吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

オーシャンズ13

 もともとこのシリーズへのわたしの評価はそれほど高くない。にもかかわらず見てしまうのは、やはりオールスターキャスト映画のオーラに惹かれてしまうのだろうなぁ。

 相変らずソダーバーグはカメラ・テクニックを見せてくれる。かといってこれまでのいろんな作品ほどスタイリッシュに凝っているわけではなく、フィックスのカメラや手持ちのカメラをそのときどきに替えている程度(かな?)。あとはまあ、ズームインとかアウトとか。

 今回は仲間の中でも最年長のルーベンがホテル王バンクにはめられたショックで心筋梗塞を起こし、危篤状態になったのを知ったオーシャンたちが復讐に立ち上がるというお話。金儲けじゃなくて第一に仲間のためにホテル王をハメようというのがなんとも厚い友情で泣かせるのでございます。

 仕掛けもますますダイナミックになって、なんと地震を人工的に起こしてしまおうというのだからすごいね。オープンしたてのホテルを丸ごと地下から揺さぶり、カジノで大もうけし、ホテルの格付けチェックマンを陥れ、その上ホテル王バンクのダイヤモンドまで盗もうという荒唐無稽な作戦であります。どうせ作り話なんだから壮大なほうがいいとでもいうのか、確かにすごいんだけど、細部はそれぞれ面白いんだけど、大雑把すぎてリアリティに欠ける。手に汗握る緊迫感にも欠けるし、仕掛けの細かな知的面白さというのがないのだ。

 それにしてもこれだけ大掛かりなことをやろうとしたら資金も半端じゃない。オーシャンたちってものすごい大金持ちの泥棒だったのね。仲間が11人もいてなんで金を巡ってもめないのか不思議だ。金持ち喧嘩せずってか? で、大金持ちたちがカジノで一晩に1000万ドルも賭けるというのに、メキシコではわずか150ドルのために労働者は命がけでストライキで闘う。この南北格差の場面には唖然としてしまった。

 この映画、面白くないかというとそんなことはなく、わたしなんてスター俳優の演技やお顔を見ているだけで楽しかったし。

 ホテルのオープニングパーティの場面でアトラクションが繰り広げられるのが和太鼓だったり、料理が和食だったり、「クボタ(久保田)」をグラスに注いで「カンパイ」と日本語で乾杯したりと、この映画ではえらく日本がブームになっている。日本酒が美味しい某料理屋の主人に聞いたところによると、今海外では空前の日本酒ブームなのだそうな。現地で日本酒を造っているらしい。なるほど。


 これを見る前に前作と前前作を復習するほうがいいです。とにかくキャラクターの説明は一切ないし、これまでの話を踏まえたうえでないと何がなにやらさっぱり、です。痛快感にはちと欠けるけど、楽しめる一作でした。

 ちなみに、ジョージ・クルーニーって、ギャンブルがまったくダメなそうで、一度も勝ったためしがないそうな。映画ではカジノでかっこよく映っているというのにね。

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OCEAN'S THIRTEEN
アメリカ、2007年、上映時間 122分
監督: スティーヴン・ソダーバーグ、製作: ジェリー・ワイントローブ、製作総指揮: ジョージ・クルーニーほか、脚本: ブライアン・コッペルマン、デヴィッド・レヴィーン、音楽: デヴィッド・ホームズ
出演: ジョージ・クルーニーブラッド・ピットマット・デイモン、アンディ・ガルシア、ドン・チードルバーニー・マックエレン・バーキンアル・パチーノ、ケイシー・アフレック、スコット・カーン、エディ・ジェイミソンシャオボー・クィン、カール・ライナーヴァンサン・カッセル