吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

パリ、嘘つきな恋

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 監督・脚本・主演と3役をこなしたフランク・デュボスクが出ずっぱりで頑張っている。軽佻浮薄な49歳のプレイボーイが本気の恋に落ちる、というわりとありきたりな物語なのだが、シチュエーションがとにかくおしゃれ。さすがはフランス映画だ。

 たまたま亡母の車椅子に乗っているところを美女に目撃されて障害者と間違えられた主人公のジョスランは、彼女の気を引くために障害者のふりをする。しかしその彼女から車椅子使用者の姉フロランスを紹介され、いつしか本気で恋するようになったから困ったことに。正直に言えばいいものを、どんどん嘘を上塗りして泥沼にはまっていくジョスランだったが――。

 ジョスランの仕事は靴の販売会社のヨーロッパ支社長。金持ちの独身貴族だからもてるんだろうけれど、中身は軽薄。そんな彼が知り合った足の不自由なフロランスはヴァイオリニストで車椅子テニスにも打ち込む素敵な女性だった。どんどんフロランスに惹かれていくジョスランだったが、本当のことを言えないまま時間が過ぎていく。

 まあ、あとはお定まりのコースをたどるラブストーリーなんだけれど、靴会社の重役だけあって、ネタが全部靴に関係あるところが一ひねりあってよかった。

 ラストシーンをまず思いついて、そこから物語を組み立てたんじゃないのかと思えるほどうまい落ちだ。なかなか感動的なしめくくりで、ハッピーエンドというところがよい。最後の最後にじいさんがかますボケも可愛い。

 なんといっても売りは「水中デート」。これ、よくぞ思いついたもんです。あっと驚く仕掛けには参った。そのうえ、彼女の真っ赤なスカートが目を見張る。可もなく不可もない、でも「障害」は人の心にあるということがよくわかる小粋な物語。(レンタルDVD)

2018年製作/107分/G/フランス
原題:Tout le monde debout
監督:フランク・デュボスク
脚本:フランク・デュボスク
衣装:イザベル・マチュー
フランク・デュボスク
アレクサンドラ・ラミー
キャロライン・アングラード
エルザ・ジルベルスタイン
ジェラール・ダルモン