マザーレス・ブルックリン
本作の魅力の一つは音楽。ブルックリンの黒人街のクラブでかかるジャズが素晴らしくて、いつまでも聴いていたくなった。物語の舞台は都市化が進む1957年のニューヨーク。いわゆる「ジェントリフィケーション」が問題となり、住民の反対運動が組織されていく。そこに主人公が勤める探偵事務所の社長殺害事件がからみ、社長を恩人と仰ぐ主人公が事件の謎を解いていく、というサスペンスである。その主人公の青年ライオネルを演じるのが既に中年になっているエドワード・ノートンなのだが、彼はかなり頑張って違和感なく若者役を演じている。
ライオネルはトゥレット症候群の患者で、自分の意志とは関係なく言葉を発してしまったり奇声をあげたり手が動いたりする。その一方で驚異的な記憶力を持ち、才能を生かして事件を探っていくのだ。だが実は謎解きの醍醐味はあまりなく、犯人は最初から観客には提示されているようなものである。そのうえ登場人物が多くて人間関係や人物像がよくわからない。キャラクターの提示が手際よいとは思えなくて、途中でしんどくなってしまった。
全体としてはレトロな雰囲気もよく、格差社会や人種差別に触れていく社会派の味付けは、トランプ大統領への批判ともとれる。もうちょっとストーリーが整理されていたらなおよかった。 地味な映画だけれど、多くの人に見てほしい作品だ。
2019
MOTHERLESS BROOKLYN
アメリカ 144分原作:ジョナサン・レセム
脚本:エドワード・ノートン
撮影:ディック・ポープ
音楽:ダニエル・ペンバートン
出演:エドワード・ノートン、ブルース・ウィリス、ググ・ンバータ=ロー、アレック・ボールドウィン、ウィレム・デフォー