吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

おとなの事情

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 幼馴染の4人男子、今や中年になった彼らにはそれぞれ美しい妻がいる。一人だけはバツイチになっているが、ともかく仲良し3人組+1名はある月食の夜に一組の夫婦宅に集まり、持ち寄ったごちそうやワインに舌鼓を打ちながら楽しく一夜を過ごすはずだった。ひょんなことから「お互いの携帯電話の内容を見せっこしよう」と一人が言い出して、そのゲームに全員が渋々乗ってしまうまでは。。。この危険なゲームがさらけ出したのは彼ら7人の大小さまざまな秘密。それは知られてはいけないこともあれば、心温まるものもあり、ほぼ密室状態の一部屋の中で繰り広げられる会話劇が手に汗握る。
 最初のころこそ、かかってきた電話には笑える内容があったのだが、あっという間に知られてはならない内容へとシフトしていくところ辺りから予想通りの展開。しかし、ここで携帯電話を取り換えようというアイデアを入れたことが秀逸だった。これによっていっそう混乱した状況が生まれてしまったのだ。にっちもさっちもいかなくなった夫は妻にどう言い訳する? 品のないお遊びゲームの映画かと思えば実は意外なところに社会派作品としての片鱗が見える。このゲームに彩を与えるのが「月食」。美しい月の姿が禍々しさを加えていく。月=狂い、という西洋の言い伝えその通りに、彼らは狂っていく。いや、狂っているようでいなかった理性の人が一人いた。彼がカウンセリングに頼る弱さを自ら認めていたことが救いなのかもしれない。 
スマホは生活のすべてを記録しているブラックボックス」という名言も飛び出す、なかなかによく練られた脚本。わたしはガラケーだし、携帯に生活のすべてが記録なんてされてないけどね(笑)。
 ラストシーンの見事さ。これこそが「おとなの事情」。(U-NEXT)

PERFETTI SCONOSCIUTI
96分、イタリア、2016
監督:パオロ・ジェノヴェーゼ、製作:マルコ・ベラルディ、脚本:フィリッポ・ボローニャほか、音楽:マウリツィオ・フィラルド
出演:ジュゼッペ・バッティストン、アンナ・フォリエッタ、マルコ・ジャリーニ、エドアルド・レオ、ヴァレリオ・マスタンドレア