吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ボディガード

 午前十時の映画祭にて8月に鑑賞。

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 この映画を観るのは10回目ぐらいかもしれない。ビデオも買ったしサントラも持っている。ビデオ発売された時のCMの惹句は「これでケビンはわたしのもの…」と色っぽい声で女性がささやいていた。全日本のおばちゃんを狂喜させたケヴィン・コスナーファンのための映画。いろんな人が駄作だとネットに書き込んでいるけれど、そんなことはどうでもいいのよ、ケヴィンがカッコいいんだから! ホイットニーの歌が素晴らしいんだから!
 この映画を観てケヴィン・コスナーの熱烈ファンになったわたしは写真集も伝記本も何冊も買ったし等身大ポスターは居間に貼っていたし。幼児だったうちのY太郎はそのポスターを見て、「父ちゃ、父ちゃ」と嬉しそうに指さしていた。長じて学生となったY太郎はアルバイト(派遣労働)でホイットニー・ヒューストンの”ボディガード”をしたのだ! 彼女の日本公演で警備員となったY太郎は無料でホイットニーの歌を聴くというおこぼれに預かったが、当時すでに相当身体を傷めていたのか、彼女の声には伸びがなく、聞いているのもつらくなるほどひどかったという。「ドラッグやってるんとちゃうか」とY太郎が言っていた通り、その2年後に彼女は急死した。
 まあしかし、冷静に見ればストーリーは杜撰で穴だらけ、ご都合主義もいいところで、主人公たちの心理のブレが突然すぎて説得力がなく、ホイットニー・ヒューストンが演じている大スターはわがまま放題の傲慢な女で、じっと耐えているケヴィンがかわいそうになるわ。おまけに、守ってもらいたい欲求を満たしてくれる男にすがりつく。フェミニストが見たら怒るよね。でもいいのよ、ケヴィンがかっこいいんだから! ホイットニーの歌が素晴らしいんだから!
 ラストのキスシーンでカメラがぐるぐる回るのはルルーシュの「男と女」以来のお約束みたいな場面で。そこにあの大ヒット曲"I will always love you"がかぶるんだから、最高よねー。この曲は映画の中で二度流れる。一度目はケヴィンとホイットニーがダンスするシーンで。その時、ホイットニーはこの曲をちょっと馬鹿にしたように笑っていたが、ラストでは朗々と歌い上げる。ほんまにいつ聞いても素晴らしい歌唱です。
 ケヴィンがかっこよすぎて引くとか、カメラワークが雑とか、サスペンスになってないとか、いろいろ悪口を言う人はいるようですが、いいのよ、ケヴィンがかっこよければそれで! ホイットニーの歌が素晴らしければそれで! そういう映画なんだから。ほんとによくできている映画だわー。数年後にもう一度見たい。

THE BODYGUARD
135分、アメリカ、1992
監督:ミック・ジャクソン、製作:ローレンス・カスダンケヴィン・コスナーほか、脚本:ローレンス・カスダン、作曲:ジャド・フリードマンデヴィッド・フォスター、音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:ケヴィン・コスナーホイットニー・ヒューストン、ビル・コッブス、ゲイリー・ケンプ、ミシェル・ラマー・リチャード、マイク・スター、トマス・アラナ、クリストファー・バート