吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

マッドマックス:フュリオサ

https://eiga.k-img.com/images/movie/98959/photo/285e3b1f78808074/640.jpg?1711672305

 「マッドマックス 怒りのデスロード」のスピンオフなのだが、肝心の「怒りのデスロード」をほぼ忘れているので、フュリオサって誰だったっけ状態。ちらっと画面に大人になってからのフュリオサが映って、それがシャーリーズ・セロンだったのでちょっとだけ思い出したが、結局よくわからないので調べてみてやっとわかった。そうだ、フュリオサって最強の戦士だったんだ。

 で、本作はそのフュリオサの幼年時代から成人するまであたりを描く。とにかく強い、賢い、勇敢、何をやらせても完璧に素晴らしい。そして根性も半端ないことが最後にわかってびびってしまった。彼女は周囲が男ばかりの中で一人女であることの危険性を子どもながらに理解していて、男の子のふりをして工場で働いている場面もけなげで素晴らしい。

 映画の世界設定は、核戦争や感染症の蔓延の後、人類は絶滅への道をひた走っている、というもの。大地は渇き砂漠の中にわずかに生き残った人々が集団を作って点在し、互いのグループがいがみ合っていた。隙あらば相手の集団が持つ資源を掠奪しようと虎視眈々と狙っている。

 こんなになんにもないはずの世界なのに自動車やタンクローリーやバイクはたくさんあるのだ。そして、人々の異様な衣装や刺青や白塗りぶりは原始の人々のようで、弱肉強食の奴隷のような集団生活を営んでいるという、この世界観がたまらない。緑の大地を取り戻して搾取のない平等な世界を築くのだと叫ぶ怪しい「教祖」がいて、これってスターリン主義者のパロディかいと思ってしまうが、この男はフュリオサの母親を虐殺した張本人で、フュリオサの憎しみを一心に負っている。

 「マッドマックス」の美術の斬新さをさらにスケールアップしていて、そこだけは見ごたえがある。しかし残忍な殺人場面が続くし、見ていて気持ちがいいものでもない。唯一の救いはフュリオサの大活躍である。「赦しが大事だ」と宣う人間ほど怪しいのがこの映画の世界。ここまで徹底的に倫理観が失われてしまうと、人はなににすがって生きていくのだろう。

 フュリオサを大事にしてくれる人間がようやく現れた、その男にも魔の手が伸びる。地獄の道を行くフュリオサの明日はどっちだ!(レンタルBlu-ray)

 2024
FURIOSA: A MAD MAX SAGA
オーストラリア / アメリカ  Color  148分
監督:ジョージ・ミラー
製作:ダグ・ミッチェル、ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー、ニコ・ラソウリス
撮影:サイモン・ダガン
音楽:トム・ホルケンボルフ
出演:アニャ・テイラー=ジョイ フュリオサ
クリス・ヘムズワース ディメンタス
アリーラ・ブラウン フュリオサ(少女時代)
トム・バーク 警護隊長ジャック
チャーリー・フレイザー メリー・ジャバサ
ラッキー・ヒューム イモータン・ジョー
ジョン・ハワード 人食い男爵
ネイサン・ジョーンズ リクタス