吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

碁盤斬り

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 草なぎ剛が生真面目な主人公を実にそれらしく演じていて、ほとんど素ではないかと思えるほどだ。堅物で融通が利かない。それが主人公の長所であり、短所であった。

 この作品の元ネタが人情物の古典落語だということから、結末は見えているようなものだが、それでも最後は手に汗握る緊迫の場面もあって、なかなかに見せ場があった。

 ストーリーは囲碁をめぐる話。わたしは囲碁をまったく理解していないので作中で交わされる会話がよくわからないが、それでも何やら深遠なものがあるような気がして背筋が伸びる。主人公の浪人柳田格之進はある事情で故郷の彦根藩を追われて今は江戸の貧乏長屋で娘と共に浪々の身。囲碁の名手であり、知り合いの大店の店主萬屋源兵衛に囲碁を教えてほしいと乞われて相手をしている。その静謐な対決場面がとても好ましい。

 囲碁の話が続くのかと思ったら格之進が浪人になったいきさつがだんだん明らかになってきて、彼は妻を自害で亡くしているのだが、その原因を作った男の存在が判明して仇討ちを誓う。年頃の娘を一人残して仇討ちの旅に出た格之進は果たして本懐を遂げることができるのか?

 という仇討ちの話と、もう一つは大店の金を盗んだという疑いをかけられて苦境に陥る話が並行していく。現代ではちょっと考えられない異様な自己犠牲の塊のような父娘が主人公として登場し、前半ののんびりした雰囲気が後半では一転して厳しい仇討ちと雪冤の両方の重荷が格之進に覆いかぶさる。八方ふさがりの彼だが、その実直な性格が最後は幸いへと転じていく、という感動物語。

 草なぎの演技とキャラクターがこの作品にぴったりで、昔はこんな武士が生きていたのだろうと思わせるリアリティがある。白石和彌監督初の時代劇という触れ込みなので興味深く見たのだが、お手並みはなかなかのものである。

 生真面目に生きることの大切さを知るべし。こういう話はフェイク情報を垂れ流して喜んでいる、そしてそれで収入を得ている倫理観のない人間に見せたい。(Amazonプライムビデオ)

2024
日本  Color  129分
監督:白石和彌
製作総指揮:木下直哉
脚本:加藤正人
撮影:福本淳
音楽:阿部海太郎
出演:草なぎ剛、清原果耶、中川大志、奥野瑛太音尾琢真市村正親斎藤工小泉今日子國村隼