2018-01-01から1年間の記事一覧
マウントバッテン卿の名前だけは聞いたことがあるが、最後のインド総督だったとは知らなかった。しかもロマノフ王朝の親戚でかつヴィクトリア女王の孫だったのか。しかし画面に登場した瞬間からダウントンアビーの伯爵にしか見えないところがつらい。グラン…
映画製作のバックヤードものは映画人が大好きなジャンル。そして映画ファンも。当然、わたしも。しかもこの映画は戦時中のイギリスを舞台に、軍部の圧力のもとに製作された戦意発揚映画の裏話で主人公が女性脚本家とくれば、それだけで見たくなる作品だ。 戦…
人工呼吸器をつけたまま25年以上存命した男とその妻の献身を描く実話。これが実話というのがやはり感動の原点で、しかも本作のプロデューサーの両親の物語だというから驚きである。 1958年、イギリス上流階級の青年が社交界の花と結婚し、新妻が懐妊して喜ん…
「ゴジラ」シリーズ初の長編アニメーション三部作。2018年中に全部が劇場公開されたけれど、わたしは2作をDVDで鑑賞しただけなので、結局結末を見ていない! あ〜、イライラするわー、こうなったら早く第三章を見たいです! で、物語は。 地球はなぜか突然ゴ…
労働映画百選にも選ばれた、正統派労働映画。後継者不足に悩む林業の現場が舞台になっていて、普段見ることのない林業労働の実態の断片がわかる。 既に産業として存在し得ないほど衰退している林業に若者を呼ぶことはできるのか?! 本作は三重県でオールロ…
戦後70年経ってもホロコーストの生存者たちは戦争を忘れない。あの災禍を忘れない。だから、ポーランドに生まれ、家族を皆殺しにされた少年アブラハムは1945年にアルゼンチンに渡ったあとは、「ポーランド」という言葉をタブーとした。 今や年老いて足…
「来る」って、何が? いやもう、それは物の怪に決まっているでしょう。で、その正体は? よくわかりませんが、恐ろしいものです。というわけで、原作では「ぼぎわん」という名前がきちんと書かれているのに、映画ではその正体が正しく名指されない。名指さ…
名誉教授っていうから、てっきりおじいちゃんたちが活躍するのかと思ったけれど、タイトルと内容はなんの関係もなかった。 で、この三部作については、最初の作品が面白過ぎてヒットしたからあわてて残り2作を同時に作ったということらしいので、この第三部…
警察とヤクザがグルになっている、という実話を基にした警察実録映画。綾野剛の演技が何よりの見どころ。本作には原作本があり、それは悪徳警官本人が書いた告白本というから、内容はかなり事実に忠実なのだろうけれど、映画的には事実を盛ったと思える場面…
あまりにも淡々と静かに流れる、介護の時間。末期患者の介護ばかりを仕事とする介護士のデヴィッドは、過去に何を背負っているのか。セリフはほとんどなく、BGMはまったくなく、カメラは固定の長回し。普通ならすっかり寝入ってしまうような映画なのに、画面…
巻頭いきなり、巨大な心臓が画面いっぱいに広がっている。それは手術中の心臓であり、大きく力強く脈打っている。その生々しさが不気味で同時に生命力を感じさせる。このオープニングからして既に不穏だ。 やがて、その手術を終えた外科医はある少年と親しげ…
こんななんでもない話ですら日本では皇室物は映画にできそうもない。若かりしエリザベス王女が妹のマーガレット王女とともに戦勝祝いに沸くロンドンの町へお忍びで出かけた、というお話。 1945年5月8日、ヨーロッパでは第二次世界大戦が終わった。国民ととも…
幼馴染の4人男子、今や中年になった彼らにはそれぞれ美しい妻がいる。一人だけはバツイチになっているが、ともかく仲良し3人組+1名はある月食の夜に一組の夫婦宅に集まり、持ち寄ったごちそうやワインに舌鼓を打ちながら楽しく一夜を過ごすはずだった。ひょ…
IMAXで鑑賞。 言うべき言葉が見つからない。映画が終わる前に既に「この映画はもう一度見たい。次もぜひIMAXで絶対に見に来る!」と決意していたぐらいに感動した。これぞ映画である。これぞIMAXで見るべき映画である。これを自宅のテレビモニターで見るので…
主人公が最悪に嫌な女で、その主人公を愛する男がまた品のない人間で、こんな女のどこがよくて献身しているのかと不思議になる。普通だったらあほらしくてこんな映画、見るのを放棄するようなものなのだが、ヒロインが夢見る元恋人との再会が美しく幻想的な…
脳死状態になった6歳の少女の両親の葛藤を描き、人の死とは何かを考えさせる社会派作品。とはいえ、社会派にしては情緒的な作りなので、娯楽作として多くの観客を得られそうである。映画館では周囲の客がズルズルと鼻をすする音が聞こえ、わたしもハンカチを…
「これは夢オチに違いない、夢オチ、夢オチ、いつ発覚するんだ、夢オチ」と呪文を唱えながら見ていた作品。結局最後まで「はああああ?」という感じで終わってしまいましたとさ。デヴィッド・リンチ「マルホランド・ドライブ」みたいなヒチコック「めまい」…
当館エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)に恵投いただいた図書の書評会が開かれるので、お知らせします。以下、主催者からの案内文を転記します。 【社会運動史を学びほぐす―小杉亮子『東大闘争の語り―社会運動の予示と戦略』を読む】今年5月に刊行さ…
登場人物の心理はまったく理解できなかったが、大変面白く最後まで見ることができた。劇場未公開なのが残念だが、華となるような役者が出てこないのだからしょうがないか。いや、63歳のデブラ・ウィンガーの美貌がまだまだある程度は保たれているところを見…
主人公は、ほとんど視力を失ったカメラマンと、映画の音声ガイドを吹き込む若い女性。彼らは映画に音声ガイドをつける作業を通して知り合う。かつては天才カメラマンとして名前を知られた中森雅哉は、徐々に視力を失いつつあり、弱視となった今もカメラを離…
声を出してはいけないという映画内のお約束のために、ずいぶん静かな映画なのだが、どっこい劇伴の音楽がものすごく怖くて、全然クワイエットじゃない! しかしまあ、あまりの緊張に見ているほうも息を詰めてしまうような映画だった。この映画が90分以内に収…
あまりにも素朴なその絵は幼稚園児が描くような花や人物だ。しかしその温かい色使いは人々の心を癒し、優しい気持ちにさせるものがある。それだけではなく、ハッとするような斬新な色遣いとユーモアにあふれた描写に、思わず「この絵がほしい」と思わせる力…
前作はものすごく面白かったというのに、内容はきれいさっぱり忘れている。覚えていることは、デンゼルが強烈にかっこよい必殺仕事人で、クロエ・グレース・モリッツがまだ十代なのに既に中年体形になって貫禄ある二の腕を見せていたことぐらい。なので、前…
一つ空けて隣の席の若いおにいさんは巻頭のゾンビ映画の最中からずっと笑っていた。なんで笑うのかちょっとわからなかったわたし(マジこのゾンビ映画を怖いと思っていた)だが、後半第2部でわたしも思わず声を出して笑ってしまったので、きっとこのおにいさ…
午前十時の映画祭にて8月に鑑賞。 この映画を観るのは10回目ぐらいかもしれない。ビデオも買ったしサントラも持っている。ビデオ発売された時のCMの惹句は「これでケビンはわたしのもの…」と色っぽい声で女性がささやいていた。全日本のおばちゃんを狂喜さ…
「レオン」のサイコファンタジー版とも呼ぶべき不思議な映画。もう四か月以上も前に見たからすっかり詳細は忘れたけれど、雰囲気だけは強烈に印象に残っている。 主人公ジョーは元軍人で、彼は戦場のトラウマと少年のころの家庭内暴力の記憶にさいなまれる日…
時は17世紀、オランダはチューリップ・バブルに沸いていた。世界初のバブル景気として有名なチューリップの先物買いの高騰ぶりは過熱の上にも過熱し、球根1個が邸宅2軒分の値段で取引されたという。その時代はまた絵画もバブル状態で、裕福な多くのオランダ…
ファム・ファタールもの。「薄氷の殺人」とはうまく題名をつけたもので、舞台は雪が積もる中国の地方都市、季節は冬。主人公たちは野外スケート場でたどたどしい足取りで滑走している。殺人はそのスケート靴にからんで起きる。 巻頭、ほとんどセリフがなくし…
1967年、全米最大の黒人暴動が起きた都市デトロイトを舞台にした、悪夢の一晩を描いた実録もの。主役はジョン・ボイエガが演じる警備員のはずだが、全然活躍の場がない。最後まで異彩を放っていたのは若き悪徳警官の人種差別者を演じたウィル・ポールターで…
全編山場! 山場しかない。次から次へと山場! 観客が疲れ果ててごめんなさいもう許してというまで山場が襲ってくるという恐るべき映画。しかもほとんどのアクションスタントをトム・クルーズ自身が演じているというプロ根性にも脱帽。なんでそんなべらぼう…