたアメリカ人駐在員が家族を連れて必死の脱出を試みる、サバイバルアクション映画。 主役が「エネミーライン」のオーウェン・ウィルソンだからマッチョなパパが孤軍奮闘するのかと思いきや、このパパ、さ…