吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ユダヤ人の私

ホロコーストを生き延びた104歳の老人が一人カメラに向かって淡々と自分の体験を語る。ただそれだけの映画なのに、一切退屈することがない。話の要所要所で章を区切るように、過去の国策映画やニュース映像が挿入される。それがブレイクタイムの役目を果たし…

これは君の闘争だ

2016年の軽井沢スキーツアーのバス事故で亡くなった学生が最後に読んでいた本が、小熊英二『社会を変えるには』だったという記事が「朝日新聞」(2017.1.15)に掲載されている。日本の学生はなかなか社会を変えるための行動に立ち上がらない。安保法制反対運…

恋する寄生虫

寄生虫が宿主の精神状態を左右して支配するという物語の設定は、R.ドーキンス『利己的な遺伝子』や瀬名秀明『パラサイト・イヴ』を想起させる。頭の中に寄生虫が居る男女は寄生虫に操られて恋に落ち、虫の繁殖を助けることになる――そんな奇抜な発想で書か…

私は、マリア・カラス

こういう伝記ドキュメンタリーをなんの期待もなく見ると実は面白い、という感想を持ってしまう。わざわざお金を払って映画館へ行っていたら腹が立つかもしれないが、就寝前にベッドの中に毎晩持ち込んでいるiPadで見る映画としてはまったく問題なく楽しめる…

希望のかなた

アキ・カウリスマキ監督の作品は久しぶり。どんなふうに作風が変わったのかと楽しみにしていたら、これがまったく相も変らぬカウリスマキ調大展開。巻頭からしばらくののんべんだらりぶりにちょっと眠気を催し始めたころ、主人公のシリア難民とフィンランド…

ある人質 生還までの398日

7月に鑑賞。四か月近く経ってしまったので、いつものようにすっかり忘れているが、これは見ごたえあったという記憶が残っている。こういうときにパンフレットを買っておくのは役に立つ。読みながらあれこれと思い出すのだ。 2013年4月から2014年6月まで1年…

ゴジラvsコング

8月に映画館で鑑賞。 これ、“モンスター・バース”シリーズの第4弾だそうな。どうりで、ほとんど何の説明もなくいきなりいろんな話が始まるから、「モナーク」って何だったっけ? なんでいきなり芹沢博士が出てくるんだ? まあ、ゴジラに芹沢博士はつきもの…

異端の鳥

モノクロで描かれるホロコーストの凄惨。これはホロコーストというよりも、もっと根源的な人間の悪について描いた映画だ。だからこそ舞台を特定の国に限定せず、主人公の少年の名前も不明なままだった。ホロコーストは人間の悪の部分の一つの象徴であって、…

引っ越し大名!

今年5月、星野源が新垣結衣と結婚したとかで大騒ぎになっていたその直前に、彼が主演した映画をたまたま見た。テレビを見ないわたしとしてはなんでこの二人の結婚がそんな大きなニュースなのか理解できなかったのだが、さぞや二人が主演したテレビドラマが面…

クーデター

とある東南アジアの国で起きたクーデターに巻き込まれたアメリカ人駐在員が家族を連れて必死の脱出を試みる、サバイバルアクション映画。 主役が「エネミーライン」のオーウェン・ウィルソンだからマッチョなパパが孤軍奮闘するのかと思いきや、このパパ、さ…

スウィンダラーズ

ヒョンビン目当てで見た映画。イヤー面白いですねぇ、さすがは韓国映画。これは詐欺師が詐欺師をだます話で、日本ならコンフィデンスマンJPの類なんだけど、さすがはヒョンビンが演じるだけあってアクションものなのであります。 しかも話がだんだんこんがら…

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝

ナレーションも解説の字幕もつかないという、いつものワイズマンの作風。「エクス・リブリス ニューヨーク公共図書館」はかなり以前に本を読んでニューヨーク公共図書館のことを知っていたので、映画としては全然新鮮味がなくて爆睡していたが、今回のミュー…

ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実

この映画はベトナム戦争が終わる前に作られているので、撤退の様子は映っていない。兵士たちの生々しい証言が胸を打つ。今では有名になったベトナム人たちが逃げ惑う姿の映像(世に知られているのは静止画)が改めて映し出されて、こういう画は見飽きるとか見…