吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

映画

正義の行方

1992年に福岡県飯塚市で起きた、女児二名殺害事件は既に「犯人」久間三千年(くまみちとし)が死刑を執行されている。だが今、その裁判は間違いだったと、久間の遺族が二度目の再審請求を行っている。その再審の可否がいよいよ6月5日に下されるというニ…

オッペンハイマー

「原爆の父」と呼ばれたロバート・オッペンハイマーの伝記映画にして、見ごたえのある作品だった。冒頭に、神から火を盗んで人類に与えたプロメテウスが罰として拷問を受けたということが提示される。核爆弾がまさにプロメテウスの火であったことが描かれる…

青春ジャック 止められるか、俺たちを2

そして、今公開中の続編である。これも面白い。前作は、描かれた時代を知らない井上淳一と白石和彌が脚本と監督を務めたが、この続編は井上淳一の体験を元に脚本が書かれているため、学生時代の井上の怒りや葛藤や希望や嫉妬など、様々な思いが直に伝わって…

止められるか、俺たちを

どこから見ても面白い。若松プロの事務所の冷蔵庫には鍵がかけられているとか、笑えるエピソードだらけだ。やはり若松孝二その人のキャラクターの特異さが際立っているし、70年安保当時の若者たちの無軌道ぶりやエネルギーがこの映画のキモとなる。しかし同…

エクスペンダブルズ ニューブラッド

10年ぶりのシリーズ新作、第4弾。 第1作は脳みそを1ミリも使わない作品で途中退屈してしまったが、続編はひねりもあり、多少は頭脳も使っている形跡があったので面白く見ることができた。で、もう終わりやんねと思ったら第3作まであって、それはまたまた脳み…

PERFECT DAYS

12月30日の3本立ての2本目。 これはいかにもヴィム・ベンダースらしい作風だ。東京で一人暮らしをする慎ましい中高年男性の生活が淡々と繰り返されるだけ。それだけ。 主人公の平山(小津安二郎の作品によく登場する人物名)は結婚もせず子どももおらず、ア…

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~

12月30日に映画館で見た3本目。 あまりにも面白いから疲れも落ちた。とはいえ、途中ちょっとだれた部分もあって。それは甲子園の地下工場(だったかな)の場面。ちょっとしつこかったな、これは。しかしその他はとても気持ちよくて、とりわけ大阪府知事が極…

コンフィデンシャル:国際共助捜査

事前情報ゼロの状態で見始めたから、ヒット作の続編だったとは知らなかった。途中で、なんだか続編ぽいなあと思ったので後で調べたら5年ぶりの続編であったことが判明。 内容はどうということもないアクションコメディ。アクションシーンはかなり派手で、し…

TAR/ター

冒頭、ベルリンフィル史上初の首席女性指揮者となったリディア・TARがインタビューに答える長セリフの知的な緻密さにまずは圧倒される。淀みなく答えるTARを演じるケイト・ブランシェットの自信たっぷりで気高い美しさには惚れ惚れした。しかしここで字幕が…

告白、あるいは完璧な弁護

スペイン映画のリメイクだそうな。オリジナルがなかなかよかったのだろう、サスペンス風味たっぷりな展開は手に汗握って面白い。ただし、わたしは途中で真相がわかってしまったので、やや興ざめ。あるいは、わざと観客に気づかせるように演出しているのかも…

大名倒産

これは面白い! 爆笑しました。 この手の時代劇コメディは最近増えたと思うのだが、きっかけは「超高速参勤交代」だろうか? そこでちょっと流れを調べてみた。 1986年 ジャズ大名 (これは今回の流れより古すぎるので参考までに) 2010年 武士の家計簿 2014…

浅田家! 

実話を元にしているということなので、興味深く見た。 ひたすら家族の写真を撮り続ける写真家というのも面白い。これは究極の私小説ならぬ私写真集ではないか。赤の他人には何がおもしろいのかと思うのだが、しかしこれが面白いかもとても不思議だ。浅田政志…

別れる決心

知り合いのシネフィルが大絶賛していた映画なので、気になって見てみたら、想像していたのとは全然違った。なるほどこれは全編妄想に彩られた作品で、どこまでが「現実」でどこからが「妄想」「夢想」「夢」なのかが判然としない不思議な物語だった。主人公…

宇宙人のあいつ

低予算映画きわまれり。とバカにしてはいけない。まあ、チープなのは否定しがたいが、なかなか楽しくて退屈しなかった。よきかな。アホらしいコメディなんだが、その設定のすべてがあまりにもチープなので笑うしかないところがいい。そして、そのチープさを…

東京夫婦善哉

気功の第一人者星野稔とその妻でスペイン語翻訳者の星野弥生夫妻の最期のときを映したドキュメンタリー。 稔がスキルス性胃ガンで余命三カ月~六カ月、抗がん剤治療をすれば2年に延長と診断されたところからカメラが回りだす。気功は免疫力を高めるはずなの…

最悪な子どもたち

フランス北部、イギリスに面する海岸地方にある「ピカソ地区」の労働者用集合住宅に住む子どもたちのオーディション場面から映画は始まる。 これは映画のメイキング映像なのか? どこまでがドキュメンタリーでどこまでがフィクションなのか、見れば見るほど…

ゴジラ-1.0 

戦後間もない時代に設定した、ゴジラ映画。わたしはこれまで何本ものゴジラ映画を見てきたが、これほど泣いたのは初めてだ。そしてなぜ「マイナス1.0」なのか、元祖ゴジラは1954年のアメリカのビキニ水爆実験をきっかけに生まれたことになっているのに、その…

ドミノ

映画が始まる前に売店でパンフレットを買おうと思って、販売員の若いお姉さんに「パンフレット頂戴。アルゴ」と言ったら、「は?」という反応。あ、「アルゴ」ってベン・アフレックが監督としてアカデミー賞を獲った超面白い映画やんか、ちゃうちゃう、今回…

ほかげ

塚本晋也監督には「野火」という恐ろしい作品がある。あれは忘れられない恐怖体験であり、二度と見たくないけれど一度は必見と言える作品だった。「野火」は大岡昇平が緻密に描いた、恐るべき戦場の飢餓小説を映画化したものだ。目を覆うような惨状が繰り広…

エクスペンダブルズ3 ワールドミッション

第1作はつまんなくて、第2作はまあまあ面白くて、そうなると第3作はどうなのだろうか、と期待にワクワク。なんてするわけなくて、あっという間に退屈して爆睡。ほぼ全編寝ていたので、なんの話かさっぱりわからなかった。これはいかん! というわけでiPadで1…

エクスペンダブルズ2

傭兵軍団「エクスペンダブルズ」の次なる舞台はネパールである。いきなりネパールで銃撃戦、爆撃戦、炸裂の上にも炸裂。なんでそんなところに戦車の車列が現れるんだ? いやいや、考えたらあかん、考えたらあかん。なんでそんなところで急に別の傭兵があらわ…

ザ・クリエイター/創造者

機械と人間との争いが極限に達した近未来を舞台にした物語。こういう基本設定の映画はこれまでいくらでもあったから、どれほど新味を出せるか、興味津々である。ストーリーとしてはもはや新味を出すのは難しいかもしれない。そうなると、プロダクションデザ…

リチャード・ジュエル

奇をてらうこともなくかっちりと作られている映画なので、その分面白みがない。しかし、冤罪というものがこのようにして作られるというのがよくわかって、恐ろしい。 物語は、1996年のアトランタ五輪大会期間中に起きた爆弾テロに題材をとる。主人公は警備員…

ワース 命の値段

9.11テロをめぐる映画はいくつも作られたが、本作のように被害者7000人に政府が犠牲者補償金を払っていたという話は初めて知った。しかもその理由が、「ハイジャックに遭った航空会社が訴えられたら、訴訟だらけになって大混乱する」ということなのだから、…

明日に向かって笑え! 

てっきり実話と思い込んでみていたのだけれど、こんなうまい話は無いわな。きっと作り話なんだろうけど、ものすごく面白かったので爽快である。日本語タイトルはもちろん「明日に向って撃て!」のもじりである。 本作は2001年アルゼンチンの金融危機を背景に…

愛の予感

不思議な映画だ。ある意味、映画の原点のような。冒頭以外にはほぼセリフがないので、ひたすら映像だけで「事態」の推移も登場人物の心理も描いていく。まるで無声映画のようだ。しかも、二人の人物の淡々とした日常生活を繰り返し映していくだけ。中年男は…

非常宣言

タイトルの「非常宣言」は航空機が操縦不能などの緊急事態に陥ったときに不時着などを要請することを言うらしい。 で、問題の航空機はバイオテロの標的となって、機内に致死性ウィルスがばらまかれ、患者が次々死んでいき、どこにも着陸許可が下りないという…

バーナデット ママは行方不明

ケイト・ブランシェットの演技力に舌を巻く作品。ほぼ彼女の顔を見ているだけで終わってしまうような。それだけで十分見ごたえがあるのにもかかわらず、なんとわたしは中盤以降で寝落ちして、バーナデットがなぜ「天才」と呼ばれた建築家の仕事をなげうった…

本作は、2016年に起きた障害者施設での大量殺人事件を題材にした辺見庸の小説の映画化作品。原作は小説でしかなしえない表現で重度障害者の意識の流れを複数人の一人称でつづっていく意欲作だが、映画ではその構成を大胆に変えて、具体的なストーリーを組み…

ウェルカム トゥ ダリ

芸術家の伝記映画はたいてい面白い。何しろ人物そのものが奇矯であり、人生そのものが山あり谷ありの波乱万丈。普通に撮っていてもそれなりに見られる作品にはなるはずだ。それに本人の描いた作品もたくさん見られて幸せ。 しかしこの映画ではダリの作品をほ…