吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

猫は逃げた

というわけで、先に「愛なのに」を見たので、次はそのカップリングになっている本作を。今度は城定の脚本を今泉が監督した。 わたしはタイトルを「猫が逃げた」だと思い込んでいたが、違った。「が」と「は」は一字違いで大違いである。どちらも助詞なのに、…

愛なのに

本作は、城定秀夫が今泉力哉監督と互いに脚本を提供し合ってそれぞれが監督してR15作品を作ったもの。だから本作の脚本は今泉が書いたものが元になっており、今泉監督の「猫は逃げた」とセットになっている。セットと言ってもこの2作はまったく別の物語であ…

ゴヤの名画と優しい泥棒

これは楽しい、面白い。爺さんの変コツぶりと反骨精神がよいわ! 1961年イギリス。ニューカッスルに住む60歳のケンプトン・バントン爺さんのところに受信料を払えとBBC(国営放送)の集金人たちがやってきた。しかし爺さんは平気の平左。「BBCは受信できない…

プリシラ

エルビス・プレスリーと離婚したプリシラの回想記が原作になっているので、あくまでプリシラの視線から見たエルビスが描かれている。プリシラとエルビスの西ドイツでの出会いから、メンフィスの豪邸グレイスランドでの同居、そしてついに結婚へと至る8年間が…

アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師

11月末に見た。これは面白い! 「オーシャンズ11」シリーズを彷彿とさせるチーム詐欺師の物語。ただし、ハリウッド版と違っていかにも予算不足を感じさせるチープな絵柄が悲しい。せっかく面白い話なのに。よくこんな面白い設定を考えたなと感心していたら、…

ホワイトバード はじまりのワンダー

原作が児童文学だけあって、物語の設定が甘いしファンタジー色が濃厚なのが大人の鑑賞には苦しい部分だけれど、十分訴える力のある映画。「「ワンダー 君は太陽」の原作者R・J・パラシオが、そのアナザー・ストーリーとしていじめっ子だったジュリアンに焦…

ルックバック

これは58分という短い上映時間にもかかわらず劇場公開時には一部ですごく話題になっていたアニメ。見た人がみな「とてもいい」というからわたしも見てみた。確かにすごくいい。何がいいかというと、小学生から大学生までの子ども時代の物語なのに、既に人生…

イコライザー THE FINAL

シリーズ第3作。Finalってことはこれでお終い? ともあれ、わが最強の殺し屋、元CIAのロバート・マッコールが終の棲家に決めたところはシチリアである。温かい人々の心遣いに触れて、ここが好きになっていく。しかしそうは問屋が卸さないわけで、この町はマ…

漁港の肉子ちゃん

とても楽しいアニメ。「肉子ちゃん」と人々や娘からも呼ばれてしまうような肉団子体形の女性が主人公。ではなく、その可愛い娘11歳の小学5年生が主人公。親に似ず細身で可愛く、頭もよく運動神経もよい。当然にも男の子にももてたりするタイプだが、母親が次…

クワイエット・プレイス:DAY 1

ヒット作の第3弾。 とはいえ、これまでの主人公だったアボット一家は誰も登場しないから、全然別の物語と言っても過言ではない。ただし、若干シリーズ第2作につながる人物も登場しているので、シリーズを見てきている観客なら、「ああ、ここでこの人がこうい…

瞳をとじて

3月に鑑賞。既にもちろん詳細はすっかり忘れている。 なんと、ビクトル・エリセ31年ぶりの長編だそう。いったい何をしていたんですか、エリセ監督。本作の主人公も老監督で、22年前に主役の俳優が突然失踪したために映画が未完に終わってしまった、すっかり…

クワイエット・プレイス 破られた沈黙

シリーズ第2作。上映時間が短いのが良い。第1作に負けず劣らず緊迫しているし、お化け屋敷みたいに驚かされるので心臓に悪い(笑)。第1作の細かいところはあまり覚えていないのだが、一家の父親が亡くなったのは覚えている。監督と主演を兼ねたジョン・クラ…

カムバック・トゥ・ハリウッド!!

なんと、オリジナル作があって、それをリメイクしたそうな。なんで今頃こんな1970年代の作品をリメイクするのかな。しかし役者が無駄に豪華なのでつい、見てしまったではないか。しかもあほらしいコメディにもかかわらず、ロバート・デ・ニーロが実に楽しそ…

最後まで行く

先にリメイク版の邦画を見ていたので、オリジナルの韓国版も見たくなった。結果、ストーリーの大筋はまったく同じなのだが、やはり韓国と日本の埋葬の違い(火葬か土葬か)があって、遺体の使い方が異なる。 どちらが面白いかといえば日本版かな。特にラスト…

最後まで行く

映画館で予告を見た時にはてっきりコメディだと思っていたのだが、どうしてどうして。これはどろどろに恐ろし気な話である。確かにコメディかもと思える場面もあるけれど、全然笑えない。 して物語は。悪徳警官たちとその上をいく悪徳上司との血まみれの汚職…

ミステリと言う勿れ

原作漫画は一話だけ読んだことがある程度のわたしがこの映画を見て楽しめるのかと思ったけれど、意外と面白かった。しかし「三人の鬼が旧家を乗っ取る」という基本の設定に相当な無理があるので、そのリアリティのなさを飲み込めるかどうかでこの映画を面白…

ジョン・ウィック:コンセクエンス

はい、今日もサクサク気持ちよく人をいっぱぁ~い殺しますよ~。というわけで、シリーズ第4弾。元々あり得ない話だから、ありえない度が上がっても観客もあまり驚かない。地球の重力無視したり、10メートルぐらいの高さから落下しても骨折もしてなさそうだっ…

あまろっく

あまろっくとは、尼崎港の閘門を指す。いかにも労働者の町らしい尼崎の町工場が舞台。町工場の社長がいつもゴロゴロ寝転がっては「俺は近松家のあまろっくや」とふてぶてしく笑い飛ばしている姿が何度も登場する。根っからの明るい性格のこの男が、「人生で…

隣人 -The Neighbors-

劇場未公開作。 これは怖すぎるので未公開? 残虐だから? 子どもが殺されるから? まあ、見ていて気持ちのいい話ではない。でも怖いだけではなく惹きつけられるものがあったので、最後まで一気に見てしまった。韓国映画って怖い。 物語の舞台はどこかの団地…

五香宮の猫

五香宮は「ごこうぐう」と読む。想田和弘監督の「観察映画」第10作目。想田さんが「猫」? 友人の選挙運動を撮ったドキュメンタリー「選挙」や精神科診療所を撮影した「精神」などで国際映画賞をいくつも撮った監督の今回の観察対象は「猫」である。いったい…

島守の塔

戦中最後の沖縄県知事として赴任した島田叡の伝記映画。同じテーマのドキュメンタリー「生きろ」が教科書みたいな作りで面白みに欠けたのに比べると、ドラマとして作られている本作のほうがはるかに情に訴えるところがあり、感動が深い。しかし見終わって再…

エゴイスト

2月に見て少しメモしたまま下書きに入れて放置していたので、内容はほぼ忘れたけれど、今日読んでいた『戦後映画の生き残り戦略』という論文集の「食から薔薇族映画を再考する」に本作がちらっと言及されていたので、「あ、そうだ。この映画の感想を完成させ…

図書館の自殺

劇場未公開作品。 図書館という言葉に惹かれて見てみたけれど、図書館はほぼ関係ない。図書館の中で自殺した母の仇を討とうとする双子の美しい姉妹の物語。結構凄惨な話なので、途中で嫌になってきたのだけれど、後半、徐々に謎が解けてくると面白くなった。…

シモーヌ フランスに最も愛された政治家

わたしが2018年8月末~9月初めにかけて初めてフランスに行ったとき、パンオテンに祀られたばかりの人物がシモーヌ・ヴェイユだった。彼女のことはほとんど知らなかったので、こんなに人気のあった政治家だったとはと驚いたものだ。彼女の顔写真の巨大な幟が…

ポトフ 美食家と料理人

なんだ、ポトフは出てこないのか。あれ、よく見たら原題はポトフじゃないし。勝手にポトフにしないでほしい。 と、のっけから文句を書いてしまったがこの映画はとてもよかった。何がいいかといって、ひたすら料理がおいしそうに見えるところだ。最近のグルメ…

カラオケ行こ!

やくざ映画は嫌いなのだが、この作品のやくざは暴力沙汰もほぼ起こさないし、闇の仕事の気配をまったく感じさせずにひたすらカラオケで歌っているばかり。けったいな映画である。主人公のヤクザが綾野剛というところがいかにも、という納得感がある。 そして…

それでも私は生きていく

「この身体を何年も使ってなかったなんて」「きみの身体に夢中だ」「恋してしまったよ」 妻がいる男にとっては女はアバンチュールの相手でしかないのか? 次第に女は「愛人」であることに耐えられなくなる……。 いかにもフランス映画。レア・セドゥの美しい裸…

パリタクシー

おとぎ話のような良い映画。見終わった後、しみじみする。こういう映画を見るとほっとするので、すさんだ心を癒してもらうためにお薦めのもの。ただし途中、家庭内暴力の場面はかなりぞっとしてしまうので、こういう場面があると知らずに見た人には衝撃と思…

コレクター 暴かれたナチスの真実

ナチのユダヤ人虐殺に手を貸して美術品を掠奪したオランダ人実業家が、戦後30年を過ぎてようやく罪に問われるまでを、真相追及に奔走した新聞記者の視点で描く。 舞台は1976年のオランダ、アムステルダム。主人公は新聞記者のハンス・クノープ。彼の元に、「…

プチ・ニコラ パリがくれた幸せ

実はわたし自身は「プチ・ニコラ」という絵本を読んだことがない。だから、なぜこのアニメを見ようと思ったのかは思い出せないのだが、とにかくふんわかとしたパステル調の色合いと絵柄と、うちの息子Y太郎33歳フランス帰りに言わせると「古き良きパリ」が描…