吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声

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11月18日鑑賞。なんと、劇場用パンフレットを作成していないとな!

 復習のためというべきか予習のためというべきか、Amazonプライムビデオの配信で前作を再見した。20年以上前に見た時にはあまり面白いと思えなかった作品なのに、今回見直したらすごく感心したので、驚いてしまった。20年前のわたしはラッセル・クロウがあまり好きではなかったのだろう。しかし今、若い頃のラッセルを見て、たいそう惹かれた。それだけ自分が年を取ったということを実感する。若くて強くて優しい主人公にとても心惹かれるのだ。一大スペクタル作品として話題を呼び、アカデミー賞も受賞した作品なのだが、今回は配信映像を小さな画面でチマチマと見ることになった。にもかかわらず、20年前に見た時よりも感動したのは、その人物描写の演出の細かさや演技陣の素晴らしさだったのだ。 そして、古代から中世にかけてのヨーロッパの集団肉弾戦はいくつもの作品で見てきたのだが、やはりリドリー・スコットの演出は素晴らしい。戦場の恐ろしさをこれでもかと見せつけてくれる。というわけで前作についてはアカデミー賞作品賞を獲っただけのことはあると見直したものであった。

 さて、しっかり前作を復習したあとは、劇場の大スクリーンで続編を。やはりラッセル・クロウのかっこよさには負けるね、ポール・メスカル。主役よりも、奴隷商人役のデンゼル・ワシントンのほうが目立ってしまっているではないか。

 さて物語は前作で死んだマキシマスの息子、ルシアスが主人公。マキスマス死後20年ぐらいが経過している。時代は浴場で有名なというかそれ以外に功績のない暴君カラカラ帝の治世である。カラカラ帝がまだ二十代の若さで弟と共に帝位に就いていたことをわたしは知らなかったので、歴史の勉強になって面白かった。映画では双子ということになっているが、史実では年子のようだ。

 ルシアスは少年のときに遠くアフリカ北部の地に追いやられたが、成人してからは妻を得て幸せに暮らしていた。はずが、ローマ帝国軍にその妻(なんと軍人である。かっこいい!)を殺され、復讐の鬼と化す。ローマ将軍アカシウスへの恨みを募らせていたが、奴隷商人につかまってローマに引き立てられ、グラディエーター(剣闘士)として過酷な試合に出場させられることとなる。このあたり、亡き父と同じ道をたどっている。

 今回の話では皇帝がアホすぎて小物すぎて迫力がない点で減点。その代わりに前作はCGだらけだったコロセウムのシーン、今回では3億ドルを投じてマルタ島にセットを作ってしまったというからハリウッドの金力恐るべし(パンフレットがないので、金額の出典は『スクリーン』2024年12月号より)。コロセウムに水を張って船合戦とかすごすぎる。

 驚くべきはコニー・ニールセン! 前作から20年以上経っているのに見た目がほとんど変わっていない。女優恐るべし。

 スペクタクル的な見どころはもちろん満載なので、絶対に映画館で見るべき作品。政治劇としては幼稚なのでそこは期待せず、ひたすらコロセウムの戦闘に瞠目しよう。

 ラストのクライマックスに向けての戦闘場面、これはリドリー・スコットが現代に向けて放った平和へのメッセージだと受け止めた。世界中で戦争が終わらない今、和解への道がいかに困難でもあきらめてはいけないと告げているかのようなラストシーンだった。

 劇場用パンフレットが作製されていないのが返す返すも残念。これはまたアカデミー賞をいくつも獲るんでしょうね。

2024
GLADIATOR II
アメリカ  Color  148分
監督:リドリー・スコット
製作:ダグラス・ウィックほか
脚本:デヴィッド・スカルパ
撮影:ジョン・マシソン
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演:ポール・メスカル、デンゼル・ワシントンペドロ・パスカルコニー・ニールセン、ジョセフ・クイン、フレッド・ヘッキンジャー