吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2006-01-01から1年間の記事一覧

2006年のマイベスト10:映画篇

今年見た映画の本数は167本。そのうち映画館での鑑賞本数は62本。今年はここ数年の中ではもっとも映画鑑賞本数が少ない。自宅で見るDVDの数が減っているからだ。テレビ1台に人間は4人。どうしてもモニタの取り合いになるから、わたしは負けてなかなか家で映…

フラガール

1960年、合理化が進む常磐炭鉱で、起死回生をかけて建設された「ハワイアンセンター」。北国を常夏の楽園にとの触れ込みでオープンしたこの娯楽施設でフラダンサーのチームが結成された。炭鉱労働者の娘たちの汗と涙の奮闘を描く、実話をもとにした物語。 炭…

カポーティ

実はこの映画の後につづけてソクーロフ監督の「太陽」を見てしまったばっかりに、本作の印象が薄くなってしまった。それほど「太陽」が強烈だったのだが、この「カポーティ」も悪くはない。できるだけ頭のなかで「太陽」と比較しないように心がけるつもりだ…

かもめ食堂

アキ・カウリスマキ監督の「過去のない男」に主演していたマルック・ペルトラが登場した瞬間に、「あ、どこかで見たことあるなぁ、あ、あの男やんか!」と懐かしく思ったが、その男の名前がなんだったのか思い出せない。当然だ、「過去のない男」には主人公…

ウォーク・ザ・ライン 君につづく道

最近、歌手の伝記映画が続いている。「Ray」と「ビヨンド the シー」はいずれもよい出来だった。今度はカントリー歌手ジョニー・キャッシュと二番目の妻ジューン・カーターの物語。 わたしはジョニー・キャッシュにはほとんど馴染みがなく、それよりも画面…

戦場のアリア

1914年、第一次世界大戦が始まって4ヶ月を過ぎたフランス北部の前線で、仏・独・スコットランド軍が塹壕戦を繰り広げていた。苛烈な戦いの日々に倦んだ兵士たちにクリスマスがやってきた。これは、期せずして実現したクリスマス休戦の実話に基づいた美しい物…

さよなら、さよならハリウッド

ウッディ・アレンもすっかりお爺さんであります。そんな爺さんと美女のティア・レオーニじゃ似合わんやろう~と不審の目を向けつつ、相変らずしゃべくりまくるアレンにくすくすと笑いながら、最後まで結局退屈せずに楽しんでしまったのであります。 さて物語…

クラッシュ

クラッシュ CRASH、衝突。それは自動車の衝突であり、人と人の衝突であり、異なるエスニシティ同士の衝突である。衝突を避けたいなら、触れ合わないことだ。だが、それではあまりにも寂しいというもの。そして結局のところ、衝突は避けられない。 さすがは「…

アメリカ、家族のいる風景

ラストシーン間近になって思い出したのは今から10年ほど前、まだうちの息子たちが保育所に通っていたときのことだ。運動会かなにかの行事のとき、ランニングパンツ姿で筋肉隆々の足をむき出して園庭に立っていた夫のそばに男の子が近づいて、夫の足をなでな…

ミュンヘン

1972年9月、ミュンヘンオリンピックの選手村で起こった惨劇のことはよく覚えている。新聞の1面に黒抜きでデカデカと見出しが載り、テレビは大きく事件を報道していた。当時中学2年生のわたしにはパレスチナでの争いがどういうものなのかよくわからなかったが…

やさしくキスをして

イスラム教徒とカトリック教徒の恋は成就するのか? 教会や職場や家族の圧力に愛は勝てるのか? 社会派の名匠ケン・ローチ監督が作るラブストーリーは生半可じゃない。「やさしくキスをして」という甘いタイトルに背く重い恋愛映画だった 舞台はスコットラン…

ある子供

18歳と20歳の若いカップルの生きる困難を淡々と綴ったドキュメンタリータッチの作品。子供をいとも簡単に売り飛ばす若い父親に未来はあるのだろうか……? ダルデンヌ兄弟の作品を見るのはこれが2本目。「息子のまなざし」(2002年)は力作には違いないのだが…