吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ミステリと言う勿れ

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 原作漫画は一話だけ読んだことがある程度のわたしがこの映画を見て楽しめるのかと思ったけれど、意外と面白かった。しかし「三人の鬼が旧家を乗っ取る」という基本の設定に相当な無理があるので、そのリアリティのなさを飲み込めるかどうかでこの映画を面白いと思えるかどうかが変わってくる。その「鬼」の話以外にもあちこちに合理性が欠けるのだが、犬神家の一族みたいな因縁話はそれなりに面白い。

 しかし「犬神家の一族」の金田一耕助と違って探偵役が大学生というところがぐっと若返っている。その分、ノリが軽いと言えよう。

 舞台をわざわざ広島に設定した意味はどこにあるのかよくわからないが、わたしが一番興味をそそられたのは、この広大な旧家のロケ地はどこか、ということ。公式サイトによれば、岡山県倉敷市にある国指定重要文化財の旧野崎邸でロケしたという。ほかにも全国数か所の庭園などを撮影して編集したという画面作りが素晴らしい。

 遺産相続をめぐる殺し合いの謎解きよりも、旧家の佇まいなどに惹かれてしまうわたしとしては、やはり歴史ものが大好きということかな。とはいえ、「三人の鬼」のメタファーが何を示すのかを考えあぐねている。と同時に、この物語を復讐劇ととらえたときに、たとえばいまだに泥沼が続くガザの戦闘を始めとする中東戦争を2000年以上にわたって報復が続く戦いだと考えれば、祖先が争ったその事実をいかに子孫に伝えるのか、歴史の継続がどれほど大事かを考えさせられる。わたしたちは歴史意識の継承を誤ってはならない。その警鐘を鳴らす作品だったということだろうか。(Netflix)

2023
日本  Color  128分
監督:松山博昭
製作:大多亮ほか
原作:田村由美
脚本:相沢友子
撮影:斑目重友
音楽:Ken Arai
出演:菅田将暉松下洸平、町田啓太、原菜乃華萩原利久鈴木保奈美滝藤賢一、でんでん、野間口徹松坂慶子松嶋菜々子筒井道隆永山瑛太角野卓造段田安則柴咲コウ