吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝

https://eiga.k-img.com/images/movie/80542/gallery/4_large.jpg?1417399491

 ナレーションも解説の字幕もつかないという、いつものワイズマンの作風。「エクス・リブリス ニューヨーク公共図書館」はかなり以前に本を読んでニューヨーク公共図書館のことを知っていたので、映画としては全然新鮮味がなくて爆睡していたが、今回のミュージアムものは絵が素晴らしいので起きていられる。いや実は途中爆睡していたのだけれど、あとで見直したらえらく面白かった。

 3時間以上もあるのに飽きることなく見ることができるのは、ひとえにこの国立美術館学芸員たちの仕事ぶりが見えるからだ。日本では「雑芸員」という悲しき自嘲職種でもある学芸員だが、さすがに大英帝国のナショナルギャラリークラスだと、広報担当、研究担当、教育担当、修復担当、その他もろもろの職種分けも明確で、それぞれの専門性が生かせる仕組みになっている(はず)。修復担当はひょっとしたら外部の専門家かもしれないなあと思いながら見ていたのだが(日本だとそれが普通)。

 まあ日本でもうちみたいなところだと、館長兼貸し出し係兼レファレンス係兼目録担当兼選書兼研究兼教育担当兼広報兼展示係兼会計兼法人業務兼兼兼兼になるのだが、そうならないナショナルギャラリーにはただただ感嘆のあまりに憧れ目線で眺めておりました。

 さまざまな名画を熱を込めて解説する学芸員たちの素晴らしいギャラリートークにも感動した。ほんとに全員がここの学芸員なの? 自分たちの仕事に誇りを持っているそのプロフェッショナルぶりに見ているほうも胸が熱くなってくる。中にはたどたどしくしゃべるスタッフもいるのだが、そのつっかえつっかえながら語られる内容がとても興味深いので、観客も黙って聞き入ってしまう。

 絵の配置をめぐっても学芸員たちは議論し、それぞれの意見を静かにたたかわせる。プロの会話の知的なスリルがたまらない。

 印象的だったのは、ある広報スタッフから「もっと観客のニーズに応えるフォーラムや広報をしてほしい。学芸員の講義もいいんだけど…」と訴えられた上席学芸員が「低俗な大衆嗜好に合わせたくない」と抗弁するところ。もっとも、彼は「波乱万丈は好きだよ、ありがとう」と答えている。誇り高き学芸員の、インテリの矜持を見せた場面だ。こういう場面でわたしはどちらに感情移入するだろう? 自分自身の反応が面白いと思った次第。(Amazonプライムビデオ) 

2014
NATIONAL GALLERY
フランス / アメリカ / イギリス Color 181分
監督:フレデリック・ワイズマン
製作:フレデリック・ワイズマン、ピエール=オリヴィエ・バルデ
撮影:ジョン・デイヴィー
編集:フレデリック・ワイズマン