吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

英国総督 最後の家

マウントバッテン卿の名前だけは聞いたことがあるが、最後のインド総督だったとは知らなかった。しかもロマノフ王朝の親戚でかつヴィクトリア女王の孫だったのか。しかし画面に登場した瞬間からダウントンアビーの伯爵にしか見えないところがつらい。グラン…

人生はシネマティック

映画製作のバックヤードものは映画人が大好きなジャンル。そして映画ファンも。当然、わたしも。しかもこの映画は戦時中のイギリスを舞台に、軍部の圧力のもとに製作された戦意発揚映画の裏話で主人公が女性脚本家とくれば、それだけで見たくなる作品だ。 戦…

ブレス しあわせの呼吸

人工呼吸器をつけたまま25年以上存命した男とその妻の献身を描く実話。これが実話というのがやはり感動の原点で、しかも本作のプロデューサーの両親の物語だというから驚きである。 1958年、イギリス上流階級の青年が社交界の花と結婚し、新妻が懐妊して喜ん…

GODZILLA 怪獣惑星 / GODZILLA 決戦機動増殖都市

「ゴジラ」シリーズ初の長編アニメーション三部作。2018年中に全部が劇場公開されたけれど、わたしは2作をDVDで鑑賞しただけなので、結局結末を見ていない! あ〜、イライラするわー、こうなったら早く第三章を見たいです! で、物語は。 地球はなぜか突然ゴ…

WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~

労働映画百選にも選ばれた、正統派労働映画。後継者不足に悩む林業の現場が舞台になっていて、普段見ることのない林業労働の実態の断片がわかる。 既に産業として存在し得ないほど衰退している林業に若者を呼ぶことはできるのか?! 本作は三重県でオールロ…

家へ帰ろう

戦後70年経ってもホロコーストの生存者たちは戦争を忘れない。あの災禍を忘れない。だから、ポーランドに生まれ、家族を皆殺しにされた少年アブラハムは1945年にアルゼンチンに渡ったあとは、「ポーランド」という言葉をタブーとした。 今や年老いて足…

来る

「来る」って、何が? いやもう、それは物の怪に決まっているでしょう。で、その正体は? よくわかりませんが、恐ろしいものです。というわけで、原作では「ぼぎわん」という名前がきちんと書かれているのに、映画ではその正体が正しく名指されない。名指さ…

いつだってやめられる 闘う名誉教授たち

名誉教授っていうから、てっきりおじいちゃんたちが活躍するのかと思ったけれど、タイトルと内容はなんの関係もなかった。 で、この三部作については、最初の作品が面白過ぎてヒットしたからあわてて残り2作を同時に作ったということらしいので、この第三部…

日本で一番悪い奴ら

警察とヤクザがグルになっている、という実話を基にした警察実録映画。綾野剛の演技が何よりの見どころ。本作には原作本があり、それは悪徳警官本人が書いた告白本というから、内容はかなり事実に忠実なのだろうけれど、映画的には事実を盛ったと思える場面…

或る終焉

あまりにも淡々と静かに流れる、介護の時間。末期患者の介護ばかりを仕事とする介護士のデヴィッドは、過去に何を背負っているのか。セリフはほとんどなく、BGMはまったくなく、カメラは固定の長回し。普通ならすっかり寝入ってしまうような映画なのに、画面…

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

巻頭いきなり、巨大な心臓が画面いっぱいに広がっている。それは手術中の心臓であり、大きく力強く脈打っている。その生々しさが不気味で同時に生命力を感じさせる。このオープニングからして既に不穏だ。 やがて、その手術を終えた外科医はある少年と親しげ…

ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出

こんななんでもない話ですら日本では皇室物は映画にできそうもない。若かりしエリザベス王女が妹のマーガレット王女とともに戦勝祝いに沸くロンドンの町へお忍びで出かけた、というお話。 1945年5月8日、ヨーロッパでは第二次世界大戦が終わった。国民ととも…

おとなの事情

幼馴染の4人男子、今や中年になった彼らにはそれぞれ美しい妻がいる。一人だけはバツイチになっているが、ともかく仲良し3人組+1名はある月食の夜に一組の夫婦宅に集まり、持ち寄ったごちそうやワインに舌鼓を打ちながら楽しく一夜を過ごすはずだった。ひょ…

ボヘミアン・ラプソディ

IMAXで鑑賞。 言うべき言葉が見つからない。映画が終わる前に既に「この映画はもう一度見たい。次もぜひIMAXで絶対に見に来る!」と決意していたぐらいに感動した。これぞ映画である。これぞIMAXで見るべき映画である。これを自宅のテレビモニターで見るので…

彼女がその名を知らない鳥たち

主人公が最悪に嫌な女で、その主人公を愛する男がまた品のない人間で、こんな女のどこがよくて献身しているのかと不思議になる。普通だったらあほらしくてこんな映画、見るのを放棄するようなものなのだが、ヒロインが夢見る元恋人との再会が美しく幻想的な…

人魚の眠る家

脳死状態になった6歳の少女の両親の葛藤を描き、人の死とは何かを考えさせる社会派作品。とはいえ、社会派にしては情緒的な作りなので、娯楽作として多くの観客を得られそうである。映画館では周囲の客がズルズルと鼻をすする音が聞こえ、わたしもハンカチを…