こういう伝記ドキュメンタリーをなんの期待もなく見ると実は面白い、という感想を持ってしまう。わざわざお金を払って映画館へ行っていたら腹が立つかもしれないが、就寝前にベッドの中に毎晩持ち込んでいるiPadで見る映画としてはまったく問題なく楽しめる。
そもそもマリア・カラス本人が遠の昔に亡くなっているのだから、今さらなにか新しいものがでてくるわけではなかろう。とはいえ、もともと彼女が生前に公開予定だった自叙伝が朗読されるところが瞠目である。
オペラ歌手がそんじょそこらのアイドル歌手よりはるかに人気があったなどということがもはや信じられない21世紀にこの映画を作ることの意味はなんだろうか。日本ではまず考えられない設定だ。
しかしこの映画を見れば、マリア・カラスが不滅のアイドルであったことがわかる。もう音楽の鑑賞のしかたじたいが変わってしまったのだ、今や。日本ではオペラ(特に海外の)を見に行く人など上流階級である。実はわたしは一度も生のオペラを見たことがない。なにしろチケットが高すぎるから買えないのだ。つまりわたしも下流国民である。
死ぬまでに一度は生のオペラを見てみたい。(Amazonプライムビデオ)
私はマリア・カラス
2017
MARIA BY CALLAS
フランス 113分
監督:トム・ヴォルフ
製作:エマニュエル・ルペールほか
朗読:ファニー・アルダン
出演:マリア・カラス