吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

日本で一番悪い奴ら

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 警察とヤクザがグルになっている、という実話を基にした警察実録映画。綾野剛の演技が何よりの見どころ。本作には原作本があり、それは悪徳警官本人が書いた告白本というから、内容はかなり事実に忠実なのだろうけれど、映画的には事実を盛ったと思える場面(たぶん)が数々あり相当に面白くなっている。
 舞台は1975年ごろの北海道警察本部。主人公の青年諸星要一が柔道の腕を買われて警官となり、初々しい正義感を胸に仕事にまい進するが、先輩刑事のアドバイスを聞いて、点数稼ぎのためにヤクザの組織にスパイを送り込むことを学ぶ。やがて悪党には悪を持って制する仕事が習わしとなり、青い正義感もどこへやら、いつしかどっちがヤクザかわからなくなるぐらいに悪事に手を染めていく警官の姿を軽快な演出で描いた。エロありグロありなので、当然にも映倫R15+。ま、R18にならなくてよかったね。
 道警という大組織のメンツと点数稼ぎのために組織犯罪が行われる、という大企業が腐敗する構造とまったく同じことが起きるわけで、そこでトカゲのしっぽ切りをされた主人公諸星刑事の恨みつらみが描かれていくわけだ。原作は読んでいないから知らないが、映画はかなりこの諸星も悪党に描いているから、観客は諸星にも感情移入できないだろう。
 綾野剛の魅力に尽きるね、実に。彼はちょっと童顔で可愛らしいのだが、ハンサムというのとは違う癖のある顔をしている。この顔がくるくるといろんな表情を作りやすい造作をしているので、役者としては天賦の物があるのではないか。小心者のくせに大胆にすごんでみせたり、ヤクザ相手に震えているくせに横柄な態度で怒鳴ってみたり。およそ上品という言葉の対極にあるような人種だけれど、どこか憎めない。
 今年映画館で見た実録ものの「孤狼の血」よりずっと面白かった。(U-NEXT)

135分、日本、2016
監督:白石和彌、製作:由里敬三ほか、原作:稲葉圭昭『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』(講談社刊)、脚本:池上純哉、撮影:今井孝博、音楽:安川午朗
出演:綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄矢吹春奈ピエール瀧中村獅童