吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ナイトメア・アリー

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 天才的な詐欺師の末路を描く。主人公が罪を背負って生きているような雰囲気を醸し出しているのだが、発端がよくわからない。とにかく彼は故郷の大草原の一軒家に火を放って出奔し、とある出し物小屋にたどり着いたのであった。

 父親の死の場面が何度も繰り返し登場するから、これが主人公のトラウマなのだろうと想像がつく。この映画には原作小説があるのではないかと思ったら、やっぱり。こういう作品は小説だと実に面白いのだろうと思わせるものがある。そして、映画化したい欲望にかられるのだろうとも思う。しかし、映画化して本当に面白いのかどうかは別問題。

 時代は1930年代末。場末のカーニバルのテントに偶然たどり着いた主人公スタンはそこで拾われて働くようになり、やがて天才的な「読心術」師の教えにより、詐欺師同様の読心術師として独り立ちして成功する。が、そこには大きな落とし穴があった…。

 主人公のスタンが独り立ちするまでが長い。そこから大成功して金持ちになるまではあっという間。さらに、そこに現れた美しく知的な心理学者がケイト・ブランシェット、怜悧な美女である。これがまた曲者。

 思うにこの作品は、フロイト流の精神分析のインチキさを告発する原作だったのではなかろうか。独特の暗い雰囲気がなんともいえず映画的にもよくできているし、物語が残す無常感がたまらない。まがい物だらけのカーニバルの出し物にも、この世界へのまなざしが感じられて、すべてが虚構なのだといいたいばかりの展開には惹かれるものがある。戦前のカーニバルの猥雑な雰囲気が実によくできていて、いくつもの映画賞の美術賞にノミネートされているのも納得だ。

 ギレルモ・デル・トロが飛びつきそうな題材であるのは間違いない。このような、人間の奥底に眠る「トラウマ」や、そこに付け込む人々、そして上昇と転落というジェットコースターのような人生の哀歓が深く滲むラストに至るまで、なかなか惹きつけるものがあった。(Amazonプライムビデオ)

2021
NIGHTMARE ALLEY
アメリカ  Color  150分
監督:ギレルモ・デル・トロ
製作:ギレルモ・デル・トロほか
原作:ウィリアム・リンゼイ・グレシャム 『ナイトメア・アリー 悪夢小路』
脚本:ギレルモ・デル・トロ、キム・モーガン
撮影:ダン・ローストセン
音楽:ネイサン・ジョンソン
出演:ブラッドリー・クーパーケイト・ブランシェットトニ・コレットウィレム・デフォーリチャード・ジェンキンスルーニー・マーラロン・パールマン