吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2015-01-01から1年間の記事一覧

国際市場で逢いましょう

知人たちから厳しい映画評を聞いていたので覚悟して見てみたが、なかなかいい作品だった。韓国映画らしいエモーショナルなもので、かつ伝統的な価値観を肯定する作品だ。そこが左翼から評判が悪かったのだが、わたしはそんなことは気にならないどころか、朝…

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

ちょっと話がややこしすぎるのではないか? 年寄りの頭ではついていけないほど裏切ったり裏切られたりの逆転劇が激しすぎる。途中で頭が混乱したのと、実習疲れにより、後半三分の一は爆睡。やむなく翌日もういちど見直してやっと理解できた。 公開順は「007…

007 スペクター

このシリーズ、やっぱり面白いです。前作と前々作が多少だれ気味だったのに比べると、本作はまったく退屈することなくダレることなく、したがって1分たりとて寝落ちすることなく最後まで楽しめた。 巻頭まずは久しぶりに登場した、007シリーズのガンバレ…

ハッピーエンドの選び方

安楽死(尊厳死)の問題をこれほど軽やかに描いた作品はなかなかないだろう。まあ、「みなさん、さようなら」(2003年、ドゥニ・アルカン監督)があったけど。西洋人の発想はやはり東洋人(仏教徒)とは違うということをまざまざと感じた一作だった。この映…

裁かれるは善人のみ

タイトル通りの映画である。 音楽がとてもよい。と思ったらフィリップ・グラスであったか、やはり。 「湾岸部の再開発」を口実に、強欲な市長によって半ば強制的に立ち退きを要求されるコーリャは、自動車修理工場を経営する中年男。若く美しい後妻と、亡妻…

あん

元ハンセン病患者の老女が作る絶品の粒餡。その餡を入れたどら焼きが評判を呼ぶ。小さな店に過ぎなかったどら焼き屋に行列ができるようになるが、あんを作った老婆がハンセン病患者であったことが知られてしまう、、、、 今も残る差別への怒りや悲しみを、河…

アクトレス 女たちの舞台

「『カイエ・デュ・シネマ』誌では、新作が発表されるたびにとりあえず絶賛されるアサイヤス」と、うちの長男Y太郎が言っていたアサイヤスの最新作。確かにフランス映画らしい理屈っぽい作品だ。セリフが長いし、映画人が喜ぶ自己言及ぶりにはフランス映画ら…

デビルズ・ノット

1993年に起きた3少年猟奇殺人事件を描いた作品。主人公である調査員の視点で描かれている。 最初、コリン・ファースが怪しいと思ってしまった。彼は主役ロン・ラックスを演じているのであり、事件の調査員だ。でも登場した瞬間から目つきが悪い。離婚協議の…

マダム・マロリーと魔法のスパイス

まったく予想を裏切らない、予定調和の物語。どんでん返しもなければ意外な展開もないにもかかわらず、見終わった後にとてもよい気持ちのする作品。見てよかったと思える安心できる作品にはほっとする。わたしももう歳なので、奇をてらったような異色作は疲…

最初の人間

カミュつながりで、次はカミュの未完の遺作小説を原作とする映画をご紹介。カミュを思わせる作家が主人公で、彼が生まれ故郷のアルジェに帰ってくる数日を描いている。ほぼ、カミュの自伝と言ってさしつかえないだろう。 地味な作品なんだけれど、いまこの時…

涙するまで、生きる

今年のマイベスト10に入る映画。劇場で見たのはだいぶ前だけれど、今こそこの映画を大勢の人に見てほしい。 フランスはアルジェリア戦争から何も学ばなかったのか? シリアへの空爆を再開するような愚かなことはやめてほしい。平和への願いを込めてこの映画…

ハッピーフライト

瀬々敬久監督の作品だと思い込んで見ていて、「瀬々監督も最近はこんな楽しいコメディを作るようになったのか」と驚いていたら、実は矢口史靖作品だったと見終わってからわかってガクっときたという落ちが付いてます、はい。瀬々監督のは「フライング・ラビ…

ヒトラー暗殺、13分の誤算

実話に基づく物語。 1939年、単独犯がヒトラーの暗殺を企てた、ということは全く知らなかったので、大いに興味をひかれた。しかし、最後までことの真相はよくわからない。 「ヒトラー 最期の12日間」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督にしては、演出の切れ…

50/50 フィフティ・フィフティ

ある日突然、脊髄の神経にできた癌のために5年後の生存率50%を宣告される27歳の青年アダム。彼の戸惑いと恐怖と希望とを、おちゃらけ親友カイルとの交わりを通して暖かく描く。脚本のウィル・ライザーは実際に癌を克服した人物で、彼の親友であるセス・ロー…

君への誓い

新婚間もない夫婦が交通事故に遭い、瀕死の重傷を負うがなんとか生還したものの、妻は記憶の一部が欠落する障害を負う。なんと、夫との出会い以降の記憶がまったく失われてしまっているのだ。しかも、夫と出会う前に婚約解消した元婚約者のことは覚えている…

ダイバージェント NEO

大ヒット三部作の二作目。ふつう、三部作の二作目というのはもっとも脱力感が漂うのだけれど、本作に関してはますます力が入っている。 人類最終戦争後の荒れ果てた世界の中で唯一生き残った人々がなぜかシカゴの廃墟跡に暮らしていて、それなりに大きなビル…

顔のないヒトラーたち

うまい邦題をつけたものだと思う。戦争中のドイツは誰もかれもどいつもこいつもナチだったのだ、という意味で、誰もがヒトラーだった、誰もが戦争犯罪に手を染めていたのだ、と告発する映画である。と同時に、一方的にナチスの犯罪を断罪するだけの作品では…

女神は二度微笑む

ヒロインが美しすぎる。ほとんど彼女の顔ばかり見て、それで満足するような映画だった。 物語は、ロンドンからはるばる行方不明の夫を探してコルカタ(カルカッタ! 教科書で習った地名が今は違う発音になっているのが感慨深い)にやってきた身重の美女が主…

アデライン、100年目の恋

試写にて。 まさにアクトレス・ムービー。女優を見る映画です。主役のブレイク・ライヴリーって日本でいえばさしずめ夏目雅子か。 29歳のときに落雷に遭ったのが原因で老化が止まってしまったアデラインという美しい女性が主人公。2015年の今、彼女は107歳を…

みつばちの大地

マークス・イムホーフ監督の生家は果樹園農家。マークス少年にとって蜂は身近な存在だった。しかしここ10年ほど、蜜蜂の大量死が世界的に問題になっている。この映画は蜜蜂の死の原因を探るとともに、養蜂の実態をえぐるドキュメンタリーである。 もはや蜂の…

ワイルド・スピード SKY MISSION

「ありえねー!」を6回ぐらい叫ぶ映画。このありえなさが面白いんだから、いいのいいの、どうでもいいの。 シリーズ7作目というのに、わたしはこれが初作品なので、基本設定がわからない。わからなくても全然オッケーなところがありがたい。主人公たちはほと…

カルロス

去年、三部作を長男Y太郎と一緒にDVDで鑑賞した。ほんとは1部だけでやめようと思ったのに、おもしろすぎて止まらず、第2部まで一挙に見てしまった。数日間をおいて第3部も見たが、やはり面白いのは第2部までだ。というのも、カルロスたちが世界をまたにか…

K2 初登頂の真実

1954年、エベレストよりも難関といわれた、世界第2位の高さを誇るヒマラヤ山脈「K2」の初登頂に成功したイタリア隊には登頂までにさまざまな駆け引きや嫉妬が渦巻いていたということを描く。とりわけ最後の最後に隊員の命を見殺しにするような事態まで起きて…

ホワイトハウス・ダウン

チャニング・テイタム祭りはまだまだ続く。 この作品は二年前に「マジック・マイク」を見た数日後に劇場で見て大いに楽しんだ作品。今更感想をアップするのもかなり苦しいものがある。ほとんど内容を覚えていない。覚えていなくても面白かったということは間…

親愛なるきみへ

チャニング・テイタム祭り、続いては彼の本領発揮の純愛もの。 まるで絵に描いたような青春恋愛もの。バカバカしいくらいに「純愛」なんだ。こんなのを見て感動しているおばさんはなかなかいないのでは、と自分に感動した作品であった(笑)。 出会ってたち…

マジック・マイク

チャニング・テイタムつながりで、二年前に見た映画をご紹介。もうすぐ続編も公開されるのを記念に。「フォックスキャッチャー」の登場人物のような精彩に欠ける男ではなく、この「マジック・マイク」でチャニングの魅力を堪能しましょう! して、本作は男性…

フォックスキャッチャー

1996年に起きた殺人事件へと至る10年の経過をたどる実話。 アメリカ三大財閥の一つデュポン社の孤独な御曹司は財力にものを言わせて自分のレスリングチームを作った。そのチームからオリンピック選手を出して、金メダルを取らせたい。もはや五十代になった御…

アンフィニッシュ・ライフ

どこにも奇をてらったところがない、かっちりと作られた落ち着いた作品。それだけに映画的カタルシスに欠けるうらみはあるが、しみじみと後から沁みてくる感動がある。大人向けの作品といえよう。 ワイオミング州の豊かな大地の緑が美しい。ロバート・レッド…

ロンドン・リバー

イギリスのとある島で農業に勤しむ主婦エリザベスには一人娘がいて、今はロンドンに住んでいる。エリザベスはテレビニュースでロンドンでの連続テロを知る。その日から娘と連絡がとれなくなり、もしやと心配になってエリザベスはロンドンの娘の住所に向かう…

最高の人生のはじめ方

劇場未公開の地味な映画。 ほとんど起伏がなく、何も驚くべきことも起きない。淡々と過ぎていくだけのストーリーなのにとても気持ちよくつかまれていくのは、モーガン・フリーマンが落ち着いた低音を響かせながら当意即妙のセリフを発していくから。その厚み…