吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ゴールデンカムイ

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 2月に映画館で鑑賞。

 原作漫画は大変話題になったがわたしは未読。既に連載が終わっているので、この物語の結末はわかっている(ことになっている)。

 本作の主人公は日露戦争二百三高地の激戦を生き残った「不死身の杉元」こと杉元佐一。彼はアイヌの人々が残した莫大な金(きん)を探して北海道をさすらっていた。そんなときに、アイヌの金を奪った男が網走刑務所に収監され、どんな拷問にも耐えて決して埋蔵場所を言わなかったこと、彼は死刑囚24人に入れ墨を施し、それは金の埋蔵場所を示す暗号であったこと、その死刑囚たちを脱獄させたこと、その中には五稜郭の戦いで死んだはずの新選組土方歳三も含まれていたこと、などを聞き及ぶ。そして、アイヌ埋蔵金をめぐって陸軍の有象無象が暗躍していたのであった。

 とにかく全編にわたってひたすらアクションアクションアクション、しかも凄惨な場面が多い。血まみれ、血みどろ、人皮をはぐ、内臓こぼれる、などなどがあるので、映倫PG12である。原作はアイヌ文化をよく調べてあると評判になったものであり、本作でもアイヌ語が頻出するし、アイヌの料理がなんども画面に出てきて、実に美味しそうである。この映画を見て思わず鍋物が食べたくなった。

 埋蔵金をめぐる殺し合いは古今東西の映画でもよくテーマになるのだが、その隠し場所を描いた地図が人の肌というのがミソであり、入れ墨を施された死刑囚24人の皮がそろわないといけないというのも壮大な話である。杉元が雪山の中で偶然出会ったアイヌの少女アシリパに助けられながら共に行動していくさまも心地よく、徐々に彼らの背景や経歴が示されていく展開も興味深い。

 2時間に及ぶアクション作を飽きさせない要因は、なんといっても登場人物すべてのキャラクターが立ちまくっているところ。気色悪い連中ばかり登場するので、笑えるし緊張感も高まる。その一方でアシリパを演じた山田杏奈の愛らしさと清々しさが画面に安らぎを与える。しかもアシリパは賢く強い。

 そしてもう一つは、よくぞ撮影できたと思えるほどの、本物の雪林でのロケ、そして極寒の地に流れる小川に浸かっての役者たちの捨て身の演技だ。寒さで震えているのは演技とちゃうよね、と思える。わたしならあんな撮影はお断りしたい。ほかにも明治時代の小樽の街を再現したセットとか、特筆すべき点はいくつもある。

 最後はどうなるのかと思いきや、続編ありなのか! まだまだ終わらないね、この話は。最後の最後まで続編に期待させる場面があるので、エンドロールの最後まで見ないといけません。

2023
日本  Color  129分
監督:久保茂昭
アクション監督:下村勇二
製作:田代秀樹ほか
原作:野田サトル
脚本:黒岩勉
撮影:相馬大輔
音楽:やまだ豊
出演:山﨑賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、工藤阿須加、柳俊太郎、泉澤祐希矢本悠馬高畑充希井浦新玉木宏舘ひろし