2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧
巻頭、「1953年7月」という字幕が映る。え? それって朝鮮戦争停戦時やんか! そう、この映画は停戦直前の最前線で偶然出会った南北朝鮮の兵士の物語。 1953年3月5日にスターリンが急死し、朝鮮戦争が終わると見込んだ投資家たちが株を売ったために一気に日…
1900年12月に実際に起きた、灯台守3人失踪事件を元に大胆な推理を働かせて作られた物語。登場人物は限られており、舞台は島の一部だけ、寒風吹きすさぶ北海の荒波、という閉塞感極まる映画に心も凍える。非常によくできた心理サスペンスでもあり、期待せずに…
警官に連行され、うなだれている美少年。彼は「ある死体に衝撃を受けた」とカメラに向かって独白する。そして、「これから死体が生きていたときの物語を語る」と言う。暗い幕開けの映画なのに、なぜか突然明るくテンポのよい音楽(The Cureの85年のヒット曲…
イギリス版「舟を編む」(石井裕也監督、2013)。しかし趣は相当に異なる。かのオックスフォード大辞典の編纂過程を追ったものだが、この映画に描かれた事実をわたしはまったく知らなかった。すべてが驚異である。わたしが持っているのはオックスフォード英…
原題の「NEVER, RARELY, SOMETIMES, ALWAYS」は質問への四択回答を示す。「まったくない、めったにない、時々ある、いつもある」。その四択を選ぶように促す質問は、17歳の少女が直面するには厳しすぎる現実を表出して余りある。 17歳の従妹同士がペンシルベ…
献身は支配の裏返しか。目の見えない美しい妻を支えてきた夫は、妻の目が見えるようになったことを喜べないようになっていく…。 舞台をタイにしたのはなぜなのだろう、と思うのだが、アメリカ映画なのに物語をアジアに設定したために、映像がエキゾチックな…
ローランド・エメリッヒ監督の作品だから、どうせ大がかりなCGとVFXが売りなだけでスカスカな話だろうと思って見ていた。やっぱりその通りだけれど、でも米日両方に目配りが利いた作品なので、そこは感心した。ミッドウェイ戦は真珠湾攻撃への復讐、という基…
劇場公開された当時にわたしは映画館で本作を見たのだが、その時は列車のシーン以外はさほど感動することがなかった。それから40年以上を経て、今見たらどう思うだろうという好奇心に駆られて再見してみた。さらに原作小説も読んだ。これは原作と映画とどち…
昨年7月に見た映画なので、詳細は例のごとくほぼ全部忘れている。 聖職者が少年たちに長年性的虐待を行っていたことを告発する作品。これまでのフランソワ・オゾンの作風とまったく異なるため、従来のファンは面食らうかもしれない。それほど生真面目に撮ら…
「軍中楽園」という名の従軍慰安所に配備された新米兵士のほろ苦く切ない恋物語。 1969年の台湾がいかに中国本土と緊張関係にあったかがわかる作品でもある。中国と台湾の国境に位置する金門島に配備された台湾軍兵士ルオは、泳げないことが発覚して別部隊へ…
世の中に変人は数あれど、本作の主人公はその変人その1の一人である。変人大好きなわたしとしては見ずにはおられない物語。そして実に不思議なお話であった。 南仏の田舎に住むシュヴァルが30年以上をかけて一人こつこつと石を積み上げて作ったけったいな形…