吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

アンダー・ザ・シルバーレイク

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 「これは夢オチに違いない、夢オチ、夢オチ、いつ発覚するんだ、夢オチ」と呪文を唱えながら見ていた作品。結局最後まで「はああああ?」という感じで終わってしまいましたとさ。デヴィッド・リンチマルホランド・ドライブ」みたいなヒチコック「めまい」みたいな、そんなハリウッドの彷徨物語。夢と現実の境界は定かではなく、そもそも世界を陰謀論ですべて説明しようとする主人公の記号オタクの青年が、自意識を肥大化させた現代の若者らしいモラトリアム人間。すべての謎がまったく謎のままで放置され、なにも解決されないサスペンス。こんな映画、二時間以上も我慢していたわたしがエライ。

 舞台は欲望渦巻くハリウッド。主人公のサムは大志を抱いてこの街にやってきたはずだが、今はプー太郎の日々で家賃滞納のためにアパートを放逐される寸前である。そんな彼だが、アパートの窓から望遠鏡であたりを覗き見ることを楽しみにしている。もうこの設定からしてヒチコックの「裏窓」であり、全編がこんな調子ですべてヒチコックその他の既成作品へのオマージュの数々となっている。

 およそ謎解きとかそういう理性的なことには一切関心がないという独善的なつくりなので、気に入る人は気に入るし、なんじゃこりゃという人にとっては「ストーリーがなってない」という不満爆発の作品である。世界は陰謀で出来ていると信じている人たちには面白そうな話だけれど、虚構新聞ほどには面白くもない。この映画を先にフランスで見ていたY太郎に「面白かったのは予告編だけやったぞ」と警告されていたにもかかわらず、ついつい見に行ってしまったわたくし。見て損したとは思わないけれど、見終わって「それで?」というような脱力感に襲われる映画だった。個人的には美しきヒロインがエルビス・プレスリーの孫娘と知ったことが収穫である。

 というわけで、けなしているように見えるレビューですが、実はけっこうおもしろかったので(なにしろどっちに向いているのか全然わからないスト―りーぶりに振り回されるのが楽しい)、それなりにお薦め作でございます。

UNDER THE SILVER LAKE
140分、アメリカ、2018
監督・脚本:デヴィッド・ロバート・ミッチェル、製作:マイケル・デ・ルカほか、音楽:ディザスターピース
出演:アンドリューガーフィールド、ライリー・キーオ、トファー・グレイス、ゾーシャ・マメット、キャリー・ヘルナンデス