吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

ブレス しあわせの呼吸

 人工呼吸器をつけたまま25年以上存命した男とその妻の献身を描く実話。これが実話というのがやはり感動の原点で、しかも本作のプロデューサーの両親の物語だというから驚きである。

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 1958年、イギリス上流階級の青年が社交界の花と結婚し、新妻が懐妊して喜んでいたのもつかの間、青年ロビンはポリオに感染して首から下が動かせない、自分では呼吸もできない重篤に陥る。医者からは余命数ヶ月と言われたにもかかわらず、妻のダイアナは決して諦めず、ロビンを家に連れて帰ることを決意する。そこからは二人の壮絶な、しかしユーモアと明るさの絶えない介護生活が始まる。その長年にわたる呼吸器との付き合いを可能にしたのが、ロビンの友人である技術者テディ(ヒュー・ボネヴィル、やっとグランサム伯爵に見えない役をもらえてよかった)の工夫と発明だった。
 どんな状況に陥っても決してダイアナは諦めないし、深い愛情を夫にそそぐ。その介護生活がどれほど大変であったかと想像できるが、映画では他人に見せたくない部分は一切描かれていないため、「きれいごと」に見えてしまう部分があるのは残念だ。
 しかし、本作のプロデューサーでロビン夫婦の息子であるジョナサンは、記憶の中の両親がいつも明るく前向きだったと語っている。だから映画も「ほんまかいな」と思えるような楽しいエピソードに満ちている。ほぼ全身が動かせない人があちこち外国旅行にいけるなんて、なんという幸せな身分だろう。金持ちだったから可能になった生活であろうが、ロビンを生かすために開発された技術は彼一人のものではなく、その後多くの重度障害者を助けたという。
 印象に残る場面をいくつか。ドイツの先端医療を見学に行ったダイアナが目にする、人工呼吸器に縛り付けられている患者が頭だけ並んでいる異様な光景はSF映画のようで本当に怖かった。一方で、スペインの山道で車が立ち往生する場面の楽しいこと!
 映画の後半も過ぎたころから、徐々にロビンの身体が弱り始める。友人を大勢招いて開いた「お別れパーティ」の賑やかで楽しい場面から後はもう涙、涙、涙。

 どんなことも前向きにとらえ、不幸を不幸と思わない不屈の精神と愛情が彼らを生かした。最期すらも自らの意志を貫いたロビンの生きざまは羨ましいとさえ思える。

BREATHE
118分、イギリス、2017
監督:アンディ・サーキス
製作:ジョナサン・カヴェンディッシュ、脚本:ウィリアム・ニコルソン、音楽:ニティン・ソーニー
出演:アンドリュー・ガーフィールドクレア・フォイトム・ホランダー、ヒュー・ボネヴィル、ディーン=チャールズ・チャップマン、ベン・ロイド=ヒューズ