吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2020-01-01から1年間の記事一覧

娼婦ベロニカ

映画館が閉まっている今、ストレスを溜めているみなさんはおうちで映画を見ましょう。というわけで、しばらくは家で見られる映画特集を。 まずはイタリアを舞台にしたアメリカ映画のご紹介。イタリア語じゃなくて英語でしゃべってます。Amazonプライムビデオ…

ブログのタイトルを変更しました

年度も替わりまして、わたしの4月4日の誕生日も過ぎました。長らく「吟遊旅人ピピのシネマな日々」というタイトルでブログを掲載していましたが、この度、「吟遊旅人のシネマな日々」にタイトルを変更しました。 「ピピ」という名称は学生時代のニックネーム…

山中静夫氏の尊厳死

余命を宣告された60代の主人公山中静夫が、最後にどうしても生まれ故郷でやりとげたいことがある、と自宅から遠く離れた実家がある町の病院に転院する。そして、山中を診ることとなった医師・今井との二人三脚の数ヶ月が始まる。 余命宣告されたがん患者は…

嘘八百

役者が芸達者なので感心する。 なんと、まさかの続編公開だそうな。「まさかの」って製作者がいうんだから、まさかなんだろう。で、そのまさかの続編が出るっていうから「まさか」の前の本編を見たくなるのは人情。で、そのタイミングに合わせてAmazonプライ…

パラサイト 半地下の家族

手に汗握るコメディ・サスペンス。笑っているうちにいつしか物語は恐怖のるつぼへ! 最後は切ない幕切れ。 もう何を書いてもネタバレになりそうなこの映画、ポン・ジュノ監督の「ネタバレ厳禁」なんて言うことを聴いていたら一言も何も書けなくなる。 一回目…

Red

人妻の不倫もの、という昼メロなんだけれど、これが何とも言えない緊迫感のある作品に仕上がっている。 まず冒頭、雪の夜道に浮かび上がる公衆電話ボックス。中から出てきた若い女は暗い表情でふらふらと歩き、自動車に乗り込む。運転するのはイケメン男性の…

野性の呼び声

ジャック・ロンドンの有名な原作は彼が24歳ぐらいのときに書かれた小説だったのだ。今更知って驚いている。子どもの頃、ジャック・ロンドンは「白い牙」とか興奮しながら読んだ覚えがある。 その小説世界を見事に映画にしてしまった、というわけ。まあ、今ど…

エジソンズ・ゲーム

エジソンの名前は小学生でも知っているが、テスラはそうではない。恥ずかしながらわたしもその名を知ったのは、2007年に映画「プレステージ」を見た時だった。アメリカでは有名なテスラも日本ではさほど知られていないというのが難点だが、”直流のエジソン”…

ジュディ 虹の彼方に

「エディット・ピアフ 愛の賛歌」を見たときと同じ種類の感動を味わった。タイトルロールの被伝者への敬意と憐憫、そして演じた女優の努力と才能への驚嘆。 ”芸能界で消費されていく幼い才能”という悲劇がジュディの生涯を覆った。その最期の輝きが見られた…

パリ、嘘つきな恋

監督・脚本・主演と3役をこなしたフランク・デュボスクが出ずっぱりで頑張っている。軽佻浮薄な49歳のプレイボーイが本気の恋に落ちる、というわりとありきたりな物語なのだが、シチュエーションがとにかくおしゃれ。さすがはフランス映画だ。 たまたま亡母…

92歳のパリジェンヌ

92歳の誕生日を子どもや孫に囲まれて迎えたマドレーヌは、家族の前で「二か月後に死ぬ」と宣言する。もはや自分でできないことが増え、もう生きている気力がなくなった、というのがその理由だ。しかし家族はまったく納得せず、大反対。そりゃそうだわな、92…

エルネスト

チェ・ゲバラの最期の闘いに同行して死んだ日系人の遺族の手記を元に映画化された。ゲバラ没後50年の企画である。 映画は1959年の日本から始まる。来日していたゲバラはいつでもどこでもあの軍服姿で、予定になかった広島行きを組み、原爆慰霊碑の前に立つ。…

私の知らないわたしの素顔

SNSの世界で他人になりすまし、疑似恋愛の深みにはまっていく中年女性を描いたスリリングな物語。 映画の巻頭まもなく、都会の夜景を見下ろす高層マンションの天井高の窓にはりつくセックスシーンにぎょっとしていると、次のシーンではこの裸の女性が50代の…

さらば愛しきアウトロー

ロバート・レッドフォードの引退作だからこんなタイトルにしたのかもしれないが、原題のまま「老人と銃」にしてほしかったね。 レッドフォードのあまりの老け方に涙が出そうだったが、映画の最後に彼の超絶ハンサムな若かりし頃の写真が一瞬映し出された瞬間…

赤い風車

ロートレックの伝記映画。芸術家の伝記映画は大好きなジャンルの一つ。 この映画を観るまでロートレックの伝記的事実はほとんど知らなかった。もともとロートレックにはそれほど惹かれないので、あまり関心がなかったのだ。だから彼が伯爵家の御曹司であり、…

 ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密

実は意外とコメディだったことに気づいたラストシーン。ここで一気に点数が上がりましたよ! まあ、そこまではどうなることやらと心配した凡庸に思える謎解き。我らが007、もとい、私立探偵も大した仕事をしていない。むしろ何もわからないふうに見える。わ…

ロマンスドール

見終わった瞬間にものすごく感動したので、思わず「今年ナンバーワン邦画」と叫びそうになったのだけれど、どうしても「ラブドール」という存在に違和感がぬぐえなかった。自分の最愛の人をかたどったラブドールが大勢の見も知らぬ男たちの性的欲望の対象と…

プロジェクト・グーテンベルク 贋札王

偽札づくりの犯罪アクション。途中、偽札づくりの工程を説明する部分が少々退屈で寝てしまったが、後半はあれよあれよという怒涛のアクションシーンが爆砕するため、どんどん目が覚めていく。いやー、すごかったですね。 贋札づくりに欠かせない紙として「無…

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦

わたしはラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件「エンスラポイド作戦」についてはほぼ知らなかったので、すべてが新鮮な思いで見ていた。チェコは無血状態で簡単にドイツ軍に占領されたあと、冷酷無慈悲なハイドリヒによって支配されていた。 映画は冒頭で、イ…

ジョン・ウィック:チャプター2

今回は図書館映画でもある。しかし図書館を舞台の一つに選びながら、そこで示される資料はアーカイブズ(文書資料)だ。ということは実は文書館なのか? よくわかりません。 それはともかく、前作と同じく「ささいな動機」で次々と復讐していく我らがジョン…

エルヴィスとニクソン ~写真に隠された真実~

ニクソン大統領って映画にしやすい題材なのだろうか。これまでも何本も映画やテレビドラマが作られている。で、今回のこの映画、劇場未公開? そうでしょそうでしょ。 ロックの帝王エルヴィス・プレスリーが1970年にニクソン大統領に面会を求めて直接ホワイ…

ジョン・ウィック

愛する妻を病気で亡くした元殺し屋のジョン・ウィック。ヤクザな世界から引退したつもりだったけど、どういう偶然か、彼の愛犬を殺し愛車を強奪したバカな若者がいた。これがまたロシアン・マフィアの親分の息子だったというのも何かの因縁か。でもね、いく…

ダウントン・アビー

「ダウントン・アビー」、わたしはテレビ放送が終わってからDVDで一気見したわけだが、あの後の展開がもちろん気になっていた。第二次世界大戦に向かうつかの間の戦間期、グランサム伯爵たちはどう生きていくのか、ダウントン・アビーは売却されるのだろうか…

マザーレス・ブルックリン

今年初映画館。なんでこんな地味な作品を選んでしまったのだろう。観客はほとんどいないではないか! スター俳優ぞろいなのに派手な場面がほとんどない作品で、エドワード・ノートンの演技を見るための映画だった。 本作の魅力の一つは音楽。ブルックリンの…

最高の人生のつくり方

軽妙なセリフの応酬が素晴らしく小気味いいなぁと感心。脚本がよいね、この作品は。シニア世代に夢と希望を与える楽しいロマンス。 マイケル・ダグラス演じるオーレンは不動産営業マンとしては抜群の腕かもしれないが、嫌みな男である。そろそろ引退を考えて…

2019年の映画振り返り

劇場で見たのは84本。そのうち、「ボヘミアンラプソディー」は3回見た。これ、2018年のマイベスト1で、そのままの勢いで年が明けてからも3回見に行ってしまった、というもの。 DVD、Blu-ray、ネット配信で見たのは137本。こんなに多くなった理由はAmazonプ…