公開当時に見たときにはこの作品にあまり良い感じを持たなかった。トマシュが単なる女たらしにしか見えなかったからだろう。最近になって原作を読み、随分違う印象を受けた。トマシュとテレーザだけの物語ではなく、サビーナとその愛人フランツの物語も大きな部分を占めていたのだ。それに、原作のほうが政治劇の雰囲気が強い。トマシュにしてもかなり意志の強い男のように感じた。
今般、DVDで再見すると、原作よりもかなりエロティックな雰囲気になっているので驚いてしまった。こういう話だったのか…! なんだか格調高い文学作品が女性の裸を売り物にする映画になってしまったような気がする。この映画の女性達は脱ぎっぷりがいい。それに皆素晴らしく背中の線とお尻が美しい。
ただ、やはりこの映画は原作がもつ厳粛さや幻想性を失っていると思う。映画と原作は全然別物だ。どちらかを選べと言われたら原作の方をお奨めしたい。ただし、映画は女優達の魅力で持っているのでそれなりに見応えのある作品になってはいるし、ラストシーンは映画のほうが余韻があってよい。
どうしてもこの作品をコメントするのに原作を離れることができないのがやっかいだ。
この作品のジュリエットはとても愛らしい。確か、彼女はこの映画でブレイクしたのではないかしら。トマシュの愛人サビーナ役、レナ・オリンも美しい。彼女は目に力のある女優だ。
遅ればせながらストーリーについて少しだけふれると、これは1968年、プラハの春を背景に、一組の夫婦の複雑な愛の軌跡を描いている作品。反体制知識人たる医者トマシュとその妻とのエロティックなお話。トマシュは反体制知識人という堅物っぽくは描かれていない、単なる女たらしの浮気者ともとれる。このあたり、原作とは多少イメージが異なっている。(レンタルDVD)
THE UNBEARABLE LIGHTNESS OF BEING
アメリカ、1988年、上映時間 173分
監督: フィリップ・カウフマン、製作: ソウル・ゼインツ、製作総指揮: ベルティル・オルソン、原作: ミラン・クンデラ、脚本: ジャン=クロード・カリエール、フィリップ・カウフマン、撮影: スヴェン・ニクヴィスト、音楽: レオシュ・ヤナーチェク
出演: ダニエル・デイ=ルイス、ジュリエット・ビノシュ、レナ・オリン