吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2017-01-01から1年間の記事一覧

カフェ・ソサエティ

オープニングからレトロな雰囲気のタイトルバックとジャズ音楽で始まった本作の舞台は1930年代後半のハリウッド。いかにもいかにも、というハリウッド全盛時代の狂乱のようなゴージャスな世界が繰り広げられる。 カフェ・ソサイエティというのは都会の高級ク…

スプリット

レイトショーで次男S(24歳)と一緒に鑑賞。 ナイトシャマランらしい作品だ。スプリットは分裂とか分離という意味で、この映画の主人公である解離性同一性障害の男を指している。しかし解離性障害の人間を殺人鬼として描いてしまうと、またまた偏見が増える…

聖の青春

29歳で夭折した天才棋士・村山聖(さとし)の伝記。幼い頃からネフローゼを患い、長くは生きられないと言われて成長した聖が病院で将棋に出会い、やがてプロ棋士となり、天才羽生善治との幾度もの名勝負を繰り広げ、最後は癌で死んでいく。壮絶な短い生なの…

ノー・エスケープ 自由への国境

ただ逃げる、ひたすら逃げる、逃げる逃げる逃げる、また逃げる。という逃走劇。わたしは映画を見ながら「エッセンシャル・キリング」(イエジー・スコリモフスキ監督)を思い出していた。 トランプのような男が大統領になる時代にはこのような物語も絵空事と…

ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬

Amazonプライムビデオの中にあった無料作品。 タイトルを見た瞬間に爆笑。ジョニー・イングリッシュが登場しただけで爆笑。いちいちお笑いのツボが可笑しくてたまりません。前半、「ああ、こういうおバカな映画が見たかった。疲れがとれるわぁ」と思っていた…

オマールの壁

重い話ばかりが続くのはつらいが、心に深い澱を残し、どんよりと曇ったままの衝撃的な作品だった。ハニ・アブ・アサド監督は「パラダイス・ナウ」でもパラダイスという皮肉な命名によってパレスチナの悲劇を描いた。同じく本作でもパレスチナ解放のために闘…

夜空はいつでも最高密度の青色だ

原作が詩集というのは驚きだ。詩を映画にするなんてチャレンジングな試みにまずは敬意を表したい。原作と言いながらその詩集にはストーリーがないのだから、主人公たちは登場しない。詩にインスパイアされた、まったく新しいストーリーを石井裕也(監督・脚…

素晴らしきかな、人生

これは一つの奇跡物語。クリスマスシーズンなどにぴったりなお話なのだが、季節は関係なかったみたい。ストーリーのこじつけぶりが気に入らない人には白けた映画になるだろうが、素直に物語に入っていけるファンタジー好きな人には大きな感動がもたらされる…

ジャングルブック

なんと、全編CGで描かれたアニメだと思い込んでいて最後まで疑わず、すっかり騙されたけれど、実は実写とCGの合成だったとは。もう映画は実写とかアニメとかCGとかの領域を超えてしまった。それほど動物たちの描写はリアルで、自然描写の撮影が美しく、もう…

はじまりへの旅

エコロジカル左翼一家の爆笑生活ぶりを本気なのか皮肉なのか、ものすごくまじめに面白く描いた作品。最初のうち、これはもうコメディに違いないと思い込んでいたんだけれど、案外本気なのかもしれないと思い始め、最後のまとめ方にはなかなかの清々しさを感…

キングコング:髑髏島の巨神

これは面白い。最後の最後まで席を立ってはいけない。 巻頭が太平洋戦争下の南洋の島での日米兵士の決戦であり、そこにキングコングが現れるという設定が面白い。時代は下ってベトナム戦争下のアメリカ軍が南海の孤島に調査団を派遣したらそこにキングコング…

ヒトラーの忘れもの

ヒトラーの忘れ物とは、ナチスドイツ軍が占領国に残していった大量の地雷を指す。連合軍の上陸を恐れて、ドイツ軍はデンマークの海外線に200万個の地雷を敷設した。敗戦後、捕虜となった少年兵がその撤去の作業を強制され、多くの子どもたちが命を落とした。…

海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~

イタリア最南端の小さな島、ランペドゥーサ島は人口5500。その島にアフリカからの難民がその10倍押し寄せる。このドキュメンタリーは、島の人々の生活と決して交わることのない難民の悲惨な境遇を静かに描き出す。 巻頭、中学生ぐらいの少年が一人で木登りや…

白鯨との闘い

メルヴィルの『白鯨』は読んだことがなかった。と思っていたのだが、映画を見ているうちに次々デジャヴに襲われる。ひょっとしてこれは、小学生の頃にジュニア新書とかジュニアなんたらシリーズで読んだのではないか。まあ、いずれにしても、ストーリーには…

ヒマラヤ ~地上8,000メートルの絆~

これも実話をもとにした山岳映画。 さすがは韓国映画だけあって、感情に訴える場面のうまさは特筆すべき。その一方、残念ながら山のシーンの迫力がいまいちだ。いや、この作品しか観たことのない人ならこれでも十分満足の出来だろうが、なにしろつい先日、ド…

ホームワーク

キアロスタミ監督が我が子の宿題をみてやっているときに抱いた疑問が、この映画を撮るきっかけとなっている。キアロスタミはカメラを学校の中に入れ、子どもたちに一人ずつ、インタビューしていく。「きみはなぜ宿題をやらなかったの」 子どもたちの答えはさ…

たかが世界の終わり

主人公はまもなく若くして死ぬ。自分が死ぬことを家族に告げるために、12年ぶりに実家に戻った。しかし、その家族たちは言い争いをし、ささいなことで激高し互いを傷つける。美しい青年は自分がやがて死ぬということを家族に告げることができないまま、時…

スノーデン

「ニュースの真相」よりさらに現在進行形のお話。よくぞこのタイミングでドラマ化したものだと感心する。オリバー・ストーンはこの手の社会派作品を作らせたら実にうまい。スノーデン事件に関しては、既にドキュメンタリー映画がアカデミー賞を受賞したよう…

MERU/メルー

1月に見た映画。映画館に見に来ている観客は年寄りばかりだった。こういう映画を若者が見に来ないという点が問題。というか、残念。 ヒマラヤ山脈にあるメルー中央峰の「シャークスフィン」と呼ばれる断崖絶壁の頂上は、誰も登ることのできない危険な途。20…

フルートベール駅で

本日、研究会「職場の人権」の例会があり、久しぶりに参加した。報告は伊藤太一さん(大阪経済大学経済学部教員)「アメリカ労働運動の新潮流と“サンダース現象”」。伊藤先生は非常にお話が上手で、身振り手振りでサンダースの物まね演説をされたりして、と…

ニュースの真相

見ごたえのある社会派作品。「事件」からまだ10年数年しか経っていないこと、登場人物がほぼ実名であることなど、生々しさがあるため、映画ではかなりの省略が行われている。そのため、日本の観客には説明不足で不親切な展開であり、劇場公開が短い期間で終…

天使のいる図書館

町興し映画にありがちな安易で残念な作品かと思ったけれど、どうしてどうして、図書館員がちゃんと仕事をしているところが描かれる、よい作品だ。でも主人公は変な図書館員で、あんなのは採用試験の面接で落ちるでしょとか、あんな司書がいるわけないでしょ…

ローマに消えた男

独特の雰囲気を持った不思議な映画。 てっきりコメディかと思ったら意外にシリアスで、さらにはミステリアスな味付けもある、というお話。なんだか最後はキツネにつままれたような気分がした。 野党の政治家が、スランプに陥って失踪してしまう。困った秘書…

2016年のマイベスト

今日一日で映画評26本をアップしました。なんとか2016年中に見た映画の中で、これは、と思うものを掲載することができました。 さてそこで、恒例のマイベストについて言及。 今年も見た映画の本数が少なくて、とてもこの中から1年のベストを選べるほどではな…