吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

大名倒産

https://eiga.k-img.com/images/movie/97778/photo/a85d41773a5f607d/640.jpg?1680827167

 これは面白い! 爆笑しました。

 この手の時代劇コメディは最近増えたと思うのだが、きっかけは「超高速参勤交代」だろうか? そこでちょっと流れを調べてみた。

1986年 ジャズ大名 (これは今回の流れより古すぎるので参考までに)

2010年 武士の家計簿

2014年 超高速!参勤交代

2016年 殿、利息でござる

2016年 超高速!参勤交代 リターンズ

2018年 のみとり侍 (これはエロ映画なので作風が異なる)

2019年 決算!忠臣蔵

2019年  引っ越し大名!

 これ全部面白いから、わたしはコメディ時代劇が好きなんだろう。

 さて今回のコメディは。かなりはじけているので、ドタバタぶりも相当に高い。時代考証無視のセリフの数々も楽しい。神木隆之介の清々しい若殿様ぶりもかっこよくてほれぼれしたわ。

 物語は貴種流離譚の一つで、田舎に暮らす塩鮭づくりの武士一家(というのも妙な)の若者が、実は藩主のご落胤であったというところから始まる。若く美しかった母は既に亡く、老父と若い息子で暮らしていた家に、「お前が次の藩主だ」という知らせが届く。実はその家の若侍小四郎は藩主の四男であった。長男が亡くなり、次男は「うつけ」で、三男は病弱。白羽の矢が立ったのは四男の小四郎で、しかし実は藩の財政は風前の灯であり、実父である隠居した藩主は密かに「大名倒産」という手段に打って出て借金棒引きを図っていた。大名が倒産すれば藩主は切腹を免れない。いきなり若殿となった小四郎が切腹させられる日が刻一刻と近づいてくる。どうする、小四郎?!

 という危機的な話なのにすべてコメディだから大笑い。何かというとすぐに腹を切りたがる家臣を演じた浅野忠信が、とてもいい味を出している。小四郎の父である前藩主は御用商人と結託して悪だくみしているし、悪人と善人がものの見事にわかりやすく、そこに小四郎の幼馴染で気が強くて美しい ”さよ”(杉咲花)が絡んで、賑やかに物語は進む。果たして絶体絶命のピンチを小四郎はどのように切り抜けるのであろうか。

 裏金作りに精出す家老(石橋蓮司、相変わらずのキャラクター)の存在は、今のご時世にぴったりの役柄。自民党本部でこの映画を上映したらええんとちゃうの。やーやーやー、楽しかった。(レンタルDVD)

2023
日本  Color  120分
監督:前田哲
エグゼクティブプロデューサー:吉田繁暁
原作:浅田次郎 『大名倒産』(文藝春秋刊)
脚本:丑尾健太郎、稲葉一広
撮影:板倉陽子
音楽:大友良英
出演:神木隆之介杉咲花松山ケンイチ小日向文世小手伸也宮崎あおいキムラ緑子石橋蓮司浅野忠信佐藤浩市