労働映画百選にも選ばれた、正統派労働映画。後継者不足に悩む林業の現場が舞台になっていて、普段見ることのない林業労働の実態の断片がわかる。
既に産業として存在し得ないほど衰退している林業に若者を呼ぶことはできるのか?! 本作は三重県でオールロケした作品。2003年に「緑の雇用」制度が開始されてまもなくの状況を描いた原作小説が元になっている。林業の厳しさと同時にその素晴らしさも描いた。
浪人生の主人公のユウキは、林業研修の若者を募集するパンフレットの表紙に写っている美女に惹かれて神去村(かみさりむら)にやってきた。もともと不純な動機でやってきたのだから、携帯の電波も届かないような田舎暮らしにすぐに嫌気がさして逃げ出そうとする。しかし彼は何とか踏みとどまる。105年前に植えられた木がやっと切り出されるときの興奮に、ユウキは心を動かされた。林業とは100年後の世代のための仕事を行うものだ。「アーカイブズ機関にも共通する仕事だなぁ」とわたしも胸が熱くなった。自分たちの仕事の成果がわかるのは我々が死んだ後だ。それってわくわくする仕事ではないか。
労働現場の厳しさもユーモラスな田舎生活も山あり谷ありの演出で楽しく見せてくれた、良作。
音楽がまるでアイルランド民謡。ほとんど「タイタニック」のBGMかと思った。エンドクレジットの最後の最後、ボーナスカットがあるので最後まで見るように。
ところで、厚生労働省の林業賃金統計は2004年で廃止されている。「林業労働者職種別賃金調査は、平成16年調査をもって廃止しています。」との厚労省サイトでの文言が悲しい。もはや賃金統計を取ることもできない/とる意味もないほどに林業労働は衰退してしまったのか。もっとも、この調査は民営事業所を対象とするため、国有林で働く林業労働者が居なくなったわけではない。(レンタルDVD)
116分、日本、2014
監督・脚本:矢口史靖、原作:三浦しをん『神去なあなあ日常』、音楽:野村卓史
出演:染谷将太、長澤まさみ、伊藤英明、優香、西田尚美、マキタスポーツ、有福正志、光石研、柄本明