吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

ダウントン・アビー

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 「ダウントン・アビー」、わたしはテレビ放送が終わってからDVDで一気見したわけだが、あの後の展開がもちろん気になっていた。第二次世界大戦に向かうつかの間の戦間期、グランサム伯爵たちはどう生きていくのか、ダウントン・アビーは売却されるのだろうか。で、私以外にも気になる人が世の中には大勢いるみたいで、とうとう「続きは劇場でね!」ということになって映画版が作られたわけ。
 これまでの群像劇を2時間に押し詰めるわけだから、エピソード一つずつが高速展開。当然にもこれまでのことを知っていないと理解不能。テレビ版を観ていない人にはほぼ無理。映画上映の直前にパットモア夫人による人物解説があったけれど、あれはこれまでのファンが思い出すためにあるようなもんであって、初めての人はあれではわからんでしょう。
 今回のエピソードはドラマが終わった二年後、1927年を描く。国王夫妻がダウントン・アビーに一泊するという話が降ってきて、邸内は上から下まで大騒ぎ。引退していたカーソン執事が戻って来て、トーマスがふてくされているという、わりとありがちな感じだが、これまでドラマ版だと悪役だったトーマスがずいぶん善人になっていて、おまけになんだか可愛らしい。彼は当時は刑罰の対象であったゲイとして生きる身の上で、彼の複雑な心理があのような根性悪の人間として発露していたのだろう。今作では彼のエピソードが現代的で印象深い。「将来はぼくたちのような人間が罪に問われないようになるんだろうか?」というセリフが切ない。
 国王をもてなすのだと張り切っていた階下の使用人たちは、国王のシェフや使用人たちがやってきてダウントン・アビーを我が物顔で歩き回ることに耐えられない。映画では国王がわがままな悪者扱いされているのが面白い。もちろん国王自身のせいではないのだろうけれど、気位の高い国王の使用人たちに見下されるダウントン・アビーの使用人たちの悔しさがよくわかる。
 映画での王室の描き方が日本とは随分違うのでこれは興味深い点だ。アイルランド人で共和主義者のトム・ブランソンがずいぶん牙の抜けた主義者になっていたのは拍子抜けだったが。確か彼は共和派というよりは社会主義者だったはず……?
 わたしは大画面でダウントン・アビーの全景が見られただけで大満足。ドローン撮影されたその姿は雄大でさまざまなアングルからの眺めは絶景絶景。ラストシーンでカーソンとヒューズが夕暮れの中を屋敷から出て自宅へと歩いていく姿が美しい。これは映画館で見ないとその醍醐味がわからない場面だ。 
 あとは、衣装が素晴らしかった。これも眼福眼福。しかし格差社会如実に表した貴族の世界はやはりいびつなものだね。
2019 
DOWNTON ABBEY
イギリス  122分 
 
監督:マイケル・エングラー
製作:
ジュリアン・フェロウズほか
本:ジュリアン・フェロウズ
音楽:
ジョン・ラン
出演:
ヒュー・ボネヴィル、エリザベス・マクガヴァンマギー・スミスミシェル・ドッカリー、ジム・カーター、ローラ・カーマイケル、ブレンダン・コイル、フィリス・ローガン、ジョアン・フロガット、ロバート・ジェームズ=コリアー、ソフィー・マクシェラ、ペネロープ・ウィルトン、アレン・リーチ、レズリー・ニコル、ケヴィン・ドイル