前作はものすごく面白かったというのに、内容はきれいさっぱり忘れている。覚えていることは、デンゼルが強烈にかっこよい必殺仕事人で、クロエ・グレース・モリッツがまだ十代なのに既に中年体形になって貫禄ある二の腕を見せていたことぐらい。なので、前作と本作とのつながりがあるのかないのかもわからない状態から鑑賞開始。だから、前作と比べてどっちが面白いとかどうとかはまったく言えないんだけれど、主人公のマッコールが元CIAの殺し屋で、凄腕で、身近にあるものすべてを武器に変えて戦うという基本路線は観客も了承済みという設定でお話が始まっていることだけは了解できた。
舞台はトルコから始まり、ブリュッセルに飛び、ボストンに変わり、と目まぐるしくロケ地が登場する。なんで一介のタクシー運転手であるマッコールがトルコに行く金があるのか? 自宅を大改造する金があるのか? まともに考えたら不思議なことはいっぱいあるんだけれど、とにかく彼はハイテク技術をすべて導入し、しかもそれらはすべてDIYで済ませるという技術力の高さを誇る。
前作では年若い娼婦を助けるおじさん役だったのが、今度は才能ある青年が不良組織に落ちていくのをとどめるという役割。どっちにしてもマッコールおじさんは正義の味方で、幾分説教臭くて、破壊力抜群で、異様な整理整頓好きで、読書好きでふだんは物静かに本を読んでいるという殺し屋である。この人物造形がたまらなく魅力的だ。やくざな仲間に引きずり込まれそうな近所の黒人青年に「自分の不幸を人種差別のせいにするな。才能を無駄にするな」と本気で説教する。それがいい。単に説教するだけではない。マッコールおじさんは体を張って青年を助けるし、弱い者の味方なのだ。しかしあれだけ派手に暴れたら警察沙汰にならんのか、不思議である。
で、今回の敵はプロ。イコライザー対イコライザーの闘いはどっちが勝つ!? しかもハリケーンがやってきて住民が避難してしまった無人の町で暴風雨をものともせず、むしろそれすら味方につけて、ありとあらゆる物を武器に変える恐るべき知識と機転。小麦粉爆弾なんて、誰が思いつくかね、普通。粉塵爆発の原理を知っていなければできない技です。
前作をあまり覚えていないのだけれど、たぶん今作のほうが演出そのものは地味になっているのではないかという気がする。しかしアクションの面白さはなかなかのもの。
マッコールがなじみの書店に注文していた「死ぬまでに読んでおくべき100冊」のリスト、見てみたい! 最後の一冊はプルーストの『失われた時を求めて』でありました。
THE EQUALIZER 2
121分、アメリカ、2018
監督:アントワーン・フークア、製作:トッド・ブラックほか、脚本:リチャード・ウェンク、撮影:オリヴァー・ウッド、音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演:デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、アシュトン・サンダーズ、ビル・プルマン、メリッサ・レオ