吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2008-01-01から1年間の記事一覧

ワールド・オブ・ライズ

リドリー・スコットも手すさびで「プロヴァンスの贈り物」なんて作ってるより、こういう本格的サスペンスアクションを撮るほうがやっぱり性に合ってるんではないでしょうか。なかなかの作品なのに、わたしの隣席の中年男性は何度もあっちの世界に行ってしま…

トゥヤーの結婚

トゥヤーの結婚とはトゥヤーの再婚のことである。二人の子連れで再婚するトゥヤーが華やかな結婚衣装を纏っている巻頭のシーンでは、彼女の息子が「おまえの家には父ちゃんが二人いる」とからかわれ、花嫁というのにトゥヤーは密かに涙を流す。彼女の結婚は…

長い長い殺人

ストーリーがしっかりしているのと、「財布」がナレーションを担当しているという斬新さに惹かれて、最後まで面白く見ることができた。原作未読なので、財布がしゃべるという発想が映画独自のものなのかどうかわからないけれど、これはなかなか面白かった。…

おくりびと

初めて納棺の儀式を見たのは5年前に義妹が亡くなったときだ。そのとき、湯灌の儀式というものを初めて間近で見た。この映画を見ながら思い出したのは業者の手によって義妹を納棺してもらった、そのときの様子である。確か、「よしなしごと」に冠婚葬祭の市場…

ダークナイト

これは今年最高の娯楽作だ。もはや娯楽作としての域を超えた、複雑なプロットと何重にもひねった正義と不正義の相克が現代社会の矛盾を突く。先頃急死したヒース・レジャーが演じたジョーカーの史上最悪の極悪人ぶりも恐ろしい。 前作「バットマン ビギンズ…

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

大河物語にありがちなたるみや飛躍があるのが気になるが、逆にいえば大河らしいスケールを見せる作品。原作がプロレタリア作家アプトン・シンクレアの「石油」(1927年)だけあって、石油資本の強欲とキリスト教原理主義の狂信を冷めた目で批判する。石油資…

エレファント

これは並のホラーよりよっぽど怖い映画。特にラスト。この恐怖には震撼するしかない。] この映画、まずは画面の狭さに瞠目。窮屈な画面に手持ちカメラの映像が延々と淡々と映し出される。それは妙な風景だ。高校生たちの日常がほとんど退屈なまでに描かれて…

ザ・マジックアワー

これまで見た三谷作品の中ではもっとも面白かった。監督本人が言うように、一番映画らしい映画に仕上がったのではなかろうか。大いに笑わせてもらいました。 映画人なら誰でも一度は作りたくなるのが自己言及的映画らしい。映画内映画を描いたこの作品の一番…

男と女

素晴らしい! 完璧な恋愛映画。これほど完璧に<恋愛>しか描いていない映画がかつてあっただろうか? ほとんどセリフもなく、映像と音楽だけで魅せる、雰囲気そのものが映画でなければ味わえない恋愛映画の傑作だ。これほどの作品を見ていなかったとはかえ…

Π(パイ)

この映画を見ると頭が痛くなる。いえ、比喩じゃなくて、ほんとに痛くてたまらなくて、途中何度も寝てしまった。わたしは頭痛持ちで、最近こそかなりよくなったけれど、十代の頃は我慢できない頭痛に毎日毎日悩まされていた。だから、この映画の主人公である…

ノーカントリー

乾いた映画。始終、西テキサスの乾いた映像が観客を圧倒し、砂漠よりも乾いた殺人者の存在がさらにいっそう観客を恐怖に陥れる。ハビエル・バルデム演じる殺し屋が恐ろしすぎて夢に出てきそう。 時は1980年。場所は西テキサスの広野。ベトナム帰還兵達が手傷…

ザ・プレイヤー

十数年ぶりで再鑑賞。初めて見たときもビデオだったが、今回も自宅でDVD。 初めて見たときは、「映画史に残る長回し」と言われている巻頭8分のワンカットに全然気づかなかった。その当時、わたしは映画の技術的な面にはほとんど関心がなく、カメラアングルに…

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

下品すぎて笑えない! アメリカもカザフスタンも両方をコケにする、タブー破りのコメディ・ドキュメンタリー。 主演俳優はイギリス人だとはちっとも知らなかった。コーエンという名前からしてユダヤ系だけど、ものすごいユダヤ差別ネタには参った。ユダヤも…