吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

せかいのおきく

肥汲み人たちが主人公になる映画なんて本邦初ではないか。差別され蔑まれる彼らを主役に置き、その一人に恋する落ちぶれた武家の娘が声を失っているという設定は、幾重にも「欠落」や「スティグマ」を表現している。 映画に匂いがなくてよかったとわたしは心…

The Son/息子

父と息子、孫という3代にわたる葛藤が描かれる、重い映画。ポスターにはヒュー・ジャックマン演じる父親と息子が哄笑している場面が使われているから、明るい結末が予想されるのだが、実際には大変つらい映画だった。 物語は。高校生ニコラス少年の離婚した…

ユーリー・ノルシュテイン傑作選

ロシアのアニメ作家ユーリー・ノルシュテインの1960年代から70年代にかけての短編を集めて日本で修復したという「傑作選」。アニメの芸術性の高さに驚嘆した。特に二つ目の動く宗教画とも呼ぶべき「ケルジェネツの戦い」は、ひとつずつのシーンがそのまま額…

ワタシタチハニンゲンダ!

髙賛侑監督の作品としては「アイたちの学校」に続く第2作。現在進行形の事実に迫ったドキュメンタリーであり、衝撃の場面も「よく映像が入手できたなあ」と驚くばかり、見ごたえのある作品だ。 2021年3月、若きスリランカ人女性のウイシュマ・サンダマリさん…

ノートルダム 炎の大聖堂

文化財を保全する意義を語る講義のネタにと思って見た映画なのだが、予想以上に面白く、胸が熱くなる作品だった。 「タワーリング・インフェルノ」「バックドラフト」「バーニング・オーシャン」といった、消防士や火災を扱った映画はいくつか見てきたが、こ…

うつろいの時をまとう

着物と洋服を融合させたデザインという理解ではあまりにも浅薄すぎる、「matohu」(まとう)というブランドを2005年に立ち上げた二人のデザイナーを映すドキュメンタリー。 巻頭、静かなピアノの音色と共に展覧会の様子が映る。20年に東京で開催された…

エノーラ・ホームズの事件簿2

シリーズ第2作。イギリス労働運動史上名高いマッチ女工ストライキを題材にしている、労働映画である。第1作にも勝るとも劣らない面白さ。これは第3作もぜひ作ってほしいものだ。 マッチ女工ストライキは1888年に起きたのだが、シャーロック・ホームズの時代…