手に汗握るコメディ・サスペンス。笑っているうちにいつしか物語は恐怖のるつぼへ! 最後は切ない幕切れ。
もう何を書いてもネタバレになりそうなこの映画、ポン・ジュノ監督の「ネタバレ厳禁」なんて言うことを聴いていたら一言も何も書けなくなる。
一回目に見たのは劇場公開から間もないとき。あまりにも面白くてあっけにとられたのだけれど、結末については疑問符がついた。結局のところ、この映画は格差社会の根本を批判していないのではないか、と。2回目に見たときはその完璧な脚本に改めて感動した。むしろ2回目のほうが味わい深く見ることができた。伏線がことごとく回収されていく醍醐味にはすかっとする。
パルムドールとアカデミー作品賞を獲った今となっては多くの評が出回っているし、裏話や物語の背景についてもいろんな解説があるので、もうあんまり書くこともない。
わたしはいくつか備忘録として箇条書きしておこう。
・セットの技術力が高い。金持ち社長の坂の上の豪邸も、主人公一家の半地下もセットであるというのには驚いた。洪水の場面などはよくも撮影できたものだ。金かかってる!
・韓国のここ10年ぐらいの社会問題が背景にあるので、知っているとより面白く見られる。台湾カステラで倒産した件など。ここが半地下住人とさらに下にいる地下住人が一瞬境遇を共有し、かすかな共感を抱きあう要因となる。
・主人公の息子は永遠に金持ち社長の家を買うことなどできない。そもそも格差社会の格差の元を断つという発想を彼が持てない限り、この物語には救いが来ない。椅子取り合戦での勝者を目指そうという野望は捨てるべき。
・金持ちは上品で優しい、というのは正しい。金持ち喧嘩せずという言葉があるではないか。
・否定しようもない文化資源の格差は縮めることができない。
・映画が表現することができない「臭い」というものを大きなポイントにしたところが秀逸。
・テンポが非常によい。無駄なカットがまったくない。
・一種独特の音楽もいい。バロック音楽かと思わせて変幻していく不思議なアンサンブル。