吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2016-01-01から1年間の記事一覧

弁護人

ここ数年来見た韓国映画で最も素晴らしかった。後に大統領になったノ・ムヒョン(盧武鉉)の弁護士時代を描いた物語。どこまでが実話なのかよくわからないが、盧武鉉が最初から人権派弁護士ではなかったことは確かだろう。彼が劇的に変わっていく様子が迫真…

湯を沸かすほどの熱い愛

湯を沸かすほどの愛っていうのは、銭湯が舞台になっているから。主人公は宮沢りえが演じる銭湯の女将さん。夫が一年前に突然蒸発し、そのまま銭湯は休業状態にあって、しかも娘は高校で虐められていて、その上自分は突然医者に余命2か月を宣告される。もうこ…

偉大なるマルグリット

巻頭、美しいソプラノやメゾソプラノや二重唱の天使の歌声が聞こえてきてうっとりしていたら、突然マルグリットおばさんの超絶音痴な歌声が響いて目が覚める。 いやもう、これは天才的な音痴です。どうやってこんな風に音が外せるのか知りたいわ(笑)。 192…

シークレット・オブ・モンスター 

サルトルの短編小説にヒントを得たということだが、小難しい理屈などなくて、ひたすらうるさくて恐ろしい音楽が鳴り響き不安を掻き立てる作品。原題「指導者の少年時代」っていったって、その指導者がなんで独裁者になったのか、この映画を見ても皆目わから…

ブルーに生まれついて

わたしはJAZZが好きだけれど、まったく詳しくない。いつも聞き流している。それが気持ちがいいから。だから、曲名も演奏者の名前もよく知らない。当然のようにチェット・ベイカーのことは知らなかった。だから、事前情報なしで新鮮な気持ちで見られたこ…

手紙は憶えている

ナチスの戦犯を追及できるのももうわずかな時間しか残されていない、まさにそのタイミングで作られた映画。ホロコーストの被害者が、家族を殺したアウシュヴィッツ収容所の兵士に復讐するという物語は、数年後には成立しないだろう。だから、今しか作れない…

この世界の片隅に

「君の名は。」よりもいい、という大人が大勢いる作品なので遅ればせながら見に行ったところ、やはり劇場は混んでいた。 戦時下の広島と呉の日常生活を、19歳のすずという女性(というより少女)を通して描いた作品。現在の呉市には大和ミュージアムがあり、…

ザ・ギフト 

この作品、映画としては出来がいいと思う。しかし、点数をつけるのもいやになるぐらい陰鬱な作品だ。そして、怖い。この映画を観ている最中に、「なんでこの映画を観ようと思ったんだろう。もう帰りたい」と思うほど、怖かった。 あらすじはこうだ。若者から…

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期

シリーズ第1作から15年が経っているけれど、映画の中では10年しか過ぎていないことになっている。しかし実際のところ、15年経ってるわけだから、マーク・ダーシー(コリン・ファース)の老け方が半端ない。でもスーツが似合って素敵。レニー・ゼルウィガーも…

淵に立つ

描かれているのは復讐なのか、贖罪なのか。 ある日突然、町工場の入り口に中年男が姿を現した。工場のオーナーの古い友人のようだ。礼儀正しい彼は刑務所を出所したばかり、ということは間もなく観客にも知らされる。町工場の住み込み行員になった男は、じわ…

イレブン・ミニッツ

午後5時の鐘が鳴り響く大都会、11分後にはある惨劇が起きるのだが、そこに至るまでの11分を群像劇で織り上げていく、斬新な作品。 だれが主人公なのかは最後にわかるのだが、次々といろんな人々が登場するため、いったい何がどうなっているのやらわかりにく…

でんげい

「でんげい」とは、伝統芸術部の略称。大阪にある在日コリアンのための民族学校「建国学校」に作られた、文化クラブの一つだ。学校法人白頭学院建国幼・小・中・高等学校は、1946年創立の民族学校で2016年には創立70周年を迎える。在日韓国・朝鮮人の子弟に…

エンド・オブ・ホワイトハウス

意外に面白かったので、高得点。 同じような”ダイハード・ホワイトハウス版”の映画がチャニング・テイタム主演で同時期に上映されていて、どっちも面白いから、やっぱりこの手のネタは何度繰り返しても面白いのだろう。むしろ、結末がわかっていて安心してみ…

The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛

2013年に見た映画だけれど、アウンサンスーチー氏来日を記念して感想をアップ。 この作品、リュック・ベッソンが監督するのだから(実はわたしはアン・リーが監督だと勘違いしていた)、あまり期待していなかったのだが、どうしてどうして、なかなか面白かっ…

キューポラのある街

これぞ労働映画。 埼玉県川口市の鋳物工場街を舞台にした、貧しくとも懸命に生きる人々の様子を活写した作品。 巻頭、鋳物工場での作業風景が写る。今はこんなふうに鋳物を作ることはないのではないか。どろどろに溶けた鉄を運ぶ様子には、労働災害が多発す…

殿、利息でござる

これが、新しいテレビで初めて見たブルーレイディスク。あまりにもくっきりと画面が鮮明なので、背景が書き割りのように見えてしまう。人物と合成しているように見えるのはなぜなのだろう。こうなると、昔のフィルム映像が懐かしい。あの、なんとなく曖昧で…

世界一キライなあなたに

ヒロインが超センスの悪い服を着ている上に体型がぽっちゃりしているという、田舎娘丸出しの恰好で登場し、さらには豊かすぎる表情で眉毛を自在に動かすのも気色悪く、「うわー、この映画は失敗だったか」と思っていたのだが、なかなかどうして、この彼女が…

あゝ野麦峠

日本の労働映画百選に選ばれた。 飛騨の農村から信州岡谷の製糸工場に出稼ぎに行く12、3歳の少女たち。酷寒の野麦峠を決死の覚悟で越えていくのだが、何もわざわざそんな厳しい季節に雪山を渡らなくてもよさそうなのに、と思ってしまうが、夏は農繁期だから…

X-MEN: アポカリプス

アクションシーンが単調なので飽きてしまって途中少し爆睡。 プロフェッサーが髪の毛ふさふさ状態から一気にスキンヘッドになってしまう原因や経過が見られたのがなによりも驚愕かつ感動的だった。 マイケル・ファスベンダー目当てで見に行った本作で決定的…

X-MEN: DAYS OF FUTURE PAST

前作の続編だが、えらく雰囲気が暗くなった。三部作の真ん中の宿命か、前作が持っていた新鮮な感動がなく、次回作に続く中途半端さが否めず、いまいちの印象を残した。監督がブライアン・シンガーというのも影響ありか。 たぶん、今作が過去と現在を往還する…

X-MEN:ファースト・ジェネレーション

エックスメンシリーズの冒頭に戻るお話で、いかにしてエックスメンという集団が生まれたのかを描くのが本作。 宿敵同士のプロフェッサーXとマグニートーが若いころは親友だったとか、彼らの生まれ育ちの違いが思想と理想の分裂を生むことが描かれて非常に興…

ウルヴァリン:X-MEN ZERO

Xメンの前日譚。いかにしてXメン=ウルヴァリンが誕生したのかがわかる。一回目は寝落ちしたので、再度DVDを見直してみて、なかなか面白いということに気付いた。シリーズ本編よりも面白いのではないか。無常感が漂う、かなり大人のテイストになっているから…

X-MEN:ファイナル ディシジョン

やはりこのシリーズは面白い。シリーズ第3作は、これだけ見ても十分面白い。てか、前2作をほぼ忘れているので、わたしとしてはこれだけで単作扱い(汗)。 しかし、登場人物(ミュータント)が多すぎて名前と顔が一致しない! 最後まで誰が誰だかよくわから…

さよなら歌舞伎町

細かく何回にも分けて観たから、ストーリーがいまいちよくわからなくなってしまったが、なかなかに面白い群像劇。 新宿・歌舞伎町のラブホテルが舞台だけあって、身体を張った女優の演技が続出するのだが、わけありの人々ばかりが登場するホテルの24時間は結…

二ツ星の料理人

次々と画面に出てくる料理がとにかくおいしそうでたまりません。画面にアップにされる料理の数々にはため息。わたし自身は一生食べることはないだろうけれど、見ているだけで幸せになれる。と同時に、こんな料理を食べ続けることができる人たちってどういう…

トリコロール 赤の愛

かつて、青・白・赤の順に(つまり正順)見た三部作、お気に入り度もこの順だった。今回は久しぶりに見ることになり、逆から見てみようという気になった。しかし、ラストシーンを見て、この映画はやはり青と白を見ていないと面白さがわからないんだと判明し…

ジェイソン・ボーン

公開されるたびに見に行っているのだから、今回も当然劇場へ。「君の名は。」ほどではないが、かなり入りがいい。で、これまでもたいていこのシリーズは爆睡していたのだが、今回もやっぱり。それもこれもポール・グリーングラスのいつものあの撮り方のせい…

ハドソン川の奇跡

これぞプロフェッショナル。クリント・イーストウッドがプロの仕事をプロらしく撮った、一切の無駄がない見事な映画。見終わった後の清々しさは格別で、生きる勇気を与えられるような作品だった。 2009年1月にハドソン川に不時着した飛行機(USエアウェイズ1…

君の名は。

2週間以上前に見たので、やや印象が薄くなったが。。。。 ラストシーンで背筋が粟立った。この感覚を体感したくてリピーターが多いのかな、このアニメは。新海作品のこれまでのテイストとかなり違って、明らかにヒットを狙っている作品であり、その狙いが見…

怒り

傑作「悪人」の続編、あるいは別バージョンともいえるような作品。製作メンバーも同じなら、主演のひとりも同じ妻夫木聡。ただし、残念ながら前作を上回ることはなかった。それだけ「悪人」が良くできていたとも言える。 巻頭いきなり凄惨な殺人現場が映る。…