脱北もの。最後まで手に汗握るアクション映画なのだが、なぜか実際の上映時間よりも長く感じてしまった。それは、脱北を計画する若き兵士の絶望とスリルにわたしの忍耐力が及ばないからだろう。早く楽にしてやってほしい、早く結末をつけてやってほしい、と思い始めるからだ。つらすぎる、これはつらすぎる。脱北の脱走がこれほどまでにつらいのに、それでもなぜ南へ行きたいのだ? 南に行ったからと言って幸せになれるとは限らない。お腹いっぱい食べられるとも限らない。韓国だって過酷な競争社会だ。
主人公ギュナムは国境の警備に就く兵士。もうすぐ10年の勤めを終えて除隊されるのだが、彼はその除隊の前に南へ逃走することを目論んでいる。おそらく何か月もかけて綿密に練り準備行動したであろう脱走計画を実行する日は近い。普通に考えたら、毎晩夜中に宿舎を抜け出したりしたら絶対に誰かにばれるはずなんだが。案の定、若い兵士に見つかってしまう。そして、その若い兵士は自分も一緒に連れて逃げてくれと懇願する。しかし、見張りに見つかって二人とも逮捕されてしまうのだった……。
ここからが、ギュナムの苦難の道が始まる。いや、たぶんここまでも十分つらかったのだろう。父が死に母が死に、彼は天涯孤独となった身。もはや北の国に未練はないし、腹を空かせる毎日にも十分耐えた。脱走がばれて拷問されている彼の元に保衛部少佐リ・ヒョンサンがやってくる。まだ若いヒョンサンは実はギュナムの幼馴染であった。2人も脱走兵を出したとあっては自分の身が危ないヒョンサンは、ギュナムを脱走を阻止した英雄に祭り上げることにする。果たしてギュナムの脱走は完遂できるのだろうか。
という、スリル溢れる脱走劇。次から次へとギュナムの前には危機が訪れ、そのたびに機転を利かせて逃げおおせるギュナムだが、最後の最後になっていよいよ絶望的な状況へと追い込まれていく。
ひたすら広野を走るギュナムを見ているうちに、わたしはポーランド映画「エッセンシャル・キリング」を思い出した。生き延びるためだけに走り続けるそのひたむきさは、エッセンシャル essenntial な欲望だけが人を生きさせるのだと訴えかけてくるようだ。
なぜ南へ行きたいのか? 最後の方で彼は言う。「南では失敗できる。ここでは失敗は許されない」と。なるほど、失敗できる自由というのがどれほどありがたいのか、わたしたちは普段気づいていない。最後の最後まで気を抜けないアクション映画であるが、北の国をあのように悪しざまに描くことの是非を韓国映画界の人たちはどのように考えているのだろう。「愛の不時着」のような、北の人々へのリスペクトはこの映画からは感じられない。(レンタルDVD)
2024
ESCAPE
韓国 Color 94分
監督:イ・ジョンピル
脚本:クォン・ソンフィ、キム・ウグン
撮影:キム・ソンアン
音楽:タル・パラン
出演:イ・ジェフン、ク・ギョファン、ホン・サビン、ソン・ガン






