吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

別れる決心

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 知り合いのシネフィルが大絶賛していた映画なので、気になって見てみたら、想像していたのとは全然違った。なるほどこれは全編妄想に彩られた作品で、どこまでが「現実」でどこからが「妄想」「夢想」「夢」なのかが判然としない不思議な物語だった。主人公が刑事ということもあって、わたしは何度も「インソムニア」を思い出した。  

 物語は、60歳の金持ち男性が山頂から転落死したが、彼の若い中国人妻ソレが犯人ではないかと疑う刑事ヘジュンが捜査を始める。一目見た瞬間からその若妻に惹かれてしまったヘジュンは、彼女との妄想の恋に身を焦がすようになる。精神的に不安定なヘジュンは妻との生活に息が詰まるような思いを抱き、不眠症が亢進していく。いつしか幻影も幻覚も現実も区別がなくなり、ソレとの恋愛ゲームはいつ果てるともなく続いていく……。

 まあ、パク・チャヌクですからね、脚本・監督が。普通の映画のはずがないことはわかっていたが、それにしてもややこしすぎる。途中でなにがなんだかわからなくなってきた。そもそもこれは殺人事件の真相を追うミステリーではないのだ。それよりも、追う刑事と追われる容疑者との禁断の恋愛がスリリングに展開する妄想物語で。こういうのが好きな人は猛烈に好きだろうし、性に合わない人は30分以内に席を立つ、という作品である。

 中国人妻が実に美しい。どこかで見たことがあると思ったら、「ラスト、コーション」のタン・ウェイだった! 若い頃よりずっと成熟した美しさが映えている。ミステリアスなタン・ウェイも魅力的だし刑事ヘジュン役のパク・ヘイルも男前だし、画面が美しいので、わけのわからない画面転回にもかかわらずわたしは最後まで引き込まれていた。

 好悪がはっきり分かれる作品だと思うので、評価が難しい。(Amazonプライムビデオ)

 2022
韓国  Color  138分
監督:パク・チャヌク
製作:パク・チャヌク
脚本:パク・チャヌク、チョン・ソギョン
撮影:キム・ジヨン
音楽:チョ・ヨンウク
出演:タン・ウェイ、パク・ヘイル、イ・ジョンヒョン、パク・ヨンウ