吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2018-01-01から1年間の記事一覧

マンマ・ミーア! ヒア・ウィ・ゴー

エンドクレジットの後に爆笑の1カットがあるのでお見逃しなく。 かつて世界中を熱狂させたアバ(ABBA)の楽曲だけを使ってミュージカルを作り上げるという神業の物語を八年前に見たときには、心底驚いたと同時に中高年の生き直し賛歌を楽しんだものだったが…

ラブストーリーズ コナーの涙 / エリーの愛情

幼児を亡くしたことによって関係が崩壊し別れていく一組の夫婦の悲しい物語。愛し合いながらも心が離れていくのを止めようがない。そんな二人をそれぞれの立場から描いた別々の作品として完成させている。 2作を1セットとして描くという試みはなかなか斬新だ…

春との旅

足を傷めて仕事ができなくなった老漁師が孫娘と一緒に旅に出る、というロードムービー。この老人がわがままで無教養でどうしようもない男だ。妻には先立たれ、娘にも死なれて孫の春と二人で北海道の寒村で生活していたが、その孫の勤務先である小学校が廃校…

さよなら、人類

「散歩する惑星」「愛おしき隣人」に続く三部作の最終作。さすがに同じような話も三回目になると飽きる。ただし、相変わらずの画面作りへのこだわりには感動した。窓に執着する監督は、ほぼ全画面で窓を構図の中心に配置してその窓を通して不思議な人間模様…

運命は踊る

イスラエルに住む裕福な家庭のもとにある日突然軍の関係者がやってきて、「息子さんのヨナタンが昨夜亡くなりました」と告げる。その言葉を聞いた若く美しい母親は卒倒し、父親は冷静を装いながらも感情のやり場に困惑し、絶望に震える。だがそれは誤報であ…

愛と法

大阪で開業する弁護士夫夫(ふうふ)の日常を追ったドキュメンタリー。二人の名前はカズとフミ。二人で「なんもり法律事務所」を開業したのは2013年のこと。映画は2014年、性の多様性を祝福する「レインボーフェスタ」会場で派手なTシャツ姿の二人が壇上に上…

幸せなひとりぼっち

お気に入りの一作になった。 オーヴォは59歳、無職になったところ。妻に先立たれて半年。しかしわたしにはオーヴォは59歳に見えなかった、70歳ぐらいかと思ってしまったわ。今年フランスにいってわかったんだけれど、ヨーロッパの水で顔を洗うと肌が荒れる。…

ジュピターズ・ムーン

主人公が浮遊するシーンが素晴らしいという触れ込みだったので期待してみていたのに、それほどでもなく、それ以外の部分も全然予想していたようなメルヘンチックな話ではなくてほとんどノワールの世界、みたいなアクション逃亡劇だったので爆睡につぐ爆睡で…

さよなら僕のマンハッタン

マーク・ウェブ監督の演出はさすがだ。ちょっと退屈な話かな、と思わせておいて後半ぐいぐいと思わぬ展開を見せる。ラストに至るまでの波乱が爽やかに収束するのが小気味よい。 本作は劇場で予告編を見たときにとてもそそられたのだが、結局映画館で見ること…

500ページの夢の束

最近は本人よりも姉のエル・ファニングのほうをよくスクリーンで見かけるようになったダコタ・ファニングだが、子役から大人への過程であまりヒット作に恵まれなかったところ、本作で久しぶりに演技の上手さを見せてくれた。 ダコタが演じたのは自閉症の若い…

ある天文学者の恋文

もう絶対にあのイタリアの小さな島に行きたい行きたい行きたい。と思わせるような素敵な舞台設定。風景の美しさに我を忘れる。そんな映像美が強く印象に残り、見終わって2か月が過ぎればもうストーリーの細部は一切忘れているし、結末はさっぱり思い出せな…

パリで一緒に

脚本も演出もあほらしくて見ていられない。本当にこんな映画、よく作ったとあきれる。しかし最後までちゃんと見てしまったわたくし。それもこれも何といってもオードリー・ヘプバーンの魅力に尽きる。こんな女優、なかなかいませんよ。画面のほとんどを彼女…

笑う蛙

15年くらい前から見たい見たいと思い続けていた作品、とうとう見ることができた。予想と違ってコメディだったのには驚いたが、なかなかに軽快で、先が読めない面白さがある。ただし、場面は伊豆にある古い別荘から動かず、ほぼ舞台劇のようなコンパクトなつ…

ドリーム

あふれる才能がありながら人種差別の壁にぶち当たって正当な評価も待遇も受けられなかった時代、黒人かつ女性という二重の差別の下にあった女性たちが自らの存在を認めさせるまでになる過程を描いた。 東西冷戦という時代背景があるから、アメリカとしてもソ…

僕たちの戦争

樹木希林さんを追悼して。映画ではなく、TBSで放送されたテレビドラマをご紹介。 2005年の茨城県在住のフリーターが、サーフィンの途中で溺れたはずみに1944年にタイムスリップし、予科練飛行士と入れ替わってしまうというコメディ。ドタバタコメディから始…

あの頃、君を追いかけた

男子高校生の実態がこれほど恥ずかしいものであることを発見して大いに驚いた。 高校生の幼い恋がこれほど後を引くまどろっこいしいものであることに驚き桃の木山椒の木である。 物語は、1994年からの10数年間の若者たちの恋を描く甘酸っぱいコメディだ。学…

友罪

帰りの機内で見た。もともとは往復ともエールフランスに乗るはずだったので、帰路に見ようと思って楽しみにしていた映画が何本もあったのに、それが見られなかったのが残念。帰りは台風で欠航になった代替機がANAだった。ANAよりエールフランスのほうが映…

ピーターラビット

機内で見た映画。とっても楽しい実写とアニメの融合映画。イギリスが舞台なのにアメリカ映画だから、やたら派手に暴れまくるし、爆弾まで登場するというアクション映画だとは予想外であった。 ピーターラビットのお話というから、てっきり愛らしいうさぎの物…

神様メール

アイデアが秀逸。こんな映画を作ってキリスト教関係者から抗議が来なかったのかね。神様がブリュッセルのどこかのアパートに住んでいて、人々の運命をパソコンで操っているとか、息子のイエスは父親と喧嘩して家出したとか、神様の妻は夫に虐待されて人間性…

グッバイ・ゴダール!

天才と結婚した若き女性の苦悩という特殊なケースの話ではあるが、実はこれ、家父長の威厳を振り回したがる男と結婚した女一般の悲劇として語ることができるわけで、極めて今日的というか普遍性のある物語と見える。 19歳の時に37歳のゴダールと結婚した妻ア…

さらば愛しき大地

巻頭のタイトルバックに映し出されるのは鹿島コンビナートの夜景。舞台は茨城県の農村で、茨城弁が飛び交い、納豆が元で家族喧嘩になるという、茨城色満載の映画だ。 時代は1980年ごろ、主人公はとある農家の長男幸雄(根津甚八)で、農業は老親と妻に任せて…

スターリンの葬送狂騒曲

これほど面白い政治劇も珍しい。笑えない場面ばかりなのに可笑しくってしょうがない。芸達者なベテラン俳優を揃えて、彼らが真面目に演じれば演じるほど見ているほうは耐えられないぐらい可笑しいって、そんな映画、ありですか。ありです! 間違いなくここ10…

陸軍前橋飛行場 私たちの村も戦場だった

1940年1月から大量の日記をつけ続けていた人物がいた。その名は住谷修。そこには詳細に戦時下の村の様子がつづられ、軍によって強制的に田畑を徴収されたことも記録されていた。戦争の日々を冷静な目で描写するその筆致は時に辛辣で、村民への批判も容赦ない…

バンクシー・ダズ・ニューヨーク

おかしい。既視感がある。どの場面もみな既視感がある。何十分見ても既視感がある。半分ぐらい見たところで思わず過去記事を検索したけれど、見つからない。こんなことってあるのかなー。まあええわ。 バンクシーは謎のストリートアーティスト。彼の顔を見た…

バトル・オブ・ザ・セクシーズ

これは面白かった! 拍手喝采である。 まずはエマ・ストーンがキング夫人にそっくりなので大いに驚いた。彼女は作品ごとにまったく別人に化ける。メイクのおかげなのか、本人の演技力のなせる業なのか、おそらくその両方なのだろう。 わたしが中学生の頃に夢…

レッド・スパロー

これは4月の初めに見たので、詳細はほとんど忘れてしまったのだが、実はとても面白かったのだ。 東西冷戦が終わったはずの米露のスパイ合戦がリアルに見られる興味深い映画。原作者が元CIA工作員だからかだろう、細部がリアルで迫力がある。主人公はジェ…

ロスト・バケーション

よい子は一人で海へ遊びに行ってはいけません、という教訓話。 鮫ですよ、鮫。食われます、はい、約3名。誰が食べられちゃうのか、よーく画面を見ていましょうね。基本的に男はすぐ食べられて、女はなかなか食べられません。ごちそうは最後にゆっくり食べよ…

ワンダー 君は太陽

トリーチャー・コリンズ症候群という遺伝子疾患が原因となる病気の子どもが主人公。顔面が普通の子どもと違うために、オギー少年は27回も手術を受け、学校への通っていなかった。だが母のイザベルはオギーを小学5年生から登校させることを決意する。校長と面…

万引き家族

6月3日の先行ロードショーで見たのに続き、7月21日に2回目の鑑賞。二回目でさらに完成度の高さに脱帽した。この上いっそう余裕をもって観賞するためには三回見る必要がある映画だ。とはいえ、そんなにハードルを上げたらいけないいけない。一回の鑑賞でも十…

砂上の法廷

キアヌ・リーブズ、久しぶりにスマートでかっこいい役を演じております。今回は辣腕弁護士。地味な法廷劇で、あまり世評も芳しくなくひっそりと上映されて割とすぐに終わってしまったという印象があった作品だが、なかなか映画らしい演出がよかった。 さてス…