吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦

 

ポスター画像 

 わたしはラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件「エンスラポイド作戦」についてはほぼ知らなかったので、すべてが新鮮な思いで見ていた。チェコは無血状態で簡単にドイツ軍に占領されたあと、冷酷無慈悲なハイドリヒによって支配されていた。

 映画は冒頭で、イギリスやフランスがナチスドイツに譲歩した、いわゆるズデーテン回廊割譲の融和政策への簡単な字幕言及から始まる。つまり、ひとえにチェコ占領はイギリスなどの責任というわけだ。だからこそ、イギリス亡命政府はチャーチルの後押しでこの作戦を実行したのだろう。イギリスからチェコに送りこまれた暗殺部隊の勇敢かつ危機溢れる行動が描かれていく。

 映画はほとんどモノクロ画面と区別がつかないくらいに暗く、彩度が低い。終始暗い画面でそのうえ物語も暗いので、陰々滅滅たる気分になる。

 この映画で描かれたことは自己犠牲の美しさと極限の恐怖。ふつうのおばちゃんたちが暗殺実行部隊をわが身を顧みずに匿う状況はほんとうに感動的だ。

 しかし、暗殺の報復がえげつなすぎる。ほんとうにこの暗殺は意味があったのか? そう問わざるを得なくなる。つまりは個人に対するテロは戦争を止める手立てにはならないということか。現在に翻って大いに考えさせられる話だ。(Amazonプライムビデオ) 

2016
ANTHROPOID
チェコ / イギリス / フランス  Color  120分
監督:ショーン・エリス
製作:
ショーン・エリスほか
脚本:ショーン・エリス、アンソニー・フルーウィン
撮影:
ショーン・エリス
音楽:
ロビン・フォスター
出演:
キリアン・マーフィジェイミー・ドーナンシャルロット・ル・ボン