吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2021-01-01から1年間の記事一覧

フォードvsフェラーリ

車には全く興味がないのに、なぜかこの映画には惹かれていた。劇場で見損ねたため、Blu-rayで鑑賞。 で、1960年代にアメリカ車のフォードとイタリア車のフェラーリが争ったという実話がハリウッド映画になる以上は、アメ車が勝ったに違いないのだ。タイトル…

狼をさがして

3度目の緊急事態宣言のせいで、大阪の映画館はほとんどが休業中だが、この映画を上映しているミニシアター「シネ・ヌーヴォー」は開館中なので、ぜひ映画館で見てほしい。 「狼」とは、1974年に三菱重工ビルなどを爆破した東アジア反日武装戦線のグループ名…

サンストローク 十月革命の記憶

劇場未公開作。 ロシア革命を白軍側から見た作品で、当然にもレーニンの軍隊は悪役である。ミハルコフの演出は極めて重厚でカメラワークも豪快で良い。イワン・ブーニン著『日射病』を原作とする。 1920年11月のこと。すでにソ連軍に抵抗する白軍は敗北必至…

2020年の映画マイベスト

今頃なんだけれど、去年の映画の振り返り。ベストを選ぼうと考えて数えていったら、劇場で見た作品はわずか29(試写会場を含む)。DVDやネット配信で見たのは120で、合計149本だった。 それ以外にテレビドラマの「愛の不時着」にはまりまくっていたのと、「…

痛くない死に方

自宅で死にたい、過剰な医療を排除して、なるべく痛くないように死にたい。患者と家族が願う、そんな「平穏死」を提唱する、尼崎の「けったいな町医者」長尾和宏医師の原作本を元に、高橋伴明が脚本・監督した作品。終末期在宅医療問題を真正面からとらえる…

けったいな町医者

けったいな町医者は「いちびり」でもある。「けったい」も「いちびり」も関西人でなければその微妙なニュアンスは伝わりにくいが、「けなしつつ褒める」という独特の語法どおり、この町医者は普通の町医者と違うことを飄々と、そして演出過剰とも思えるフレ…

私は確信する

骨太の法廷劇で、未解決の実話を元にして作られている。よく見るフランス映画のようなおしゃれな台詞があるわけでもなく、恋愛の機微が描かれるわけでもない。あくまでも法的な解釈に則って緻密な事実調べが行われ、被告弁護士にボランティアで協力する女性…

チャンシルさんには福が多いね

映画が好きで好きで、だからプロデューサーという仕事を選んだのに、一緒に働いていた監督が急死したために映画製作は頓挫し仕事を失ったチャンシルは40歳の独身女。やむなく家賃の安い下宿へと引っ越すことになり、その場所はソウルの高台にあるといえば聞…

羊飼いと風船

チベットを舞台にした映画はあまり見る機会がないので、その雄大な美しい風景を見ているだけでも引き込まれていく。と同時に、チベットとモンゴルの区別もつかない自分自身の無知が恥ずかしい。バター茶を飲む遊牧民という文化や風習は同じでも民族まで同じ…

ジョゼと虎と魚たち

ジョゼと名乗る足の不自由な少女と大学生恒夫との淡い恋物語。ではなく、実はジョゼは幼く見えるが恒夫より2歳年上の大人の女性なのだ。しかも、ガラの悪い大阪弁で横柄にしゃべる。とてもじゃないが「ジョゼ」という愛らしい響きにぴったりの乙女ではない。…

KCIA 南山の部長たち

非常に緊迫感に満ちた作品。結末は誰もが知っているのに、最後まで緊迫感が持続する面白い映画だった。 主人公のKCIAキム部長、つまり暗殺犯を演じたイ・ビョンホンは終始ニコリともしない、常に苦虫を嚙み潰したような顔をしている。だけではなく、アクショ…

新感染半島 ファイナル・ステージ

抒情的な音楽が美しい。 (「ワールドウオーZ」+「マッドマックス」)÷2、という映画。アクションの迫力もゾンビのスピード感も、どこか悲しくて笑える点もなかなかよい。 前作大ヒット「新感染」が狭い鉄道車両内でのパニック映画だったのに対して、今度…