吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

リチャード・ジュエル

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 奇をてらうこともなくかっちりと作られている映画なので、その分面白みがない。しかし、冤罪というものがこのようにして作られるというのがよくわかって、恐ろしい。

 物語は、1996年のアトランタ五輪大会期間中に起きた爆弾テロに題材をとる。主人公は警備員だったリチャード・ジュエル、33歳。五輪大会の近くで開かれていたロックコンサート会場には大勢の若者たちが押し寄せていた。その場に置かれた不審物を発見したリチャードは中身が爆発物であることに気づいて警察に通報する。大勢の人々を避難させたおかげで被害は小さく抑えられたが、それでも2名の人が亡くなった。当初リチャードは英雄としてほめそやされたが、ほどなくしてFBIが第一発見者のリチャードを疑うようになる。たちまちマスコミにリークされ、彼は疑惑の人としてセンセーショナルに扱われるようになる……

 物語は事実を元にしているうえに比較的新しい事件について描いており、リチャード本人は死亡しているが遺族が生きてるという事情もあるのだろう、ほとんど盛る部分もなく淡々と進む。

 ところでわたしはアトランタでオリンピックが開かれていたことすら覚えていない。もうすでにこのころからオリンピックにはほぼ興味をなくしていたので、テレビも見ないし、何も知らない。最後に見たオリンピックは1988年ごろのではなかろうか。いやまあ、わたしにとっては東京オリンピック(もちろん64年の)が素晴らしかった。ベラ・チャフラフスカに憧れて、体操選手になりたいと思ったものだ。

 閑話休題。マスコミの過熱報道や根拠のないバッシングには和歌山毒カレー事件を想起させる。あの一連のマスコミ報道のせいで、わたしもすっかり林真須美さんを犯人と思い込んだし。今では冤罪の疑い濃厚と言われていて、再審請求が受理されている。(Amazonプライムビデオ)

 2019
RICHARD JEWELL
アメリカ  Color  131分
監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッドほか
原作:マリー・ブレナー
脚本:ビリー・レイ
撮影:イヴ・ベランジェ
音楽:アルトゥロ・サンドヴァル
出演:ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェルキャシー・ベイツ
ジョン・ハムオリヴィア・ワイルド