吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

グランメゾン・パリ

https://eiga.k-img.com/images/movie/101893/photo/e5daa724e6bbe99e/640.jpg?1725260924

 この映画を見るために年末はテレビ版「グランメゾン東京」をNetflixで一気見していたのだ。実に面白かった。正直言うと、設定にかなり無理があるなあと思ったけれど、話を面白くするためなら少々盛ってもええやんか、と目をつぶってみていた。何が面白いってあなた、とにかく料理が美味しそうでたまりません。

 しかし問題は、このテレビ版が終了して5年後という設定でスペシャルドラマが2024年12月30日(だったかな)に放送されたのだが、それをわたしは見ていないということ。Netflixで配信されていないから。それゆえ、グランメゾン東京というフレンチの店がいったいどうなったのか、そしてなんで主人公・尾花夏樹シェフたちがパリで店を開くことになったのか、間の話がすっぽり抜け落ちている。悔しいけど想像するしかない。あらすじはもちろんわかっているが、あらすじだけではねえ。

 して、満を持して映画館へ見に行ったこの作品、観て良かったわぁ、ほんま大画面でこれほどおいしそうな料理を見せてもらえるなんて満足満腹の一作であった。相変わらず天才シェフを演じるキムタクはかっこいいし、その天才シェフの天才ぶりや口の悪さも変わっていない。そのくせ、心根は優しいという複雑(というか一貫性のない性格)な人間性がこのストーリーを面白くしている。

 テレビ版のときはライバルの日本人シェフが存在して東京で腕を競っていたが、今回はパリに出店したグランメゾン東京のメンバーが、本場パリで食材入手からして苦労しているというところが物語上の大きな壁として立ちはだかっている、という設定。まあ実際そうだと思う。外国人がやってきて伝統のフレンチに挑戦しようとしてもそうは簡単にこの世界に参入は許してもらえないだろう。

 それゆえ、尾花シェフたちメンバーが一致団結して一つ一つ努力を重ねていく様子には胸がすく思いがする。そして今回、あらたに韓国人パティシエが加わる。演じたオク・テギョンもかっこいいし、彼とキムタクが韓国語と日本語で喧嘩する場面なんかほんとうに面白い。なんで韓国語と日本語のやりとりで会話が成り立つわけ? で、「お前、日本語がわかるくせになんで韓国語でしゃべるんだよ!」「そっちこそ、韓国語がわかってるくせに!」と言い合いしているのには笑った。

 で、このチームの目標はもちろんミシュラン三ツ星。アジア人史上初のフレンチでの三ツ星獲得を狙っている。そのためにどんな犠牲もいとわない努力を払うその姿勢には感動してしまう。しかしね、そんなふうに評価が大事かな? ほんとうにミシュランの星をとることがそれほど大事なのか? という疑問はわたしの胸の中には常に深く渦巻いている。

 さて、クライマックスのディナーフルコースの場面。ここは料理が思いっきりアップで見ることができる。そして、それを食べている役者たちのおいしそうな表情が本物であることもわかる。その見事な料理を表現するフードライターの文言も合わせてたっぷり堪能したい。

 演出は凝っていて、テレビ版と同じように早送りやスローモーションなど多用している。当然にもアップも多い。テレビ版と違うところは、ほぼ全編パリでロケしたこと。パリの街並みの素晴らしい風景も楽しめる。

 この映画を見ていると、なんでフランス料理があんなに高価なのか理解できた。あれだけ手間暇かけているんだったらしょうがないよね、と思わされる。

 エンドクレジットが流れる時にもおいしそうな映像が見られるので、最後まで席を立ってはいけません。

 まあしかしわたしは生涯、ミシュランの星がついている店でフレンチを食べることはないだろう。所詮は金持ちのための料理としか思えない(負け惜しみ💦)。

2024
日本  Color  118分
監督:塚原あゆ子
脚本:黒岩勉
音楽:木村秀彬
出演:木村拓哉鈴木京香、オク・テギョン、正門良規、玉森裕太寛一郎、吉谷彩子、中村アン冨永愛及川光博沢村一樹