吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

愛なのに

 

https://eiga.k-img.com/images/movie/95246/photo/4fb4c74b528cde7f/640.jpg?1634169597

 本作は、城定秀夫が今泉力哉監督と互いに脚本を提供し合ってそれぞれが監督してR15作品を作ったもの。だから本作の脚本は今泉が書いたものが元になっており、今泉監督の「猫は逃げた」とセットになっている。セットと言ってもこの2作はまったく別の物語である。

 さてストーリーは。古本屋の店主、もてない冴えない31歳の多田が主人公で、しかしなぜかその彼に「好きです。結婚してください」とストレートに言い寄ってくる女子高校生が現れ、当然にも多田はうろたえる、しかも多田には忘れられない女性がいて。というのがあらすじ。

 あとはいろいろ面白いことややっかいなことが起きるのだが、日常生活の小さなさざ波ばかりが取り上げられるから、戦争も平和も人権も差別もなにもほぼ関係ない。とはいえ、未成年に淫行したと勘違いする親に怒鳴りこまれて多田は窮地に陥るという、多田という青年(映画の中ではなんだかおじさんに見える)にとっては人生の一大事なのである。

 最初は戸惑い嫌がっていた多田なのに、あまりにもストレートに求婚し続ける女子高生の一途さに心が揺れていく。だから「愛なのに」なのだ。物語の舞台が古本屋というのがいい。女子高生の愛情表現に手書きのラブレター攻勢があるのもよい。まったく時代から遅れてきた恋愛模様が眺められる。こういうのも純愛だよねー。

 いやあ、最後はなかなか痛快だった。(レンタルDVD)

2021
日本  Color  107分
監督:城定秀夫
製作:與田尚志ほか
企画:直井卓俊
脚本:今泉力哉、城定秀夫
撮影:渡邊雅紀
音楽:林魏堂
出演:瀬戸康史さとうほなみ河合優実、中島歩