吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

映画

野性の呼び声

ジャック・ロンドンの有名な原作は彼が24歳ぐらいのときに書かれた小説だったのだ。今更知って驚いている。子どもの頃、ジャック・ロンドンは「白い牙」とか興奮しながら読んだ覚えがある。 その小説世界を見事に映画にしてしまった、というわけ。まあ、今ど…

ジュディ 虹の彼方に

「エディット・ピアフ 愛の賛歌」を見たときと同じ種類の感動を味わった。タイトルロールの被伝者への敬意と憐憫、そして演じた女優の努力と才能への驚嘆。 ”芸能界で消費されていく幼い才能”という悲劇がジュディの生涯を覆った。その最期の輝きが見られた…

エルネスト

チェ・ゲバラの最期の闘いに同行して死んだ日系人の遺族の手記を元に映画化された。ゲバラ没後50年の企画である。 映画は1959年の日本から始まる。来日していたゲバラはいつでもどこでもあの軍服姿で、予定になかった広島行きを組み、原爆慰霊碑の前に立つ。…

私の知らないわたしの素顔

SNSの世界で他人になりすまし、疑似恋愛の深みにはまっていく中年女性を描いたスリリングな物語。 映画の巻頭まもなく、都会の夜景を見下ろす高層マンションの天井高の窓にはりつくセックスシーンにぎょっとしていると、次のシーンではこの裸の女性が50代の…

マザーレス・ブルックリン

今年初映画館。なんでこんな地味な作品を選んでしまったのだろう。観客はほとんどいないではないか! スター俳優ぞろいなのに派手な場面がほとんどない作品で、エドワード・ノートンの演技を見るための映画だった。 本作の魅力の一つは音楽。ブルックリンの…

最高の人生のつくり方

軽妙なセリフの応酬が素晴らしく小気味いいなぁと感心。脚本がよいね、この作品は。シニア世代に夢と希望を与える楽しいロマンス。 マイケル・ダグラス演じるオーレンは不動産営業マンとしては抜群の腕かもしれないが、嫌みな男である。そろそろ引退を考えて…

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け

ついに終結、全9話が終わった。わたしはラストシーンで思わず涙してしまった。レイの最後のセリフに旋律を覚えて、このサーガの終わりに感動に打ち震えた。そして、続く長い長いエンドクレジットをあの壮大なテーマ曲とともに堪能した最後には劇場で拍手を送…

居眠り磐音

「いよっ、松坂屋!」と大向こうから声がかかりそうなほど、桃李くん、かっこいいです! 居眠りしているようにも見える構えから素晴らしい太刀さばきを見せる若き豊後関前藩士、坂崎磐音(さかざき・いわね)の波乱万丈の物語。 磐音の祝言前日に大きな事件…

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男

この映画をみると主人公ニュートン・ナイトの伝記を読みたくなる。それほど、ニュートン・ナイトが魅力的な人物として描かれているからだ。南北戦争時代に南軍から脱走した兵士や黒人奴隷たちを集めて武装蜂起し、コミューンを打ち立てた人物がいたとは! ま…

ロング,ロングバケーション

認知症の夫と末期癌の妻がキャンピングカーに乗って人生最期の旅に出た。目的地は夫が敬愛するヘミングウェイの生家。国語教師だった夫はどんなに頭がぼけてもヘミングウェイの小説は暗誦することができる。美しく気丈な妻は昼間は鬘を被って残り少ない頭髪…

アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲 2019

前作ファンとしては(をい、ほんとにファンと言っていいのか)続編は当然見るのである。しかし続編はまったく続編じゃなかった!(笑) ナチスの残党が月から攻めてくるという大筋は見事に無視されていて、全然ちがう設定になっている。放射能が蔓延して人が…

家族を想うとき

わたしはエンドクレジットを見ながら、「ケン・ローチがどれほどの怒りを込めてこの映画を作ったことか」と心の中でつぶやいた。「そして、どれほどの愛情を労働者階級に注いだのか」と胸が熱くなる思いがした。 前作「わたしは、ダニエル・ブレイク」と同じ…

トレイン・ミッション

ご都合主義も極まれり、というありえない設定だけれど面白いから許す。 リーアム・ニーソンが登場すると、とりあえずダイハードな展開だな、ということは予測可能。で、その通りに話は進む。これが気持ちいいのである。今回は通勤列車内で起きる「普段の通勤…

アルキメデスの大戦

7月末に見た映画。予想外に面白かったので、思わず原作漫画を電子版で購入してしまった。で、この映画は原作のほんのさわりの部分を描いただけに過ぎないということがわかった。わたしは原作のもつ歴史描写に引き込まれたと同時に、メカの絵ぢからに大いに感…

ちいさな独裁者

撮影が凝っている。最初ほとんどモノクロの画面から始まって徐々に色がついていく。ほとんど観客には悟られないぐらいのゆっくりしたペースで、気づいたらいつのまにかうっすらと色がついている、という感じ。かと思えばまたまたいつの間にかモノクロに戻っ…

ちょっと今から仕事やめてくる

ブラック企業の営業マンとして働く若き主人公が疲れ果てて思わず駅のホームから線路に倒れこみそうになった瞬間に彼を助けた人間は、超久しぶりに会う小学校の同級生だった。その後、飲み屋に直行して乾杯した二人は徐々に仲良くなり、死ぬほど苦労していた…

男はつらいよ お帰り 寅さん

山田洋次監督の「家族はつらいよ」では泣けないのに、「男はつらいよ」は大河ドラマの総集編みたいな今回の「お帰り寅さん」でさえ泣いてしまう。そのぐらい多くの人の、特に中高年の琴線に触れるものがあるのがこのシリーズだ。 お帰りといっても寅さんが実…

カツベン! 

活動写真弁士が大活躍していた大正時代の映画館を舞台に繰り広げられる、映画愛に溢れたコメディ。最後は大立回りのアクション映画に! 大笑いして楽しめる、映画ファンのための一作。 1916年、(大正5年)貧しい子供時代を過ごす俊太郎と梅子は活動写真が大…

第三夫人と髪飾り

夢の中にいるような気分にさせてくれる、桃源郷の物語。いやそれは、19世紀を生きた女たちの生と性と、そして生と死の物語だ。監督自身の曾祖母の人生を元に描かれたという。 今では観光地として知られているベトナム北部の世界遺産の景観は、山肌を縫うよう…

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

この映画を見れば不思議なことにマクドナルドのハンバーガーを食べたくなる。あんなに不味いのに! マクドナルド帝国はどのようにできあがったのかを赤裸々に描く伝記映画。ファウンダー(創業者)はレイ・クロックだが、彼は片田舎のマクドナルド兄弟が始め…

 決算!忠臣蔵

こんなにユニークで面白おかしい忠臣蔵は初めてだ。ネット上の評価は芳しくないが、わたしはとっても楽しめた。これは正統派忠臣蔵を知っている人でないと楽しめないので初心者にはハードルが高ったと思われる。登場人物がいったいどういうキャラクターなの…

イエスタデイ

映画館の中はもちろん中高年の観客だらけ。地味にロングランしてくれるおかげでやっと見に行くことができた。やっぱりいいねえ、ビートルズは。 世界中の誰もビートルズを知らなくて、自分だけが知っていたら?などという映画のストーリを思い付いたアイデア…

勝手にふるえてろ

小説が原作というのがよくわかる映画だ。主人公がしゃべりまくる。それも独り言のように。それが幻想だったり妄想だったりするのをスルーっと楽しく場面を飛ばしてセリフでつなぐ演出が小気味よい。 コメディらしく妄想女の片思いをさらりさらりと笑い飛ばし…

偽りの忠誠 ナチスが愛した女

これは意外な拾い物。 退位したドイツ皇帝ヴィルヘルム二世がその後どうなったのかまったく知らなかったので、それがわかるというだけでもとても興味深い。どこまでが史実なのかわからないが、よくできたスパイ恋愛ものと言える。 ただし、出演者全員が英語…

蜜蜂と遠雷

ピアノ曲好きにはたまらない映画。見終わった後、Youtubeでプロフィエフのピアノ協奏曲を繰り返し聞いてしまった。 本作はおそらく原作(未読)の書き込みが的確なのだろう。主演4人のピアニストそれぞれのキャラクターが立っていて、演じた役者もみなうまい…

アルツハイマーと僕~グレン・キャンベル音楽の奇跡~

「ラインストーン・カウボーイ」などの大ヒット曲で知られるカントリーミュージックのスター、グレン・キャンベルがアルツハイマー病を患っていることを公表し、家族とともに最後のツアーに出る。その1年半を追ったドキュメンタリー。 1936年生まれのグレン…

ジョーカー

これまた恐ろしい映画を観てしまった。一瞬も画面から目が離せない、ものすごい吸引力を持った映画だけれど、見終わった瞬間に「もう二度と見たくない」と思う。だからこの映画が大ヒットしている理由がわからない。リピーターが多いということなのか? バッ…

劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~

この映画のことは劇場の予告編上映で知った➡テレビドラマ版があったことを思い出す➡流行語大賞になったとかいう社会現象があったなあ➡そういうことならしょうがないから単発ドラマをAmazonプライムビデオで見る➡面白いやんかああああ➡テレビ版連続ドラマをAm…

エセルとアーネスト ふたりの物語

イギリスの絵本作家レイモンド・ブリッグズが自らの両親を描いた絵本を原作とするアニメ。ブリッグズの原作そのままの筆致が素朴で美しい、驚くべき手描きアニメの世界にうっとりする。 1928年、ブリッグズの両親、メイドのエセルと年下の牛乳配達人アーネス…

ボーダー 二つの世界

今年一番の衝撃作。あまりにも精神的負荷が高かったのですっかり緊張して固まってしまいましたよ。この映画に関しては一切の事前情報なしで見ることをお勧めします。 とか言いながら簡単にあらすじだけ書いてみると。。。 主人公の中年女性ティーナは特別な…