吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

デビルズ・ノット

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 1993年に起きた3少年猟奇殺人事件を描いた作品。主人公である調査員の視点で描かれている。

 最初、コリン・ファースが怪しいと思ってしまった。彼は主役ロン・ラックスを演じているのであり、事件の調査員だ。でも登場した瞬間から目つきが悪い。離婚協議の最中である彼は「死刑制度に反対だ」という信条のゆえに弁護側の調査員に加わる。調査員が主人公の映画も珍しい。弁護士ではないから被告の弁護のために法廷には立てないし、直接弁を振るうわけではない。

 「ウエスト・メンフィス3」と呼ばれる未解決のこの事件は、冤罪の可能性が高いといわれているそうだ。

 1993年初夏、アーカンソー州ウエスト・メンフィス。こののどかな田舎町で、3人の児童が無惨な姿の死体となって発見されるという前代未聞の猟奇殺人事件が発生する。やがて全米が注目する中、3人のティーンエイジャーが逮捕される。警察は、その猟奇的な犯行の手口から悪魔崇拝者の仕業と考え、オカルト好きでヘヴィメタ・ファンの問題児ダミアンとその仲間たちが容疑者として浮上したのだった。そんな中、警察の捜査に疑問を抱いた私立探偵ロン・ラックスは、自ら独自調査に乗り出す。一方、被害児童の一人スティーヴィーの母親パムもまた、真犯人は別にいるのではないかとの疑念に苛まれていくのだが…。


 事件の全体像がじわじわと明らかになっていく過程はさすがに演出がよいのだが、ちょっと地味すぎて途中で眠くなり、一部意識不明になったのであとから再見するはめに(汗)。見直してみるとよくできた映画であることが判明した。田舎の警察の予断と偏見に満ちた捜査、やる気のない判事、といった冤罪が生まれる典型的な過程が見える。子どもを殺された母親が「犯人」を憎みながらもどこか事件に浮かれているように見えるのもなかなかにリアルな点であり、彼女が徐々に冤罪に気づいていくのもスリルある場面だ。

 しかしながら見終わった後の気分はよくない。子どもの遺体が画面に映るのは衝撃だし、未だに真相が明らかになっていないという点がもっとも気持ちがくすぶる要因だ。この映画をいま作る意義について考え込んでしまった。「真犯人」らしき人物の名前を挙げて製作するからには相当な覚悟がある作品と思えるが、その後どうなったのであろうか。いろいろ後日談が気になる映画であった。

 リース・ウェザースプーンがでっぷり太った主婦を演じていて、最初誰だかわからなかった。この人はどんな役でもこなす器用な女優だ。(レンタルDVD)

DEVIL'S KNOT
114分、アメリカ、2013 
監督: アトム・エゴヤン、製作: エリザベス・フォウラーほか、原作: マーラ・レヴァリット、脚本: ポール・ハリス・ボードマン、スコット・デリクソン、音楽: マイケル・ダナ
出演: コリン・ファースリース・ウィザースプーンデイン・デハーン、ミレイユ・イーノス、ブルース・グリーンウッド